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第7章
知らぬところで事は進む
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わたしがマリーナ様によって森に強制的に飛ばされてから、早いもので一週間が過ぎました。
一時はどうなる事かと思いましたが、お父さんに会うことが出来たので助かっています。恐らくですが、マリーナ様はそれを見越して此処に私を飛ばしたのだと思います。
「魔力を無理に押し込める必要は無い。身体全体を器として考えるんだ」
「はい」
お父さんから魔力を使い方を指南して貰います。長く生きているだけあってそのやり方は洗練されていて、とても効率的だと感じました。
魔力を一箇所に留めるのではなく、身体全体を器として捉え、魔力を全体に浸透させる意識で動かす。
言葉にすればそれだけですが、実際は高い魔力制御が必要でとても難しいです。
魔力が多い存在は魔力を一箇所に集めて留める事が難しい為に、こうした方法を自ら生み出しているのだそうです。しかしそこであれ? と疑問が浮かびます。そうなるとマリーナ様は何かしているのでしょうか…?
「あの方か。わたしは一瞬見ただけだが、息をするかのように自然に魔力を身体中に巡らせていた。……いや、“そうせざるを得ないから”巡らせていた、と言うべきか」
「どういう事ですか?」
「あの方はわたし達とは一線を画す存在だからだ。そうだな……この世界にはステータスと呼ばれる物があるが、それは神には適応されていない。何故か分かるか?」
問われ、考えます。わたし達にとってステータスは当たり前の存在です。それが神様には適応されない理由……
「…作ったから、ですか?」
「ああ。つまりは基準を作った存在だから、ステータスが適応されていない…適応出来ない」
確かにそれはそうです。
「そして、それは神の眷属にも同じ事が言える」
「え…しかしマリーナ様は」
マリーナ様にはステータスがあります。以前少しだけ見せていただいた事があるので知っています。
「それはあくまで“仮”だ」
「仮……?」
「つまりはこの世界で生きる為に割り当てられた、“凡そのステータス”という事だ」
「凡その…」
「よってあの方には、“本来の”ステータスが存在している。それこそ、この世界では表せない程の、だ」
「っ!?」
……確かに、思えば不可解な点が多いです。マリーナ様が今まで大きな魔法を使っている所はあまり見ていませんが、魔力切れになった事はありません。それに…あのステータスの魔力量で、果たして神龍という大きな役目が務まるものでしょうか…?
「つまりは、あの方は辛うじてあの身体に力を留めているに過ぎない。人の姿では無く龍の姿である方があの方にとっては随分と楽だろう」
「………」
それを聞いて、わたしのせいだ、と思いました。
マリーナ様がもしその力で苦しんでいて、もう限界だからわたしを引き離したのだとしたら…わたしは、マリーナ様ともう共には居れないのかもしれません。
…気落ちする資格など私には無いのでしょうが、つい視線が下を向いてしまいます。
「そう気落ちするな。あの方と盟約を交わしているのだろう?」
「な、何故それを…」
「魔力の繋がりを見れば分かる」
そのような事が出来るのですか…
「あの方と繋がりを持つという事は、“進化”の影響を受ける可能性があるという事だ」
「進、化…?」
聞いた事は、あります。長く生きた者は、その種族を超えた存在になる事が出来ると。それが進化と呼ばれる現象です。
「恐らくはその兆しは既にあるはずだ」
「ど、どのような?」
「例えば、そうだな……魔力が増えたり、身体能力が向上したりといった具合だな」
「魔力…身体能力…」
そういえばマリーナ様は身体能力がとてもお高かったです。その恩恵を私も受けることが出来るという事でしょうか……。
それは確かに有難い事ではあります。マリーナ様からの贈り物という認識を持つ事も出来るでしょう。けれど……そこに胡座をかく馬鹿にはなりたくありません。
「……成程。そういう事ですか」
見えてきたように思います。この無理矢理とも呼べる荒療治を、マリーナ様が私に課してきた、本当の理由を。
「何か分かったのか?」
「…私はこの場にマリーナ様によって連れてこられました。そしてそこはお父さんと同じ場所。それは偶然ではないでしょう。混じりの無い龍であるお父さんと私を同じにした意味があるはずです」
私はエルフと火龍が交わって産まれた、歪な存在です。それがもし進化する場合、どちらに引き寄せられるのかは分かりません。
ですが神龍であるマリーナ様と共にあるのならば、進化は龍に寄った方が良いでしょう。
つまり───お父さんが鍵になる可能性があります。
「進化は身近な存在に影響される、と?」
「その可能性はあるように思います」
少なくとも私はマリーナ様と共に居たことで、自分の力が変化しつつあった事を実は自覚していました。
具体的には…魔力が安定したというか、質が上がったというか…そんな気がする程度ではありますが、確かに変化はしていたのです。
「ふむ…ならば“森人の護り”より“火龍の護り”を強化すべきか?」
私が持つユニークスキルは二つあり、元々は前者である“森人の護り”を使いこなす事がこの荒療治の目的でもありました。
しかしこれはエルフの力です。龍に近付くならば“火龍の護り”を使いこなせるようになった方が良いようには思います。でも……
「……森で火は」
「無理だな」
そうなのです。“火龍の護り”は火属性の魔法を強化するものなので、森で使う訳にはいかないのです。
それにマリーナ様は私に“火龍の護り”では無く、“森人の護り”を特訓させました。それにも意味があるように思うのです。
─────────────────────
別に深い意味は無い。 byマリーナ
一時はどうなる事かと思いましたが、お父さんに会うことが出来たので助かっています。恐らくですが、マリーナ様はそれを見越して此処に私を飛ばしたのだと思います。
「魔力を無理に押し込める必要は無い。身体全体を器として考えるんだ」
「はい」
お父さんから魔力を使い方を指南して貰います。長く生きているだけあってそのやり方は洗練されていて、とても効率的だと感じました。
魔力を一箇所に留めるのではなく、身体全体を器として捉え、魔力を全体に浸透させる意識で動かす。
言葉にすればそれだけですが、実際は高い魔力制御が必要でとても難しいです。
魔力が多い存在は魔力を一箇所に集めて留める事が難しい為に、こうした方法を自ら生み出しているのだそうです。しかしそこであれ? と疑問が浮かびます。そうなるとマリーナ様は何かしているのでしょうか…?
「あの方か。わたしは一瞬見ただけだが、息をするかのように自然に魔力を身体中に巡らせていた。……いや、“そうせざるを得ないから”巡らせていた、と言うべきか」
「どういう事ですか?」
「あの方はわたし達とは一線を画す存在だからだ。そうだな……この世界にはステータスと呼ばれる物があるが、それは神には適応されていない。何故か分かるか?」
問われ、考えます。わたし達にとってステータスは当たり前の存在です。それが神様には適応されない理由……
「…作ったから、ですか?」
「ああ。つまりは基準を作った存在だから、ステータスが適応されていない…適応出来ない」
確かにそれはそうです。
「そして、それは神の眷属にも同じ事が言える」
「え…しかしマリーナ様は」
マリーナ様にはステータスがあります。以前少しだけ見せていただいた事があるので知っています。
「それはあくまで“仮”だ」
「仮……?」
「つまりはこの世界で生きる為に割り当てられた、“凡そのステータス”という事だ」
「凡その…」
「よってあの方には、“本来の”ステータスが存在している。それこそ、この世界では表せない程の、だ」
「っ!?」
……確かに、思えば不可解な点が多いです。マリーナ様が今まで大きな魔法を使っている所はあまり見ていませんが、魔力切れになった事はありません。それに…あのステータスの魔力量で、果たして神龍という大きな役目が務まるものでしょうか…?
「つまりは、あの方は辛うじてあの身体に力を留めているに過ぎない。人の姿では無く龍の姿である方があの方にとっては随分と楽だろう」
「………」
それを聞いて、わたしのせいだ、と思いました。
マリーナ様がもしその力で苦しんでいて、もう限界だからわたしを引き離したのだとしたら…わたしは、マリーナ様ともう共には居れないのかもしれません。
…気落ちする資格など私には無いのでしょうが、つい視線が下を向いてしまいます。
「そう気落ちするな。あの方と盟約を交わしているのだろう?」
「な、何故それを…」
「魔力の繋がりを見れば分かる」
そのような事が出来るのですか…
「あの方と繋がりを持つという事は、“進化”の影響を受ける可能性があるという事だ」
「進、化…?」
聞いた事は、あります。長く生きた者は、その種族を超えた存在になる事が出来ると。それが進化と呼ばれる現象です。
「恐らくはその兆しは既にあるはずだ」
「ど、どのような?」
「例えば、そうだな……魔力が増えたり、身体能力が向上したりといった具合だな」
「魔力…身体能力…」
そういえばマリーナ様は身体能力がとてもお高かったです。その恩恵を私も受けることが出来るという事でしょうか……。
それは確かに有難い事ではあります。マリーナ様からの贈り物という認識を持つ事も出来るでしょう。けれど……そこに胡座をかく馬鹿にはなりたくありません。
「……成程。そういう事ですか」
見えてきたように思います。この無理矢理とも呼べる荒療治を、マリーナ様が私に課してきた、本当の理由を。
「何か分かったのか?」
「…私はこの場にマリーナ様によって連れてこられました。そしてそこはお父さんと同じ場所。それは偶然ではないでしょう。混じりの無い龍であるお父さんと私を同じにした意味があるはずです」
私はエルフと火龍が交わって産まれた、歪な存在です。それがもし進化する場合、どちらに引き寄せられるのかは分かりません。
ですが神龍であるマリーナ様と共にあるのならば、進化は龍に寄った方が良いでしょう。
つまり───お父さんが鍵になる可能性があります。
「進化は身近な存在に影響される、と?」
「その可能性はあるように思います」
少なくとも私はマリーナ様と共に居たことで、自分の力が変化しつつあった事を実は自覚していました。
具体的には…魔力が安定したというか、質が上がったというか…そんな気がする程度ではありますが、確かに変化はしていたのです。
「ふむ…ならば“森人の護り”より“火龍の護り”を強化すべきか?」
私が持つユニークスキルは二つあり、元々は前者である“森人の護り”を使いこなす事がこの荒療治の目的でもありました。
しかしこれはエルフの力です。龍に近付くならば“火龍の護り”を使いこなせるようになった方が良いようには思います。でも……
「……森で火は」
「無理だな」
そうなのです。“火龍の護り”は火属性の魔法を強化するものなので、森で使う訳にはいかないのです。
それにマリーナ様は私に“火龍の護り”では無く、“森人の護り”を特訓させました。それにも意味があるように思うのです。
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別に深い意味は無い。 byマリーナ
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なので、何でも仰ってもらってかまいません。全ての方の思う通りには絶対書けないのが小説ですから。
貴重なご意見、ありがとうございました。書いてしまった以上変更は難しいので、今後の展開の参考とさせていただきます。
どうかこれからも、よろしくお願いいたしますm(_ _)m
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