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第十二章 秘密
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レーモンはしょげ込む僕を横目で見ながら、マティアスに命じた。
「マティアス、アリス様のマントを取れ」
マティアスはその命令に従い、アリスから王家の印でもある黄金の鷹《たか》の刺繍の入った濃紺のマントをはぎ取って、リナに手渡した。
「リナよ、分かっておるな」
レーモンがリナに言った。
「はい……」
リナはコクンとうなずき、マントをふわりと背中にまとうと、アリスの白馬に跨った。
そして懐《ふところ》から小さなガラスの小瓶を取り出した。
瓶の中には金色に光る謎の液体が入っている。
リナは蓋を開けると、それを一気にそれを飲み干した。
「――!?」
すると驚いたことに、リナの栗色の髪がみるみるうちに金髪に変色し始めた。
さらに目の色が澄んだ青色へと変わっていく。
それから一分ほど経ったころには、リナはすっかり金髪碧眼《きんぱつへきがん》の美少女に変身してしまっていた。
その姿はまるでアリス王女その人――
そうか……。
そういうことだったんだ。
僕はそこでようやく、リナがわざわざロードラント軍とアリスに同行した真の理由を悟った。
リナの秘密――それはアリスの影武者であること。
万が一の事態に備え、リナはアリスの身代わりを務めるため、この戦争にわざわざ参加したのだ。
「さすが宮廷魔術師の調合した薬。なかなか見事な効果だな……」
薬の力によりアリスに扮したリナを見て、レーモンが感心したように言う。
この人――
そんなレーモンを見て、僕は思った。
アリスの代わりになったゆえに、自分の姪がこの先どんな危険な目に合うかもしれないのに、本当に平気なのか?
そもそも大切な身内を犠牲にしてまでして、ロードラント王家とアリスのために尽くすことに、何の疑問を感じないのか?
そこだけが、僕にはどうしても理解できなかった。
「マティアス、アリス様のマントを取れ」
マティアスはその命令に従い、アリスから王家の印でもある黄金の鷹《たか》の刺繍の入った濃紺のマントをはぎ取って、リナに手渡した。
「リナよ、分かっておるな」
レーモンがリナに言った。
「はい……」
リナはコクンとうなずき、マントをふわりと背中にまとうと、アリスの白馬に跨った。
そして懐《ふところ》から小さなガラスの小瓶を取り出した。
瓶の中には金色に光る謎の液体が入っている。
リナは蓋を開けると、それを一気にそれを飲み干した。
「――!?」
すると驚いたことに、リナの栗色の髪がみるみるうちに金髪に変色し始めた。
さらに目の色が澄んだ青色へと変わっていく。
それから一分ほど経ったころには、リナはすっかり金髪碧眼《きんぱつへきがん》の美少女に変身してしまっていた。
その姿はまるでアリス王女その人――
そうか……。
そういうことだったんだ。
僕はそこでようやく、リナがわざわざロードラント軍とアリスに同行した真の理由を悟った。
リナの秘密――それはアリスの影武者であること。
万が一の事態に備え、リナはアリスの身代わりを務めるため、この戦争にわざわざ参加したのだ。
「さすが宮廷魔術師の調合した薬。なかなか見事な効果だな……」
薬の力によりアリスに扮したリナを見て、レーモンが感心したように言う。
この人――
そんなレーモンを見て、僕は思った。
アリスの代わりになったゆえに、自分の姪がこの先どんな危険な目に合うかもしれないのに、本当に平気なのか?
そもそも大切な身内を犠牲にしてまでして、ロードラント王家とアリスのために尽くすことに、何の疑問を感じないのか?
そこだけが、僕にはどうしても理解できなかった。
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