【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子

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【オマケ】"モットシタイ"

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 大きな腹を抱えて、小鳥遊学園の高等部普通科を卒業して、早一年と半年。
 俺と綾人の子供は、一歳になっていた。
 イかされまくったからかどうかは知らないが、男だった。
 名前は、二人で相談して決めた。
 命名、健斗(けんと)。健康に育って欲しいという、願いを込めて。
 そのお陰か、最近の健斗は活発だ。

「ママ、だっこ~!」

「はいはい」

 喋るし、一人で立てるようになったし、生まれた時にはもう上の前歯が二本生えていて、ビックリしたものだ。
 ひよこっこ倶楽部に書いてあったのと違う! って初めはいちいち大騒ぎしていたけど、もう『赤ん坊は泣くのが仕事』って境地まで、割り切れるようになってた。
 ひょいと健斗を抱き上げると、ご機嫌にキャハハと笑う。

「もっと! もっと!」

 高い高いをしている訳でもないのに、何故か健斗はよく「もっと」と言っては楽しそうだ。
 今日は、健斗の一歳の誕生日。
 俺の好きなシーフードのラザニアと、綾人の好きなブリ大根を作って、今か今かと帰りを待っているのだった。
 健斗には、柔らかく作った肉団子と、手作りの小さなホールケーキ。細い蝋燭が一本、立っている。

「綾人、遅いな~」

 俺はすっかりママになって、まだよく分からないと知りながら、何でも健斗に話しかけるようになってた。

「パパ!」

「うん、そう。パパだ」

 健斗を揺すってあやしながら、ウロウロとリビングを歩く。
 こうしていると、健斗はあんまり泣かないからだ。
 綾人の3LDKのマンションに俺が引っ越す形で、結婚生活を送っていた。

 ――ピンポーン。

 インターフォンが鳴る。

「綾人!」

 俺は健斗を抱え直し、玄関へと綾人を出迎えた。

「おかえり、綾人」

「ただいま、四季」

 俺たちは毎日の日課、送り出しと出迎えのキスを交わす。
 chu、chu、と何度も啄んでいると、抱いていた健斗が、グイと綾人の頬を押し返した。

「パパ、だめ~!」

 これも健斗が最近覚えたことで、いっぱしに綾人と張り合って、ヤキモチを妬いてるらしかった。

「駄目か。でも、四季は俺のものだぞ。健斗には渡さないぞ」

 子供相手に、大真面目に綾人は言って聞かす。
 ただ子供の世話に追われていた数ヶ月を過ぎても、そんな風にまだ俺に愛を囁く綾人が愛おしかった。

「綾人の好きなブリ大根、出来てるぞ。着替えてこいよ」

「おっ。四季のブリ大根か」

 一週間前にも作ったけど、久しぶりみたいに綾人は喜ぶ。
 子供みたいで、歳は十歳も離れてるけど、何だか可愛いところもあるんだなっていうのが、結婚してからの発見だった。
 綾人が鞄を持って部屋に行くのを見送ってから、キッチンに行って、出来上がっているブリ大根を火にかける。
 ラザニアと肉団子も、レンジでチンした。

「健斗、今日は健斗の為のお祝いだ」

 言いながら、キッズチェアに健斗を座らせる。
 やがて、綾人が部屋着に着替えてやってきた。

「綾人、ビール冷えてるけど飲む? ワインの方が良いか?」

「そうだな。では、ビールを貰おう」

「はいはい」

 俺は、五百ミリのビール缶と冷やしてあったジョッキを持っていって、テーブルに置く。
 あとは、温まった料理を並べるだけ。
 食事の前に、ケーキの蝋燭に炎を点して、綾人と二人でハッピーバースデーの歌を歌った。

 結婚して発見したことのもうひとつが、こんなにイケメンなのに、綾人は音痴だっていうこと。
 機嫌の良い時は鼻歌なんか歌いながら、健斗をお風呂に入れてくれるけど、いつも調子っぱずれで笑ってしまう。
 健斗が真似するから、健斗まで音痴に育つんじゃないかと、実はハラハラしてるのは内緒だ。

 親子三人での細やかなバースディパーティは、綾人が買ってきたミニカーセットのプレゼントで、幕を閉じた。

    *    *    *

 共働きなんかだと、寝室を別にする夫婦も多いみたいだけど、俺は専業主夫だから、綾人と一緒のダブルベッドで眠ってた。
 だから、綾人が急にサカってもヤりたい放題で、そこはちょっと困ったところだった。
 健斗を部屋の隅のベビーベッドに寝かせ、俺もベッドに入る。
 案の定、酔っ払った綾人が、俺の分身を握ってきた。

「や、ぁっ」

「嫌じゃないだろう?」

 同じベッドで眠ることの贅沢な悩みが、これだった。
 俺たちは運命の番いだから、どっちかが発情すると、もう一方も発情してしまう。
 昨日もシたから今日はゆっくり眠りたかったのに、触れられると発情を抑えられない。

 パジャマのボタンなんて、器用な綾人の指先の前ではないのと同じで、あっという間に脱がされる。
 口付けを深くしながら、下も全部脱がされてしまった。
 緩く勃ち上がってる俺の分身に、カチカチに張り詰めてる大きな雄を布越しに擦り付けながら、綾人は自分も上のスウェットを脱ぐ。

「あぁん!」

 透明な雫を滲ませ始めた先っぽに爪を立てられて、思わず大きな声が出てしまう。

「シッ。健斗が起きる」

 俺の綾人はドSだから、薄ら笑いながら窘める。わざとやってるくせに。

「四季は、すぐ濡れるな。いつまで経っても感度が良くて、最高だ」

「ン・ゃっ」

 これもわざと、何処がどうなってるのか口に出されて、恥ずかしさに身悶える。
 指が、多分三本、挿れられた。異物を押し出そうとする男の身体と、男を迎え入れようとするΩの身体がせめぎ合って、目眩がするほど気持ちいい。

「あ・あァン、指じゃ、足りないっ」

 子宮口を突かれるのは確かに気持ちがいいのだけど、綾人の凶器みたいな大きくて太いのを知ってしまったら、もう我慢がきかない。

「何が欲しい?」

「綾人」

「俺の?」

 細かく子宮口を揺さぶられて、しゃくり上げながら口走る。

「ひゃ・ァンッ……綾人の、太いの、欲し……っ」

「良いだろう」

 メリメリと音がするんじゃないかと思うほど、綾人の逞しい雄が性急に挿入(はい)ってくる。
 酔っ払ってるから、いつもより荒っぽい刺激を生んで、俺もいつもより張り詰めてた。
 ギリギリまで引き抜かれて、一気に最奥まで貫かれる。

「ヒんっ! あ・あ――……っ!!」

 それだけで絶頂を極めて、分身から精液が飛び出す。昨日も散々虐められたから、量はあまり出なかった。

「四季、凄いな。もう、イったのか。お前のナカ、きゅうきゅうだ」

 いつもよりぬめる感覚が生々しくて、酷く感じてしまう。
 そして、はたと気が付いた。

「綾人、ゴム、してないのか?」

「ああ。もうそろそろ、健斗に兄弟を作ってやらないか」

「んなっ……あっ・あ!」

 俺の主張は、ガクガクと揺さぶられて、封じられてしまう。
 空(から)になったタンクからはもう何も出ず、ひたすら後ろで雌イきを強いられて、俺は足の親指をキュッと反らせては何回も悲鳴を上げた。

    *    *    *

「もっと! もっと!」

 俺は太陽が黄色く見える思いだったけど、健斗は今日も朝から元気に叫んでた。
 綾人の弁当を作って巾着に入れてたら、当人が眠い目を擦って起きてきた。

「おはよう。あー……頭がガンガンする」

「それは俺の台詞だ」

「ツンデレ」

「ドS」

 今でもそれは俺たちの合い言葉で、視線を合わせてプッと噴き出す。

「もっと! パパ、もっと!」

 だけどそれを聞いて、綾人は青くなった。

「もっとなんて、食事の時以外にも、言うか?」

「うん。最近の健斗の、マイブームみてぇだ」

「これ……四季の真似じゃないか?」

「俺?」

「昨日も言ってた」

「もっと! や・らめぇっ!」

 俺は逆に、真っ赤になった。

「マジかよ!」

「そろそろ、ひとり寝の準備をしないといけないな。四季、しばらく健人と二人で眠ってくれ。これは教育上、良くない」

「待てよ。俺をこんな身体にしておいて、しばらくってどれくらいだよ。耐えらんねぇ」

「大丈夫だ。健斗が寝たら、寝室に来い。いつでも愛してやる」

 綾人がワイルドに薄く笑って、健人が叫んだ。

「もっと!」

「マジかよ……」

 俺はその光景の恥ずかしさに、半顔を覆って溜め息をついた。
 公共の場での「もっと!」禁止を徹底しなければ、家族で買い物に行くのも、顔から火が出る思いに違いない。

End.
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