2 / 7
2
しおりを挟む
別邸に着いた私は異変に気づいた。
「鍵がかかっていない?」
その言葉に反応して王子と護衛は周りを見回した。
夕暮れ時、馭者にも確認したが変わった様子はないようだ。
前回鍵を掛け忘れたという可能性もない訳ではないが、慎重にドアを開けた。
私は近くにある箒を持ち、王子と護衛は剣の柄に手を添えて別邸を進んでいく。
上の階からガタガタと何やら聞こえたのでそっと階段を上がり、音のする部屋の前に立った。
「ここ、寝室です」
「……そうか」
私は緊張して箒を握り締めていたから気づかなかった。
ギシギシと聞こえる音に、呆れた王子が警戒を解いていたことを。
「サンドラ、本当にこの中に入っていくのか?」
「当たり前です、私の家ですから。盗人は追い出さないといけません」
小声で話しながら王子の様子が変だと思ったが、それより私の寝室を荒らす奴らが許せなかった。
私はドアを開けて突入した。
「ここは私の家よ。出ていけ、出ていけ、出てけー」
箒を振り回し叫んだ私の目の前には……
全裸の夫ブランドル・ポーリックと服の乱れた知らない女がいた。
私の両親は14歳の時に事故で亡くなったが、生前よく言っていた。
人を信じなさい、愛しなさい、赦しなさいと繰り返し言っていた。
とても信心深い優しい両親だった。
幼い頃は祖母もいて、この人も優しい人だった。
流石あの両親の親だと思う様な信心深い人だった。
この国で昔、私と同じ様に聖女をしていた。
聖女とはこの国の貴族としての宣伝みたいなもので、今では『花嫁修業』『教会の布教者』など言われている。
聖女本人は何の力もない者だ。
ただ、古式ゆかしい家では未だに重宝がられていた。
今では、成りたがる者などいないけれど。
しかし、箔付けには丁度良いのだ。
伯爵以上の身分で14歳の半ばに聖女見習いになる所から始まり。
15歳前後で聖女となり最長でも18歳を迎えると引退する。
何この遊びたい盛りの女の子を捕まえて、大人達主に教会の勝手で働かされる図式は。
はっきりいって人気ない。
陰で貧乏くじと言われるのも納得である。
そんな貧乏くじでも私には必要だった。
両親が亡くなったのが14歳。
伯爵家を継ぐには幼過ぎたのだから。
聖女をすると国の後ろ盾がつく。
国から優秀な役人を借り受け、18歳まで領地を預けられる。
聖女を引退した後も補佐として助けて貰えるのだ。
私が早々に結婚したのは、また別の理由なのだが。
やっと聖女のお勤めを終え、帰ってみれば夫と女が浮気中だった。
これは神が設けた試練か。
でも、これ赦さないといけないのかな?
ショックを受けた頭の片隅でそんな事を考えていた。
「鍵がかかっていない?」
その言葉に反応して王子と護衛は周りを見回した。
夕暮れ時、馭者にも確認したが変わった様子はないようだ。
前回鍵を掛け忘れたという可能性もない訳ではないが、慎重にドアを開けた。
私は近くにある箒を持ち、王子と護衛は剣の柄に手を添えて別邸を進んでいく。
上の階からガタガタと何やら聞こえたのでそっと階段を上がり、音のする部屋の前に立った。
「ここ、寝室です」
「……そうか」
私は緊張して箒を握り締めていたから気づかなかった。
ギシギシと聞こえる音に、呆れた王子が警戒を解いていたことを。
「サンドラ、本当にこの中に入っていくのか?」
「当たり前です、私の家ですから。盗人は追い出さないといけません」
小声で話しながら王子の様子が変だと思ったが、それより私の寝室を荒らす奴らが許せなかった。
私はドアを開けて突入した。
「ここは私の家よ。出ていけ、出ていけ、出てけー」
箒を振り回し叫んだ私の目の前には……
全裸の夫ブランドル・ポーリックと服の乱れた知らない女がいた。
私の両親は14歳の時に事故で亡くなったが、生前よく言っていた。
人を信じなさい、愛しなさい、赦しなさいと繰り返し言っていた。
とても信心深い優しい両親だった。
幼い頃は祖母もいて、この人も優しい人だった。
流石あの両親の親だと思う様な信心深い人だった。
この国で昔、私と同じ様に聖女をしていた。
聖女とはこの国の貴族としての宣伝みたいなもので、今では『花嫁修業』『教会の布教者』など言われている。
聖女本人は何の力もない者だ。
ただ、古式ゆかしい家では未だに重宝がられていた。
今では、成りたがる者などいないけれど。
しかし、箔付けには丁度良いのだ。
伯爵以上の身分で14歳の半ばに聖女見習いになる所から始まり。
15歳前後で聖女となり最長でも18歳を迎えると引退する。
何この遊びたい盛りの女の子を捕まえて、大人達主に教会の勝手で働かされる図式は。
はっきりいって人気ない。
陰で貧乏くじと言われるのも納得である。
そんな貧乏くじでも私には必要だった。
両親が亡くなったのが14歳。
伯爵家を継ぐには幼過ぎたのだから。
聖女をすると国の後ろ盾がつく。
国から優秀な役人を借り受け、18歳まで領地を預けられる。
聖女を引退した後も補佐として助けて貰えるのだ。
私が早々に結婚したのは、また別の理由なのだが。
やっと聖女のお勤めを終え、帰ってみれば夫と女が浮気中だった。
これは神が設けた試練か。
でも、これ赦さないといけないのかな?
ショックを受けた頭の片隅でそんな事を考えていた。
15
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした
天宮有
恋愛
グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。
聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。
その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。
マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。
わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました
柚木ゆず
ファンタジー
より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。
「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」
現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
【完結】何やってるんですか!って婚約者と過ごしているだけですが。どなたですか?
BBやっこ
恋愛
学園生活において勉学は大事だ。ここは女神を奉る神学校であるからして、風紀が乱れる事は厳しい。
しかし、貴族の学園での過ごし方とは。婚約相手を探し、親交を深める時期でもある。
私は婚約者とは1学年上であり、学科も異なる。会える時間が限定されているのは寂しが。
その分甘えると思えば、それも学園生活の醍醐味。
そう、女神様を敬っているけど、信仰を深めるために学園で過ごしているわけではないのよ?
そこに聖女科の女子学生が。知らない子、よね?
〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……
藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。
婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。
その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
前編後編の、二話で完結になります。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる