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63話
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何度も失敗したり鳥に邪魔されたりしながらも、相手の力を利用して自分を動かすという行動に関しては大分慣れてきた。瑠華ちゃん曰くこれは去なすという動きに近いのだとか。
「シッ!」
鋭く息を吐いて、去なした事で体勢が若干崩れた狼に対して一閃。[身体強化]を使う事で速さを確保し、漸く一太刀当てる事に成功した。でも手応えは浅い。
「っ!」
間髪入れず飛んできた羽を上体を逸らして回避し、鳥の次なる動きを警戒する。今までは平面的に周囲を警戒していたけれど、今回は三次元的に警戒しなくちゃいけないから結構辛い。飛ぶ敵が居るだけでこんなにも警戒範囲が広がるなんて思わなかった。
「ウザイ!」
もうね、羽がウザイ。こっちが遠距離攻撃出来ない事を理解しているからか、私が鳥に対して意識を向けている時は近付いて来ないし、だからって意識逸らしたらその瞬間突っ込んで来るしもうイライラする!
「瑠華様、奏様に手段をお与えになっては?」
「む…遠距離、か…」
戦っている最中にそんな言葉が聞こえてきた。瑠華ちゃんに頼り切りなのは嫌だけど、現状思い付く気がしないしなぁ……。
「一応“理”は教えておるのじゃが…」
「“理”って瑠華ちゃんが教えてくれたあの文字使うやつ? あっ…」
嘴でドスっと心臓一突き。わぁ、身体にでっかい風穴開いたァ……
「……一旦止めるかの」
瑠華ちゃんが手で制して式神が止まる。どうやら流石に戦闘しながら教えるほど鬼ではないらしい。
「教官は鬼人じゃがな」
「……確かに」
「?」
思考が読める瑠華ちゃんとは違って、何の話か分からない紫乃ちゃんが小首を傾げる。な、何でもないよ。
「“理”に関しては、奏が以前クイーンアンツに対して使っておったのう」
「あー…うん。燃費の悪さにめちゃびっくりしたけど」
具体的に言うと、瑠華ちゃんから貰ったネックレスの魔力が丸々無くなった。もうね、私の分含め綺麗にすっからかんなの。あの時初めて使ったけど、マジでヤバい。
「本来人の身には合わぬものじゃからのぅ」
……瑠華ちゃんほんとに何者なんだろね。聞いても答えてはくれないんだろうけど。
「…奏が強くなった時、知る事が出来るやもしれんの」
「っ!」
強くなった時……それって私が瑠華ちゃんに追い付けた時かな。瑠華ちゃんが無理な課題を出すとも思えないし、私が追い付けるのを確信してるのかな? そうだと嬉しいな……。
「さて、まぁ“理”は今回よかろう。普段使いするには取り回しが悪いでの。そこでじゃ、奏」
「なぁに?」
「使いたい魔法属性はあるかの?」
「…ふぇ?」
使いたい魔法属性……?
「あ、成程。因子付与ですね?」
「うむ。今の奏ならば一つ受け入れる事は出来るじゃろうしのう」
「えーと……うん?」
待ってね。確か魔法の属性因子ってダンジョンに潜った時、ごく稀に手に入る…っていう認識で合ってる? …うん、合ってるっぽい。瑠華ちゃんが頷いてくれた。便利だなこれ。
「思考を読んでおる事を前提で話すでないわ」
「えへ。えっと…じゃあ瑠華ちゃんは、そんな珍しい属性因子を誰かに付与出来るって事?」
「出来るぞ。ただ自然に獲得するよりも身体に負担が掛かりやすくてのう。付与出来る数には制限があるのじゃ」
「それで今の私には一個だけ付与出来るって言ったのね…」
……うん、ほんとに瑠華ちゃん何者?
「それでどうするのじゃ?」
「あー…うーん……」
いざ使えるようになるって言われると迷うね。瑠華ちゃんみたいな火属性とか氷属性とかにも憧れはあるけど……。
「…じゃあ風かな。使い勝手良さそうだし」
「ふむ、良い選択じゃな。では……」
てっきり触れてくるかと思ったら、その場で目を閉じて黙っちゃった。これ悪戯「邪魔するでない」……ハイ。
待つ事暫く。突然身体がポカポカと熱を持ち始めて、ちょっと慌ててしまった。これが因子を獲得するって事…?
「違和感は無いかの?」
「…うん、特には無いかな」
「ならば先ずは因子を感じて使ってみるところからじゃな。手順は魔力を感じる過程とほぼ同じじゃ」
「魔力を感じる…あっ」
「分かったかの?」
「うん…これ、かな」
いつもスキルを使う時に感じていた魔力に、何か混じっているのを感じた。これが因子なのかな…?
「ではその混じった物を集めた魔力を掌に出してみるのじゃ」
「うーん…」
結構難しいかも…でもちょっとずつ魔力の球が掌に出来てきた。
「それに呪文を唱えて意味を与え、放つのが魔法じゃ。簡単な風属性の呪文は確か…《切り裂け》じゃな。風の刃を放つ魔法じゃよ」
「えーっと…《切り裂け》! おぉっ!」
魔力の球が半透明で半月状の刃に変わり、私の掌から飛び出す。これが魔法……楽しい。
「反復練習する事で生成する時間も短縮出来る。最終的に呪文を唱えれば、勝手に魔力が魔法に変換されるようになるのが理想じゃな」
「ほえぇ…先長そぉ…」
瑠華ちゃんの焔の矢みたいな速度になるにはどんだけ掛かるんだろ…頑張ろ。
「再開するぞ」
「うんっ」
今度こそあの鳥の顔に泥つけてやるんだから!
…あっ、え待って貴方も風の刃飛ばせ………
「シッ!」
鋭く息を吐いて、去なした事で体勢が若干崩れた狼に対して一閃。[身体強化]を使う事で速さを確保し、漸く一太刀当てる事に成功した。でも手応えは浅い。
「っ!」
間髪入れず飛んできた羽を上体を逸らして回避し、鳥の次なる動きを警戒する。今までは平面的に周囲を警戒していたけれど、今回は三次元的に警戒しなくちゃいけないから結構辛い。飛ぶ敵が居るだけでこんなにも警戒範囲が広がるなんて思わなかった。
「ウザイ!」
もうね、羽がウザイ。こっちが遠距離攻撃出来ない事を理解しているからか、私が鳥に対して意識を向けている時は近付いて来ないし、だからって意識逸らしたらその瞬間突っ込んで来るしもうイライラする!
「瑠華様、奏様に手段をお与えになっては?」
「む…遠距離、か…」
戦っている最中にそんな言葉が聞こえてきた。瑠華ちゃんに頼り切りなのは嫌だけど、現状思い付く気がしないしなぁ……。
「一応“理”は教えておるのじゃが…」
「“理”って瑠華ちゃんが教えてくれたあの文字使うやつ? あっ…」
嘴でドスっと心臓一突き。わぁ、身体にでっかい風穴開いたァ……
「……一旦止めるかの」
瑠華ちゃんが手で制して式神が止まる。どうやら流石に戦闘しながら教えるほど鬼ではないらしい。
「教官は鬼人じゃがな」
「……確かに」
「?」
思考が読める瑠華ちゃんとは違って、何の話か分からない紫乃ちゃんが小首を傾げる。な、何でもないよ。
「“理”に関しては、奏が以前クイーンアンツに対して使っておったのう」
「あー…うん。燃費の悪さにめちゃびっくりしたけど」
具体的に言うと、瑠華ちゃんから貰ったネックレスの魔力が丸々無くなった。もうね、私の分含め綺麗にすっからかんなの。あの時初めて使ったけど、マジでヤバい。
「本来人の身には合わぬものじゃからのぅ」
……瑠華ちゃんほんとに何者なんだろね。聞いても答えてはくれないんだろうけど。
「…奏が強くなった時、知る事が出来るやもしれんの」
「っ!」
強くなった時……それって私が瑠華ちゃんに追い付けた時かな。瑠華ちゃんが無理な課題を出すとも思えないし、私が追い付けるのを確信してるのかな? そうだと嬉しいな……。
「さて、まぁ“理”は今回よかろう。普段使いするには取り回しが悪いでの。そこでじゃ、奏」
「なぁに?」
「使いたい魔法属性はあるかの?」
「…ふぇ?」
使いたい魔法属性……?
「あ、成程。因子付与ですね?」
「うむ。今の奏ならば一つ受け入れる事は出来るじゃろうしのう」
「えーと……うん?」
待ってね。確か魔法の属性因子ってダンジョンに潜った時、ごく稀に手に入る…っていう認識で合ってる? …うん、合ってるっぽい。瑠華ちゃんが頷いてくれた。便利だなこれ。
「思考を読んでおる事を前提で話すでないわ」
「えへ。えっと…じゃあ瑠華ちゃんは、そんな珍しい属性因子を誰かに付与出来るって事?」
「出来るぞ。ただ自然に獲得するよりも身体に負担が掛かりやすくてのう。付与出来る数には制限があるのじゃ」
「それで今の私には一個だけ付与出来るって言ったのね…」
……うん、ほんとに瑠華ちゃん何者?
「それでどうするのじゃ?」
「あー…うーん……」
いざ使えるようになるって言われると迷うね。瑠華ちゃんみたいな火属性とか氷属性とかにも憧れはあるけど……。
「…じゃあ風かな。使い勝手良さそうだし」
「ふむ、良い選択じゃな。では……」
てっきり触れてくるかと思ったら、その場で目を閉じて黙っちゃった。これ悪戯「邪魔するでない」……ハイ。
待つ事暫く。突然身体がポカポカと熱を持ち始めて、ちょっと慌ててしまった。これが因子を獲得するって事…?
「違和感は無いかの?」
「…うん、特には無いかな」
「ならば先ずは因子を感じて使ってみるところからじゃな。手順は魔力を感じる過程とほぼ同じじゃ」
「魔力を感じる…あっ」
「分かったかの?」
「うん…これ、かな」
いつもスキルを使う時に感じていた魔力に、何か混じっているのを感じた。これが因子なのかな…?
「ではその混じった物を集めた魔力を掌に出してみるのじゃ」
「うーん…」
結構難しいかも…でもちょっとずつ魔力の球が掌に出来てきた。
「それに呪文を唱えて意味を与え、放つのが魔法じゃ。簡単な風属性の呪文は確か…《切り裂け》じゃな。風の刃を放つ魔法じゃよ」
「えーっと…《切り裂け》! おぉっ!」
魔力の球が半透明で半月状の刃に変わり、私の掌から飛び出す。これが魔法……楽しい。
「反復練習する事で生成する時間も短縮出来る。最終的に呪文を唱えれば、勝手に魔力が魔法に変換されるようになるのが理想じゃな」
「ほえぇ…先長そぉ…」
瑠華ちゃんの焔の矢みたいな速度になるにはどんだけ掛かるんだろ…頑張ろ。
「再開するぞ」
「うんっ」
今度こそあの鳥の顔に泥つけてやるんだから!
…あっ、え待って貴方も風の刃飛ばせ………
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