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学園 高等部1年 対抗戦編

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 サラから着替えを受け取ったクーリアは、その服に袖を通して、すぐにそれが高いものだと悟った。
 なぜなら、普段クーリアが使うものとは、比べ物にならないほど肌触りがよかったのだ。

「サラ、これって…」
「ふふ。驚いた?」

 サラはまるでイタズラが成功したことを喜ぶように微笑んだ。
 その反応を見て、クーリアはふくれっ面をした。

「こんな高いもの…」
「いいのいいの。それあげるから」

 サラがこう言ったら聞かないことを、クーリアは身をもって知っていた。これを断るとより高いものを押し付けられるのだ。なのでクーリアは、渋々その服を受け取ることにしたのだった。





 場所は変わり、クーリア達はサラの寝室のベットに寝転がっていた。
 寝室ではあるが、その広さはパン屋にあるクーリアの部屋の5倍はあるだろう。

「クー、今日はどうだった?」
「どうって?」
「対抗戦よ」

 あぁ…と納得した様子のクーリア。



 その言葉の本当の意味を、一体どれだけの人が理解できただろうか。

「そっか…って、そっちじゃなくて!」
「うにゅ?」

  思わずクーリアが変な声を出す。

(それ以外に何かあったっけ?)

「クー的には対抗戦、楽しかったの?」
「あぁ……うん、まぁまぁかな」

 クーリアにとってのまぁまぁがどれだけのものなのかは、その本人にしか分からない。だからとても曖昧な答え方だ。

「曖昧ねぇ……まぁ少しは楽しめたんだ」
「うん」

 クーリアは楽しんだ…というより、楽しかったのだ。

(あの防御魔法はまだ改良できるよね)

 サラと会話している間でも、クーリアは平常運転であった。

「サラは?」
「わたしもまぁまぁかな。でも、骨がある相手とは会えなかったよ」

 そもそもサラを満足させる、互角に戦える人は、ほぼいないだろう。それだけサラには実力があったのだ。

「だから明日は付き合って!」
「えぇー…」

 付き合って、とは、つまり模擬戦して!ということである。サラにとってクーリアは、ほぼ互角に戦える貴重な相手だったのだ。

 ………もっとも、サラはクーリアに手加減されていることに気づいているのだが。
 いつかは手加減なしで戦いたい、というのが、サラの目標でもあった。

「……まぁいいけど」
「やった!じゃあおやすみ!」

 そう言って本当にすぐに眠ってしまった。
 現在クーリアはサラと同じベットに寝ている。クーリアは隣ですぐに寝息を立て始めたサラに苦笑しつつ、自分もベットへと潜り込んだ。
















 


 ………皆が寝静まった夜。ベットから起き上がる1つの影があった。
 その影は口にハンカチを当て、咳き込む仕草をする。だが、そこに"音"は無い。
 そうして口から離れたハンカチには………赤いシミが出来ていた。
 その影はそれを見て何かを呟いたが、全くもって聞こえはしなかった。そしてそのままベットへともぐりこみ、何事もなかったかのように眠ってしまった。

 音はなかったが、口の動きから、おそらくこう言ったのだろう。

『まだ、時間はある』と……



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