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第2章 王都 学園初等部生活編

第28話 初めての依頼

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商店街みたいな所から歩いて数分後、冒険者ギルドに着いた。

ドアを開けて私たちは中に入る。すると、前と同じように受付の人がギルマスを呼びに行こうとしたので、リーナがそれを止める。

「別に私が依頼を受けにきた訳じゃないから、ギルマスはいいわよ」
「は、はい。承知しました」

毎回毎回ギルマスに頼む訳にもいかないからね。でも、どうしてリーナはこういう反応をされるのだろうか?ランクが高いからかな?まぁ後で聞いてみよう。

「こっちのボードに貼ってある依頼書を見て、受けたいものがあったらここから剥がして受付に持っていくのよ。常時依頼っていう依頼もあって、それは受付に持っていかなくてもいいわ」

なるほど。つまり、普通の依頼を受けつつ、常時依頼も達成することもできる訳だね。

「さてと、あなた達が受けられる依頼は...この辺りね」

そう言って指さしたところには、もうほとんど紙が残っていなかった。

「なんもないですね...」
「確かに依頼は朝から奪い合いになるから、こういう時間帯だともうほとんど残ってないのよね」

やっぱりそういうことなんだね。さて、残っている依頼はーっと...

「うーん...井戸の掃除、街の清掃、馬車の手入れの手伝い...」

なんか雑用ばかりだね。

「まぁGランクだからそんなところね。あとは1つ上のFランクの依頼もあるわよ」

そういえば受けることは出来るんだっけ?とりあえず確認しておこう。

「えーっと?ゴブリン五体の討伐、ホーンラビット三体の討伐、鉄鉱石の採掘...」

こっちは雑用とかじゃなくて、討伐依頼や、採取依頼が多いね。

「うーん...今回はお試しだし、入学試験も控えてるから、討伐依頼はだめね。とすると、やっぱり常時依頼の薬草採取がちょうどいいかしら?」

常時依頼は2つ、薬草採取と、魔石の納品だ。
魔石っていうのは、あらゆる魔物の中にある、言わば核の様なもので、結界石の原料になったり、魔道具の材料になったりする。魔石を取るには必然的に魔物を倒さないといけないから、入学試験前にやって、怪我をしないためにも、もう1つの薬草採取がベストかな。

「そうだね、じゃあ薬草採取にする」
「ええ、それが無難ね。じゃあ街の外までは送るわ。そこからは2人でがんばるのよ」
「うん」
「はい!」

私たちはギルドを後にして、街の外に出るため、門へ向かった。

ものの数分で門に到着。門番の人にギルドカードを見せ、街の外へ。

「街をでてから真っ直ぐ歩くと、森が見えてくるから、そこで採取すればいいわ」

とリーナに言われたので、その森を目指すことに。

歩くこと10分くらいかな?右手に森が見えてきた。

「ここかな?」
「そうだとおもうよ?」

私たちは森に入ってみる。気配を探ると少しの人の気配しかいなかった。多分リーナが勧めてきたあたり、この森は初心者向けだと考えた方がいいね。とはいえ、油断は禁物だね。私たちは十分に警戒しながら目的の薬草採取を行う。

「あ、あったよ!」

そうベルが言ってかけていく。まったく...

「この草は"ピピル草"だね」

ピピル草はポーションの材料になる薬草だ。見渡してみるとかなり群生していることが分かる。

「いっぱいあるよ!」
「そうだね。でも少しは残さないといけないよ?」
「どうして?」
「こういう薬草は全部取っちゃうと他のハンターにも迷惑がかかるし、もう生えてこなくなることもあるの」

これは事前に調べておいたこと。取り尽くしてしまうとそこから新しく生えてこなくなってしまうのだ。ハンターはそういうことも考えて行動しなければならない。

「分かった!」

私たちはナイフを使って薬草を採取する。地面から1センチほどの高さの所を切る。さすがあの店のナイフだけあって、とても切れる。

結界、30本あまりのピピル草を採取し、アイテムボックスに収納した。

私はふと思いついたことを実践することに。世界地図ワールドマップと鑑定を同時に発動し、薬草を探してみる。


...すると薬草自体が私の目から見て、光るようになった。あれ?てっきり世界地図ワールドマップに表示されるだけかと...ま、いっか!

それから様々な薬草を採取した。解毒剤の材料になる"解毒草"、焚き火に入れて虫除けに使う"虫除け草"...名前安直過ぎじゃない?

この世界の人のネーミングセンスを疑いつつ、それぞれ50本ほど採取した。

「そろそろ帰ろっか?」
「うん」

気がつけばもう既に日が傾き初めていた。私たちは森を抜け、街へ向かった。

行きと同じく10分ほどで着いた。門番の人にカードを見せて中に入り、ギルドへ向かう。向かう途中でアイテムボックスで薬草を皮袋に分けて入れ、出しておいた。

ギルドに着き、ドアを開けて中に入る。来た時とは打って変わって中は人がいっぱいいた。恐らく依頼を終えて帰ってくる時間帯なんだろう。私たちは人混みを抜けて受付へ向かう。採取した物の納品はどの受付でもいいらしい。

人が並んでいたので、前世のスーパーでレジを選ぶ時のように人が少なく、速く空く列に並んだ。ものの5分ほどで順番が来た。

「おや?小さい子達だね。なんの用だい?」

受付の人は30代くらいの女の人だ。

「常時依頼の薬草採取の納品」
「そうかい。じゃあここに出してくれるかい?」

私たちは持っていた皮袋をカウンターの上に出す。種類別に分けたので、3袋だ。中にはそれぞれ30本入っている。リーナから薬草は5本で1束だと聞いていたので、ちょうどピッタリにした。

「おお、こんなに取ってきたかい?どれどれ...ふむ、なかなかいいね」

そりゃ時間停止のアイテムボックスだからね。

「ふむ...これは他のよりいいね」

そう言って1本の薬草を見せてくる。それは私が採取したものだ。

「そうだね...全部で銀貨3枚と銅貨6枚だね」
「え?!」

私がなんで驚いてるのかというと、あまりにも高すぎるからだ。普通薬草は1束銅貨1枚が妥当なのだ。だから今回は銅貨18枚が妥当。

あ!ちなみに銅貨10枚で銀貨1枚といった両替だ。これは他の硬貨も同じ。なので、受付の人が言った値段は銅貨36枚、つまり予想の倍なのだ。

「なんでそんな高いの?」
「この30本のピピル草のうち、15本がとてもいい品質なんだよ。他の薬草も同じさ」

今回私とベルで15本ずつ、合計30本で納品した。そしてこの人が言った15本は全て私が採取したものだ。

「だから、この15本、合計で45本、束で買い取るから1束で銅貨3枚、他は銅貨1枚で合計36枚だよ。不服かい?」
「いえ、むしろ嬉しいです」
「そうかい。なら、少し待ってな」

そう言って受付の人は奥へと消え、すぐ戻ってきた。手には皮袋を持っている。

「ほれ、これがお金だよ。分け合えるように銅貨で入れて置いたよ」
「あ、ありがとうございます!」

そうだね、ベルと分け合うことを考えてなかったよ。

「じゃ、ギルドカードを出しな」

私たちはギルドカードをカウンターの上に出した。受付の人はそれを受け取るとなにやら機械のような物に差し込み、その機械を操作して、またすぐに返してくれた。

「ほれ、これで完了だよ。薬草を入れてた袋は返すよ」
「はい、ありがとうございます。あの、お姉さんの名前を聞いてもいいですか?」

今になって聞いてないことに気づいたんだよね。

「ああ、言ってなかったね。私の名前は"チェルシー"だよ」
「じゃあチェルシーさん、ありがとうございました」
「あいよ。またこんな薬草を納品してくれたら嬉しいよ」
「はい!」

私たちはギルドをでて屋敷に戻った。ご飯はまた同じで、お昼を食べるのを忘れていたからガッツリ頂いた。食べながらリーナとも今日の話をし、2倍の値段で買い取られたことに驚いていた。その後ベルと話し合い、お金は私が管理することになった。ベルいわく

「私がもってたら無駄遣いしちゃうもん!」

とのこと。まぁアイテムボックスの中で分けているから、出してと言われたら出せるけどね。

私たちは一緒にお風呂に入ると、それぞれの部屋へ向かった。私は久しぶりに歩き疲れたのか、直ぐに意識を手放した。
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