出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに

文字の大きさ
88 / 138
学園 高等部2年 校外実習編

82※

しおりを挟む
 クーは馬車の幌の上から、固定砲台としての役割を担ってもらっている。これは前から決めていた役割だ。
 クーの武器は、短弓。一応近、中距離とカバーできる武器ではあるものの、やはり接近戦は危険がある。よって、この役割。
 ……もう1つ理由があったりするけれど、まだそれは言わないでおこう。

「さて。…この距離はクーの短弓は届かないわね」

 とはいえ、わざと馬車に近づける訳にはいかない。だから、2人で叩く。

「じゃあ、決めていた通りに」
「はい」

 リーフィアが杖を構え、魔法を行使する。

「《ウィンドカッター》!」

 数本の不可視の刃が、襲いかかる。
 ウィンドカッターによってその太い幹が切断され、木々が倒れる。

「キキィ!?」

 それと同時に、驚きの声を上げながら魔獣も落下してくる。これを待っていたのだ。

「はぁぁっ!」

 一気に駆け寄り、その首を切り飛ばす。
 
「…そこっ!」

 後ろを振り向きつつ、投げナイフを投擲する。すると見事に魔獣の眉間へと突き刺さり、絶命したのか木から落下してくる。

「あとは…っ!リーフィア!」

 あともう一体というところで、その魔獣がリーフィアへと襲いかかろうとしていた。
 わたしは咄嗟に声を上げたが、遅かった。
 リーフィアへと魔獣の手が迫り………しかし、その手は届くことなく地面へと落下した。

「大丈夫?!」
「は、はい…お姉ちゃんのおかげです」

 見ると胴体部分に矢が突き刺さっている。クーの仕業だろう。

「…にしても、よくこの距離を」

 わたしだったら、確実に外していた。…ううん。外すだけならまだいい。すぐ近くのリーフィアに当たっていた可能性だってあるだろう。それを、クーはやってのけた。

「…ごめんなさい。足を引っ張ってしまって」
「謝ることじゃないわ。リーフィアが無事だっただけでもう安心よ。でも、次からはちゃんと周りの把握もね」
「は、はいっ!」

 とはいえ、わたしにも落ち度はある。少しリーフィアから離れすぎた。

「さぁ戻りましょう」
「そうですね」

 とりあえず魔獣の死体は穴を掘って地面へと埋める。解体は技術として持ち合わせてはいない。男子の選択授業には含まれているため、ヴィクター達は出来るだろうが、そもそも時間が無い。

「よし。行きましょう」
「はい」

 死体は燃やす。そうしないと他の魔獣が寄ってきてしまって、帰り道に待ち伏せされてしまう恐れがあるから。

 リーフィアと共に馬車へと戻る。先にヴィクター達も無事に倒せたようで、もう既に出発の準備が整っていた。


「待った?」
「いや、さっき準備が終わったとこだ。直ぐに出るぞ」
「ええ」

 早く進まないと、先程の戦闘の音で魔獣が寄ってきてしまうからね。

「あ、そうだ。クー、これ」
「ん?……あぁ、別にいいのに」

 クーに渡したのは、魔獣へと命中した矢。鏃は無事だったし、矢は消耗品なので回収してきた。もちろん投げナイフも。

「持っときなさい。いつ何があるか分からないんだから」
「……そうだね」

 クーが矢を受け取り、歪みがないか確認した後、腰に着けた矢筒へと仕舞った。血は拭いといたからね。

「あと何本?」
「えっと…14、かな」

 用意していたのは15。少し少なかったかしら……

「まぁ無駄撃ちはしないように気をつけるよ」
「…そうね。最悪村で買いましょう」

 一応その判断も視野に入れつつ、わたしたちの馬車はガタゴトと揺れながら、森を進んで行った。




 

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

処理中です...