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第6章
分からないものは分からない
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「お久しぶり……でもないですかね?」
私は部屋にあったソファに座ったまま、そう言葉をかける。
「まぁ、そんなことはどうでもよいじゃろう」
そう言いながら、おじいさんは私の対面のソファへと座った。ま、確かに大して問題ではないね。
「して、今日はどういう要件じゃ?」
「えっとですね……実はある魔道具を買いたいのですけど」
「魔道具? どのようなものじゃ?」
「魔力を抑える魔道具です」
魔力を抑える。つまり、魔法などを使う際に過剰な魔力を使わないよう制御する、ということだ。ハクに聞いたところ、魔力が元々膨大で、魔法が上手く制御出来ない人向けに開発されたものらしい。
……うん、つまりサーニャさんにうってつけの魔道具なんだ。
「その程度のものならあるが……わざわざ頼むということは、何か理由があるのじゃな?」
さすが商人。よく分かってる。
「私と一緒にいたエルフの人に使いたいのです」
「確かにおったな。なるほど……それでは、一般的な人用では無理じゃな」
エルフは人間とは異なり、桁違いの魔力を有する。加えてサーニャさんは火龍のハーフだ。並大抵の魔道具では魔力を制御しきれないだろう。だからこそ、特別な魔道具が必要になる。そんなもの、普通の店に売ってるはずがない。
というかおじいさんの口ぶりから分かるけど、サーニャさんのこと覚えていたみたいだね。
「うむ……叶えてやりたいのは山々だが、厳しいのぅ」
「……やはり、ですか」
そもそもエルフは魔力が膨大ではあるけれど、その分制御力もずば抜けている為、こういった魔道具を使うことはまず無い。つまり仮に作ったとしても、需要がほぼないのだ。やっぱり無かったかぁ……
「…じゃが、ここにはないが、作り手を紹介することはできるぞ」
「作り手、ですか?」
「材料を自身で用意できるのなら、作って貰えるじゃろう」
材料……ハク、残ってる?
『無限収納庫を確認……情報参照。一般的な魔力制御魔道具の材料はそろっています。……が、マリーナ様御自身が作るのは賛同しかねます』
……確かにそうね。
ハクの言葉に同意する。材料が揃っているので、わたしが作ることも出来なくはない。けれど……多分、それだとサーニャさんが扱いきれない代物ができちゃう。
というのも、魔道具には"魔力の器"と呼ばれる装置が組み込まれていて、その器を魔力で満たすことで魔道具が動くのだけど……わたしの魔力はサーニャさんを超える膨大なもので、質も最上位。そんな魔力で器を作ると、当然容量がとんでもないことになる。結果、わたししか使えない魔道具が出来てしまうのだ。マジックポーチとかは別なんだけどね。
「材料は用意出来そうなので、教えてくれますか?」
「分かった」
そう言ってこの街の地図を取り出し、ある場所に丸を書いた。
「この街にいるんですね」
「そうじゃ。腕は保証するぞ」
「もとより疑ってませんよ」
このおじいさんが知っている人物というだけあって、只者ではないのだろう。疑う余地はない。
「して、要件はこれだけか?」
「今のところはそうですね」
料理に使う食材は今のところ間に合っている。他に必要なものは……
「あ…魚ってあります?」
そういえば魚を見た事無かった気がする。
「魚は保存が難しい関係上、ここら辺では出回っておらん。沿岸部ならばその限りではないがの」
「そうですか……」
まぁ、そうだよね。魔法で冷やせるといっても、それなりにコストがかかるんだもの。それなら保存がきく食材を運搬した方が儲けがある。
「では、また機会があれば伺いますね」
「用事がなくとも、たまには年寄りの世間話にくらい付き合ってくれんかの?」
「……まぁ、考えておきます」
玉虫色の返事を返し、わたしは書いてもらった地図を片手に商会を後にした。
《主様、なんか変じゃない?》
「何が?」
商会を出るなり、いきなりプレナがそう言ってきた。変…?
《主様の受け答えを平然として受け止めてるところだよ! 主様の姿だと普通は子供扱いでしょ? それで中身との違いに驚くなりあると思うんだけど……》
……プレナがわたしのことをどう思っているのか分かった気がする。でも確かに、プレナの言ったことは分かる。今更ながら不自然だ。
「うーん……でも結構やり手の商人ぽいし、わたしがレシピを広めている人物ってことくらいは掴んでたんじゃないかな。それであの対応になったとは考えられない?」
《……それは、あるかも》
それに会ったのは初めてではないし。でも最初に会った時も不思議がる様子はなかったな……もしかして、あの時から気付かれてた? じゃああの時の息子って……まさか……
「……考えすぎ、とは思えないのがなんともなぁ……」
まぁこの件はいくら考えても答えが出る訳ないので、早々に思考を放棄する。
「とりあえずプレナのポーチを受け取ってから、紹介してくれた人に会いに行こうか」
《うん》
私は部屋にあったソファに座ったまま、そう言葉をかける。
「まぁ、そんなことはどうでもよいじゃろう」
そう言いながら、おじいさんは私の対面のソファへと座った。ま、確かに大して問題ではないね。
「して、今日はどういう要件じゃ?」
「えっとですね……実はある魔道具を買いたいのですけど」
「魔道具? どのようなものじゃ?」
「魔力を抑える魔道具です」
魔力を抑える。つまり、魔法などを使う際に過剰な魔力を使わないよう制御する、ということだ。ハクに聞いたところ、魔力が元々膨大で、魔法が上手く制御出来ない人向けに開発されたものらしい。
……うん、つまりサーニャさんにうってつけの魔道具なんだ。
「その程度のものならあるが……わざわざ頼むということは、何か理由があるのじゃな?」
さすが商人。よく分かってる。
「私と一緒にいたエルフの人に使いたいのです」
「確かにおったな。なるほど……それでは、一般的な人用では無理じゃな」
エルフは人間とは異なり、桁違いの魔力を有する。加えてサーニャさんは火龍のハーフだ。並大抵の魔道具では魔力を制御しきれないだろう。だからこそ、特別な魔道具が必要になる。そんなもの、普通の店に売ってるはずがない。
というかおじいさんの口ぶりから分かるけど、サーニャさんのこと覚えていたみたいだね。
「うむ……叶えてやりたいのは山々だが、厳しいのぅ」
「……やはり、ですか」
そもそもエルフは魔力が膨大ではあるけれど、その分制御力もずば抜けている為、こういった魔道具を使うことはまず無い。つまり仮に作ったとしても、需要がほぼないのだ。やっぱり無かったかぁ……
「…じゃが、ここにはないが、作り手を紹介することはできるぞ」
「作り手、ですか?」
「材料を自身で用意できるのなら、作って貰えるじゃろう」
材料……ハク、残ってる?
『無限収納庫を確認……情報参照。一般的な魔力制御魔道具の材料はそろっています。……が、マリーナ様御自身が作るのは賛同しかねます』
……確かにそうね。
ハクの言葉に同意する。材料が揃っているので、わたしが作ることも出来なくはない。けれど……多分、それだとサーニャさんが扱いきれない代物ができちゃう。
というのも、魔道具には"魔力の器"と呼ばれる装置が組み込まれていて、その器を魔力で満たすことで魔道具が動くのだけど……わたしの魔力はサーニャさんを超える膨大なもので、質も最上位。そんな魔力で器を作ると、当然容量がとんでもないことになる。結果、わたししか使えない魔道具が出来てしまうのだ。マジックポーチとかは別なんだけどね。
「材料は用意出来そうなので、教えてくれますか?」
「分かった」
そう言ってこの街の地図を取り出し、ある場所に丸を書いた。
「この街にいるんですね」
「そうじゃ。腕は保証するぞ」
「もとより疑ってませんよ」
このおじいさんが知っている人物というだけあって、只者ではないのだろう。疑う余地はない。
「して、要件はこれだけか?」
「今のところはそうですね」
料理に使う食材は今のところ間に合っている。他に必要なものは……
「あ…魚ってあります?」
そういえば魚を見た事無かった気がする。
「魚は保存が難しい関係上、ここら辺では出回っておらん。沿岸部ならばその限りではないがの」
「そうですか……」
まぁ、そうだよね。魔法で冷やせるといっても、それなりにコストがかかるんだもの。それなら保存がきく食材を運搬した方が儲けがある。
「では、また機会があれば伺いますね」
「用事がなくとも、たまには年寄りの世間話にくらい付き合ってくれんかの?」
「……まぁ、考えておきます」
玉虫色の返事を返し、わたしは書いてもらった地図を片手に商会を後にした。
《主様、なんか変じゃない?》
「何が?」
商会を出るなり、いきなりプレナがそう言ってきた。変…?
《主様の受け答えを平然として受け止めてるところだよ! 主様の姿だと普通は子供扱いでしょ? それで中身との違いに驚くなりあると思うんだけど……》
……プレナがわたしのことをどう思っているのか分かった気がする。でも確かに、プレナの言ったことは分かる。今更ながら不自然だ。
「うーん……でも結構やり手の商人ぽいし、わたしがレシピを広めている人物ってことくらいは掴んでたんじゃないかな。それであの対応になったとは考えられない?」
《……それは、あるかも》
それに会ったのは初めてではないし。でも最初に会った時も不思議がる様子はなかったな……もしかして、あの時から気付かれてた? じゃああの時の息子って……まさか……
「……考えすぎ、とは思えないのがなんともなぁ……」
まぁこの件はいくら考えても答えが出る訳ないので、早々に思考を放棄する。
「とりあえずプレナのポーチを受け取ってから、紹介してくれた人に会いに行こうか」
《うん》
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