36 / 138
学園 高等部1年 対抗戦編
30
しおりを挟む
サラから着替えを受け取ったクーリアは、その服に袖を通して、すぐにそれが高いものだと悟った。
なぜなら、普段クーリアが使うものとは、比べ物にならないほど肌触りがよかったのだ。
「サラ、これって…」
「ふふ。驚いた?」
サラはまるでイタズラが成功したことを喜ぶように微笑んだ。
その反応を見て、クーリアはふくれっ面をした。
「こんな高いもの…」
「いいのいいの。それあげるから」
サラがこう言ったら聞かないことを、クーリアは身をもって知っていた。これを断るとより高いものを押し付けられるのだ。なのでクーリアは、渋々その服を受け取ることにしたのだった。
場所は変わり、クーリア達はサラの寝室のベットに寝転がっていた。
寝室ではあるが、その広さはパン屋にあるクーリアの部屋の5倍はあるだろう。
「クー、今日はどうだった?」
「どうって?」
「対抗戦よ」
あぁ…と納得した様子のクーリア。
「異常はなかったよ」
その言葉の本当の意味を、一体どれだけの人が理解できただろうか。
「そっか…って、そっちじゃなくて!」
「うにゅ?」
思わずクーリアが変な声を出す。
(それ以外に何かあったっけ?)
「クー的には対抗戦、楽しかったの?」
「あぁ……うん、まぁまぁかな」
クーリアにとってのまぁまぁがどれだけのものなのかは、その本人にしか分からない。だからとても曖昧な答え方だ。
「曖昧ねぇ……まぁ少しは楽しめたんだ」
「うん」
クーリアは楽しんだ…というより、実験が楽しかったのだ。
(あの防御魔法はまだ改良できるよね)
サラと会話している間でも、クーリアは平常運転であった。
「サラは?」
「わたしもまぁまぁかな。でも、骨がある相手とは会えなかったよ」
そもそもサラを満足させる、互角に戦える人は、ほぼいないだろう。それだけサラには実力があったのだ。
「だから明日は付き合って!」
「えぇー…」
付き合って、とは、つまり模擬戦して!ということである。サラにとってクーリアは、ほぼ互角に戦える貴重な相手だったのだ。
………もっとも、サラはクーリアに手加減されていることに気づいているのだが。
いつかは手加減なしで戦いたい、というのが、サラの目標でもあった。
「……まぁいいけど」
「やった!じゃあおやすみ!」
そう言って本当にすぐに眠ってしまった。
現在クーリアはサラと同じベットに寝ている。クーリアは隣ですぐに寝息を立て始めたサラに苦笑しつつ、自分もベットへと潜り込んだ。
………皆が寝静まった夜。ベットから起き上がる1つの影があった。
その影は口にハンカチを当て、咳き込む仕草をする。だが、そこに"音"は無い。
そうして口から離れたハンカチには………赤いシミが出来ていた。
その影はそれを見て何かを呟いたが、全くもって聞こえはしなかった。そしてそのままベットへともぐりこみ、何事もなかったかのように眠ってしまった。
音はなかったが、口の動きから、おそらくこう言ったのだろう。
『まだ、時間はある』と……
なぜなら、普段クーリアが使うものとは、比べ物にならないほど肌触りがよかったのだ。
「サラ、これって…」
「ふふ。驚いた?」
サラはまるでイタズラが成功したことを喜ぶように微笑んだ。
その反応を見て、クーリアはふくれっ面をした。
「こんな高いもの…」
「いいのいいの。それあげるから」
サラがこう言ったら聞かないことを、クーリアは身をもって知っていた。これを断るとより高いものを押し付けられるのだ。なのでクーリアは、渋々その服を受け取ることにしたのだった。
場所は変わり、クーリア達はサラの寝室のベットに寝転がっていた。
寝室ではあるが、その広さはパン屋にあるクーリアの部屋の5倍はあるだろう。
「クー、今日はどうだった?」
「どうって?」
「対抗戦よ」
あぁ…と納得した様子のクーリア。
「異常はなかったよ」
その言葉の本当の意味を、一体どれだけの人が理解できただろうか。
「そっか…って、そっちじゃなくて!」
「うにゅ?」
思わずクーリアが変な声を出す。
(それ以外に何かあったっけ?)
「クー的には対抗戦、楽しかったの?」
「あぁ……うん、まぁまぁかな」
クーリアにとってのまぁまぁがどれだけのものなのかは、その本人にしか分からない。だからとても曖昧な答え方だ。
「曖昧ねぇ……まぁ少しは楽しめたんだ」
「うん」
クーリアは楽しんだ…というより、実験が楽しかったのだ。
(あの防御魔法はまだ改良できるよね)
サラと会話している間でも、クーリアは平常運転であった。
「サラは?」
「わたしもまぁまぁかな。でも、骨がある相手とは会えなかったよ」
そもそもサラを満足させる、互角に戦える人は、ほぼいないだろう。それだけサラには実力があったのだ。
「だから明日は付き合って!」
「えぇー…」
付き合って、とは、つまり模擬戦して!ということである。サラにとってクーリアは、ほぼ互角に戦える貴重な相手だったのだ。
………もっとも、サラはクーリアに手加減されていることに気づいているのだが。
いつかは手加減なしで戦いたい、というのが、サラの目標でもあった。
「……まぁいいけど」
「やった!じゃあおやすみ!」
そう言って本当にすぐに眠ってしまった。
現在クーリアはサラと同じベットに寝ている。クーリアは隣ですぐに寝息を立て始めたサラに苦笑しつつ、自分もベットへと潜り込んだ。
………皆が寝静まった夜。ベットから起き上がる1つの影があった。
その影は口にハンカチを当て、咳き込む仕草をする。だが、そこに"音"は無い。
そうして口から離れたハンカチには………赤いシミが出来ていた。
その影はそれを見て何かを呟いたが、全くもって聞こえはしなかった。そしてそのままベットへともぐりこみ、何事もなかったかのように眠ってしまった。
音はなかったが、口の動きから、おそらくこう言ったのだろう。
『まだ、時間はある』と……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
213
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる