転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに

文字の大きさ
129 / 159
第6章 王都編

第128話 王都、再び

しおりを挟む
 えっとー…修羅場?ってどういうことかな?

「えっと、その……わたくしが六大英雄を知ったきっかけがお父様なのです」
「へー。そうなんだ」
「はい…それで、わたしくしがロビン様に誘われたと聞き、一緒にいくと言いだしまして……」

 あ、何となく話の展開が読めてきた。

「それで、キャサリンと揉めた?」
「わたくしとではなく、お母様とですわ」
「お母さん?」
「はい……『なにをしているのですか!大の大人が駄々をこねるなどみっともない!』と……」

 あぁー……

「それで修羅場」
「はい……仲はいいので心配はしていませんが、一応お母様から連絡がくるまでは帰らないほうがいいかと…」

 なるほどね。てっきり離婚の危機とかそういうのかと思ったけど、仲がいいならそれはありえないか。よくある夫婦喧嘩だね。

「なら、来ればいいじゃないか」

 突然後ろから声がかかる。振り向くとやはりと言ったらいいのか、ロビンがいた。来ればって……そう簡単なことじゃないと思うよ?貴族としての仕事とかあるだろうし。

「そのお誘いはとても有難いのですが、それはさすがに……」

 キャサリンが本当に申し訳無さそうに答えた。言い出しっぺはロビンなんだから、そこまで申し訳無さそうにしなくてもいいのに。

「なら、行けばいいか?」

 …………はい?









 という訳で、王都に来ました。いや、まさか王都に行くって案にマリアが乗ってくるとは思わなくてさ……ロビンだけだったら普通にはっ倒してでも止めたけど、マリアが賛成しちゃったら、ねぇ?

「フィリアさんもやはり凄いですのね……この距離を一度に転移するなど」

 思わずと言った様子でキャサリンが言う。今回王都に行くのは、私が転移を担当した。……ちょっと魔力が増えすぎてて怖かったから、魔法を使いたかったんだよね。それでも一割と減っていない。消費軽減の影響かなぁ……。

「フィリア、無理してない?」
「大丈夫だよ」
「本当に?この前熱出したばかりでしょう?」
「大丈夫だって」

 さっきからマリアがうるさい。
 ……いや、心配してくれてるのは分かるし嬉しいんだけど、本当に大丈夫だからそんなに心配されると鬱陶しい。

「私まで来てよかったの?」

 ベルがそう呟く。本来は私、キャサリン、ロビン、マリアだけで行こうかと思ったんだけど、キャサリンが連れていくと言い出したので誘か……ゲフンゲフン!ちゃんと説明して了承を貰ってから、連れてきた。

「わたしくしがいいと言うのですから、いいのですわ!」
「あ、ありがとう…」

 キャサリンの暴論。いや、暴論でもないのか?まぁ、いいか。

「それで、行けばいいのか?」
「はい。本当にご迷惑を……」
「いいのいいの。ちょうど久しぶりに王都を観光したかったし。ついでよ」

 そう言えば王都には最近来てたけど、マリアやロビンはそんなにゆっくりしてた訳じゃないもんね。

「……では、お詫びにと言ってはなんですが、わたくしが王都を案内しましょうか?」
「そうねぇ……」

 そこでマリアが私を見る。なんで?

「……うん。お願いしようかしら。フィリアは知らなそうだし」
「………なんでそう思ったの」
「貴方、結構顔に出るわよ?それとも、違った?」
「………合ってます」

 そうなんだよね……私そんなに王都のこと知らない。だって見て回ろうとか思わなかったんだもの。


「着きましたわ」

 キャサリンが立ち止まる。目の前には見慣れた建物が建っていた。そう言えば、来るの久しぶりかも。

「キャサリンお嬢様、お帰りなさいませ……おや、お客様ですか?」
「ええそう。お父様とお母様は?」
「現在お出かけになられておりますが」
「そう……とりあえず、客間へ」
「はい、かしこまりました。では、どうぞこちらへ」

 執事?の人の案内で、豪華な客間へと案内された。

「後程お茶をお持ち致します」
「お願い。じゃあ、フィリアさん!」
「うぇ!?な、なに?」

 いきなり私の名前を叫んだから、ビックリして変な声出ちゃったよ……

「わたくしの部屋へ案内しますわ!」
「あ、うん」
「私も行っていい?」
「もちろんですわ!さ、フィリアさん、ベルさん、行きましょう!」

 な、なんかいつもより元気一杯だなぁ……とりあえずキャサリンについて行く。
 二階に上がってそのまま突き当たり。そこがキャサリンの部屋らしい。

「さ!どうぞ!」

 そう言われて招き入れられた部屋は………なんというか、お嬢様!って感じの部屋だった。
 だってさ、ベットに天蓋ついてるよ?壁にもところどころ金の装飾が施されてるし。
 勉強の机も高そうなダークウッド。これにも金の装飾が施されている。でも、部屋全体がギラギラしてるとかそんな感じではなくて、ちゃんと調和のとれた、落ち着いた部屋だった。

「「ほぇー…」」

 2人揃って間抜けな顔をしているのがよく分かる。
 でも……ちょっと意外だったかも。てっきり部屋はピンクとか、可愛い感じかと思ってたから。

「わたくしも可愛いものは好きですのよ?でも、それが落ち着くかと言われれば……」

 あぁ……なるほどね。可愛いものが好きということを裏付けるように、部屋のそこかしこにぬいぐるみが顔を覗かせていた。

「可愛い……!」

 ベルがそのうちの一体を抱き上げた。キツネっぽいぬいぐるみ。触ってみると、結構柔らかくて、ふわふわしてた。
 ………案外クセになりそう。

「よろしければ差し上げますわよ?」
「いいのっ!?」
「はい」
「ありがとぉ!」

 ベルがキャサリンへと抱きついた。

「わわっ!」

 いきなりだった為にキャサリンが転びそうになる。それを私は咄嗟に弱い風で受け止めた。ふぅ……

「ベル」
「あっ!ごめんなさい!」
「あ、いえ。大丈夫ですわよ………というか、フィリアさんそんなに簡単に使ってますけど、さっきのかなり高度な魔法ですわよね?」
「そう、かな?」

 私からしたら結構簡単というか……あぁでも、威力が強すぎて、そこから弱くするのは難しかったかも。

「はぁ……フィリアさんって本当に……」
「なに?」
「いえ。なんでもありませんわ」
「そう?」
「それより、面白い本があるのですけど、読みます?」
「どんなの?」
「えっと…これですわ」

 キャサリンが差し出してきたのは、この世界では主流なミステリー小説だった。

「面白そうだね、読んでいいの?」
「はい。わたくしは読みましたので、後で感想を聞かせてくださいな」
「分かった」

 それから私たちはしばらくの間、お互いに本を交換しながら読み、感想を言い合ったのだった。



しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...