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暴走
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「誰しもが、未知の力を恐れるものだからね」
同族はユーリの強大な力を恐れたのだ。自分たちとは、根底から違う力に。
「それに…」
「それに…?」
「……ある、伝承があったんだよ」
その伝承とは…天使族の始祖についてだった。
「わたし以外にも生まれ変わりは過去に居たみたいでね。そのことも伝わっていたんだ」
「そうだったのですか…でも、それがどう繋がるのです?」
「…始祖。又はその生まれ変わりは、強大な力を保有する。だが、その力を制御することが出来なかった」
「……え?」
身の丈に合わない力。それは己を滅ぼす。
強大な力に呑まれた天使族の始祖は……
「……暴走、したんだよ」
「暴、走…」
自我を失い、制御することが出来ない力の渦。それはまさに……天災だった。
「…まさか」
「そう。わたしの仲間たちは恐れたんだよ。わたしが暴走することを」
だから、暴走する前に消そうとしたのだ。
「……でも、彼らは見誤っていたんだ」
「……何をです?」
「…わたしの力をね」
ユーリの力。正確には、始祖としての力。それは並の天使族を遥かに凌ぐ。そんな力を持つ存在を、普通の武器で倒せるはずが無いのだ。
「…無論、背中から刺されたことに対しての痛みはあったんだよ」
ただ単に、死ぬ前に傷が驚異的な速さで治る。それだけなのだ。そのため、普通に痛みはある。
……死ぬほどの痛みが。
「…それで、どうなったのですか?」
「……わたしの意識は無くなった」
覚醒したとはいえ、そう時間も経っていなかった為、ユーリはその痛みを耐えることが出来ず、気絶したのだ。
「……問題は、そこだったんだよ」
「…え?」
ユーリの意識が無くなったこと。それこそが、問題だった。
覚醒したての、不安定な力。それを安定させる、抑制する為の意識が失われた状態になってしまったのだから。その後に起こったことは、想像するに容易い。
「……暴走」
「そう。わたしという意識を失った、最早獣に近い力が、暴走してしまったんだよ」
意識を失った力に、仲間の区別をすることは出来ない。害する存在、全てが敵なのだ。
………そしてユーリは、全てを失った。
住む村も。
同族も。
友も。
……家族も。
「……正直、死にたかったよ。意識が戻った時にね」
意識が戻ったユーリが見たのは……辺り一面が何も無くなった、荒野だった。それを見て、何も感じないはずがなかった。
「……でも、死ねなかった」
自身の力でも、自身を殺すことは不可能だった。常に体は、最善の状態に保たれる。そこにユーリの意思は存在しない。
「………じゃあ、あの翼の色は」
「…わたしの、罪の印だよ。多くの命を奪った、ね」
「そんな…ユーリ様は「悪くない」…」
ユーリがマリの言葉の先を繋げる。だが、悪くないと言いながら、ユーリの表情は歪んでいた。
「…悪いよ、わたしは。あの戦争を終わらせた張本人なんだから」
「……え?」
同族はユーリの強大な力を恐れたのだ。自分たちとは、根底から違う力に。
「それに…」
「それに…?」
「……ある、伝承があったんだよ」
その伝承とは…天使族の始祖についてだった。
「わたし以外にも生まれ変わりは過去に居たみたいでね。そのことも伝わっていたんだ」
「そうだったのですか…でも、それがどう繋がるのです?」
「…始祖。又はその生まれ変わりは、強大な力を保有する。だが、その力を制御することが出来なかった」
「……え?」
身の丈に合わない力。それは己を滅ぼす。
強大な力に呑まれた天使族の始祖は……
「……暴走、したんだよ」
「暴、走…」
自我を失い、制御することが出来ない力の渦。それはまさに……天災だった。
「…まさか」
「そう。わたしの仲間たちは恐れたんだよ。わたしが暴走することを」
だから、暴走する前に消そうとしたのだ。
「……でも、彼らは見誤っていたんだ」
「……何をです?」
「…わたしの力をね」
ユーリの力。正確には、始祖としての力。それは並の天使族を遥かに凌ぐ。そんな力を持つ存在を、普通の武器で倒せるはずが無いのだ。
「…無論、背中から刺されたことに対しての痛みはあったんだよ」
ただ単に、死ぬ前に傷が驚異的な速さで治る。それだけなのだ。そのため、普通に痛みはある。
……死ぬほどの痛みが。
「…それで、どうなったのですか?」
「……わたしの意識は無くなった」
覚醒したとはいえ、そう時間も経っていなかった為、ユーリはその痛みを耐えることが出来ず、気絶したのだ。
「……問題は、そこだったんだよ」
「…え?」
ユーリの意識が無くなったこと。それこそが、問題だった。
覚醒したての、不安定な力。それを安定させる、抑制する為の意識が失われた状態になってしまったのだから。その後に起こったことは、想像するに容易い。
「……暴走」
「そう。わたしという意識を失った、最早獣に近い力が、暴走してしまったんだよ」
意識を失った力に、仲間の区別をすることは出来ない。害する存在、全てが敵なのだ。
………そしてユーリは、全てを失った。
住む村も。
同族も。
友も。
……家族も。
「……正直、死にたかったよ。意識が戻った時にね」
意識が戻ったユーリが見たのは……辺り一面が何も無くなった、荒野だった。それを見て、何も感じないはずがなかった。
「……でも、死ねなかった」
自身の力でも、自身を殺すことは不可能だった。常に体は、最善の状態に保たれる。そこにユーリの意思は存在しない。
「………じゃあ、あの翼の色は」
「…わたしの、罪の印だよ。多くの命を奪った、ね」
「そんな…ユーリ様は「悪くない」…」
ユーリがマリの言葉の先を繋げる。だが、悪くないと言いながら、ユーリの表情は歪んでいた。
「…悪いよ、わたしは。あの戦争を終わらせた張本人なんだから」
「……え?」
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