ドラゴンさんの現代転生

家具屋ふふみに

文字の大きさ
118 / 197

118話

しおりを挟む
 脱線した話をそろそろ元に戻して、本題の方へ移る。

「効果範囲に入ってるかは見てもあんまり分かんないね」

「まぁ叩けば分かるじゃろ」

 :意外と脳筋よね瑠華ちゃんって。
 :なまじ全部力で解決出来ちゃうから…

 実際のところ瑠華は別に脳筋でも戦闘狂でもないのだが……全てにおいて最適で最短に問題を解決する手段を選んでしまうので、どうしても結局は殴った方が早いになってしまうのである。

「じゃあまずは凪沙がやってみようか。前手も足も出なかったし」

「リベンジ」

 前回は虚しく全ての矢が弾かれてしまい何も出来なかった凪沙が、決意を漲らせる。

 キリキリと弦を引き絞り、狙うは目の前で臨戦態勢を取るコガネン。効果範囲の関係上どうしてもいつもより近い場所からの狙撃となる為、奏が自分から動いてタゲを取る選択をしていた。

 :奏ちゃんの動きいいね。
 :ちゃんとそれぞれの役割と立ち回りが見えてきてる。
 :奏ちゃんも成長してるんだなぁ。

(珠里との特訓は良い影響を与えておるようじゃな)

 以前に比べて安心感が増した奏の動きに、瑠華が思わず笑みを零した。

 タイミングを見計らい、凪沙が矢を放つ。高い風切り音を響かせて矢が真っ直ぐにコガネンへと向かい――――スコンッと軽い音を立てて装甲を貫いた。

「おお…」

「奏。感心しとらんと早くとどめを刺すのじゃ」

「あっ、えい!」

 :掛け声可愛い。
 :しかし絵面は可愛くない。
 :武器振り回す女の子可愛いだろ。
 :それな。しっかし結構効果あるね?
 :凪沙ちゃんの矢が刺さるのが一番の証明。

「中々効果は良いのではないかえ?」

「そうだね。私も斬った感じそこまで抵抗感は強くなかったし。ただまぁ設置型っていうのがネックではあるよね」

「コガネンは動き遅いからまだいい。でも他には難しい…かも?」

 :コガネン特効かぁ…
 :需要見込めなそう。

「これだけでは確かに需要は見込めんな。しかしコガネンの素材を用いた物の性能次第なところはあるのではないかえ?」

「あっ! もしかしてその為に?」

「気付いておらんかったのか……」

 雫は製品の良さと悪さを当然ながら理解しているので、それに伴う反応もある程度予想出来た。なので人を釣る餌としての効果を期待して、コガネンの素材を用いた道具を渡していたのだ。
 瑠華はその思惑を言われずとも理解していたが、どうやら奏は気付いていなかったようだ。瑠華が呆れてしまうのも致し方ない。

「えと…じゃーん!」

「誤魔化し方が雑じゃろうて…」

 居た堪れなくなった奏が、事前に渡されていたコガネン素材の試作品を取り出してカメラの前に掲げる。あからさまなその行動に瑠華が思わず苦笑した。

 :草。
 :勢いで乗り切ろうとすなwww
 :取り出したのってコガネンの素材使ったやつ?
 :用意周到だなぁ。

「そうだよ。これがコガネンの素材を用いて作った武器で、所謂投げナイフだね」

 鈍い色を放つそれは、普通に使うには少々小さな見た目をしたナイフだ。軽さと頑丈性に着目して、使い捨てない投げナイフという構想の元設計されている。

「という訳で瑠華ちゃん。デモンストレーションよろしく」

「確かにこの中では妾しか出来んか…」

 :さす瑠華。
 :使えない武器ないよね、瑠華ちゃん。

 奏から投げナイフを受け取って重心を確認し、軽く構えて投げ放つ。緩やかな起動を描いて飛翔したナイフは、その軽やかさとは裏腹にコガネンの顔面に深々と突き刺さった。

「おぉ…」

 :すげぇ。
 :切れ味良すぎんか?
 :それに鉄じゃないから重すぎる事もなさそう。
 :※ただし瑠華ちゃんだと参考になりません。
 :それなんだよなぁ……

「え、なんで瑠華ちゃんだと参考にならないの?」

 :だって瑠華ちゃんなら包丁とかでも岩斬れそうだし。
 :瑠華ちゃんだから出来たと言われても納得しちゃうから……。

「実際出来るの? 瑠華ちゃん」

「包丁は流石に厳しいが…今の奏の刀程度ならば斬る事は可能じゃよ」

「出来るんだ…」

 :草。
 :ほ、他にも試作品はあるよね?

「あ、うん。試作品はこれだけじゃなくて…こんな感じの盾とかもあるよ」

 次に奏が取り出したのは、所謂バックラーと呼ばれる盾だ。金属部品が一部に使われているものの、構成しているのは殆どがコガネンの素材である。

「なんと言っても軽いね! 私が片手で持てるくらいだもん!」

 :奏ちゃんが持てるなら軽いか。
 :瑠華ちゃんは多分重さすら感じないから……
 :軽いのはいいけど硬いの?

「硬さも結構あるね。それにこれ実は面白い機構があって……ほらこれ。盾の後ろに魔核を嵌める場所があるんだ。これでコガネンの障壁を再現する事が出来るらしいよ」

 :ほー!
 :あり?
 :コスパがどんなもんか分からないけど、あの硬さが出るなら一考する価値あるかも。

「コスパ…どれくらい魔力が持つかって事かな? 瑠華ちゃんどう?」

「……何故妾に聞いて答えが返ってくると思ったのじゃ?」

「だって瑠華ちゃんだし」

 :瑠華ちゃんだもの。
 :我々の常識を壊す事に定評のある瑠華ちゃんですもの。
 :でどうなん?

「……詳しくは、分からん。じゃが障壁というものは受けられる衝撃の上限がある。それを超える衝撃が加わった場合、最もその負荷を受けるのはそれを展開した主じゃ。今回の場合は魔核じゃな」

「つまりどういう事?」

「負荷の程度にもよるが、まず間違いなく魔核が砕けるじゃろうな」

「あー……受けられる回数とかじゃなくて、威力が大事なんだね」

「そうじゃな」

 :為になるぅ。
 :つまり無茶するなって事ね。
 :じゃあずっと展開したらどれ位で魔力無くなるの?

「ずっと展開などと言うておるが、そも障壁は結界とは異なるものじゃぞ?」

「そうなの?」

「結界ならば質問の通り展開する時間に応じて魔力を消費するが、障壁は攻撃を受ける瞬間にその間だけ展開するものじゃ。故に魔力効率の面から言えば、障壁の方が優れておる」

 :そうなの!?
 :あんまり違いよく分かってなかったから助かる。
 :じゃあ結界って下位互換?

「そうでもないぞ? 障壁は攻撃を受ける瞬間に展開されるもの故、咄嗟の攻撃や連続した攻撃には弱いのじゃ。展開される基準は、主がその攻撃を認識しているかどうかじゃからの」

 なので瑠華が【柊】の子供たちに配っている木札には、[簡易結界]が付与されているのだ。因みにこれは自動発動型のものであり、簡易と言いつつ瑠華の割と本気の攻撃を一回だけ耐える程の防御力を誇る。明らかに過剰である。

 :一長一短って事か。
 :瑠華ちゃん的にこの盾はあり?

「良いのではないかえ? 大きさも丁度良く使い勝手も良いじゃろうからな」

「でも正直瑠華ちゃんには要らないよね、コレ」

「それを言ってしまうのは流石に駄目じゃろ…」

 :草。
 :一応スポンサー案件なんだよなこれwww
 :怒られる怒られるwww




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

処理中です...