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第1章 ポーター編
018.野外任務(1)
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「よし、ここら辺がいいかな」
西風旅団が今日来たのは、迷宮都市フェルズから歩きで3時間ほど離れた、山間の盆地にある小さな草原。
そこに流れる小川から、少し離れた場所を、野営地と決め、キャンプする。
川の近くなのは、持って来た水筒等を使い果たした、もしもの時の為と、食事の煮炊き、炊事の為。
それと、狩った獲物を解体した血抜きをし、それを洗う為だ。
少し離れるのは、川が増水して氾濫した時の、万一のことを考えての安全の為だ。
普通の場所でも、木の枝にでも獲物を吊るして、血抜きが出来るが、その血が溜まると、匂いにつられて、肉食の他の動物達が集まり、それだけでなく、魔物も寄って来てしまう。
目当ての魔物が、寄ってくるのはいいのだが、狩る予定以上に来られても意味はないし、他の予定外の魔物が、血の匂いにつられて寄って来る事もある。
連鎖的に増えてしまっては、こちらが狩る、限界以上の魔物をさばききれず、逆に、こちらが狩られる立場になってしまう事もある。
ゼンは、そういった、魔物を狩る場合の(普通の動物狩りにも共通するのだが)常識や知識、そして心構え等、かなり細かく教えられていった。
そして野営の準備だが、今は色々便利な魔具が造られ、それなりに安く売られる(あくまで冒険者的な物価として)様になっているので、それを使う。
リュウエンが四角いキューブを取り出し、
「これ、何か、分からんだろ?」
聞かれ、ゼンは当然頷く。
「これに、気を。術士なら魔力(マナ)とかだな、を込めて、下に置く。少し離れてろ」
リュウエンが、キューブを地面に置き、しばらくすると、大き目のテントが突然目の前に展開された。
ゼンが驚きで、目を丸くしている。
「物を圧縮する術式がかけられた、魔具テントなんだよ。
ゴウセルさんとこで、大き目のを安く売ってもらったやつだ。
中に入ってみな。更に驚くぜ」
そう言われて、ゼンが、入り口にたれた布をくぐって中に入ると、大き目のテントではあったのだが、中は更に大きい、いや、広い。
「これで4人、ゼン入れて5人だな。
で、入って寝ても、全然おつりが出るぐらいの広さだろ?
中に、空間拡張もかかってるんだ。1.4倍程度だったかな。
前は男女分けて、2つのテントにしてたんだが、夜は、魔物除けの魔具をつけておいても、時々その威力を無視して近寄ってくる魔物がいるからな。
突発時が多過ぎて、一緒のテントにする事にしたんだ。
その為に、大き目のにしたし、な」
「色々凄い……」
「魔具の性能が凄い、だけだがな」
他の4人も入ってきて、それぞれが荷物を置き、自分の場所を決める。
「奥の方が、女性の陣地ね。真ん中に荷物の国境線を作り、男子はこれを超えたら死を覚悟するべし!
あ、ゼンはいいわよ」
「うんうん、ゼン君こっちでもいいよ~」
アリシアは、おっとりとゼンを誘うのだが。
「オレ、男だから、リュウさん達と一緒でいいよ……」
「あれ~~。あの日は、アリシアと一緒のベットで、ぐっすり寝てたのに?」
「ゼン君、寝顔、可愛かった~~」
結局、ボス戦の後で、気絶していたゼンは、女性陣に取られてしまったのだ。
気絶から、恐らく極度の緊張で疲れていたのだろう。
そのまま起きなかったゼンは、アリシアの腕の中で、熟睡したのだった。
朝起きて、驚きの余り飛び上がって、赤い顔をしてうろたえていたゼンの顔は見ものだった。
そこに、無表情な仮面等、どこにも存在しなかった。
今もまた赤い顔をして、恨めしそうに二人を睨んでいる。
そうした色々な表情を、自分達に見せてくれるようになったのが嬉しくて、ついついからかってしまう二人なのだ。
「そこまでにしとけよ」
ラルクスは、ゼンが哀れで溜息をつく。
「まったくな。
荷物を置いたら、俺とラルクが周辺の探索をしてくる。
一応ここら辺に、一角兎(ホーンラビット)と、赤熊(レッドベア)、後、グレイウルフも出るらしい。
熊は3匹、兎は20羽以上、狼も20頭以上が、討伐定数だ。
無理する必要はないが、熊や狼は街道の方に行かれると、フェルズに来る商隊の、障害となる恐れがある。
いるだけ退治して欲しいそうだ」
「熊さん、狼さん、可哀想~~」
「なんて言える程、可愛くはないぞ。一応滞在予定は3日。
アリシアとサリサリサは、テント近くで、受けて来た任務の、薬草採取と、薬草の名前や種類、効能、分布位置なんかを、ゼンに教えてやってくれ」
赤熊(レッドベア)は、文字通り、赤い熊のなのだが、何故か頭だけが赤い。
基本的に狂暴で怪力なだけで、特殊な能力はない。
ただ、大きさが成体で3メートルは軽く超え、大きくなるものでは、5メートル以上にもなる。
普通の狩人が、手を出していい獲物ではない。
一角兎(ホーンラビット)は、小さなスライムと並んで有名な、雑魚魔物だが、油断すると、その角で果敢に攻撃してくる。
冒険者は、この一角兎(ホーンラビット)か小スライム、小鬼(ゴブリン)のどれかを、最初に倒すのが定番だと言われている。
グレイウルフの説明は、略そう。
ダンジョンで出た物の劣化版なので。(本来は、ダンジョン産が強化版というべき)
それからのひと時は、ゼンにとって今までで一番輝いた、楽しい時間となった。
実質は魔物退治なのだが、戦力的に、西風旅団に余裕がある為に、まるで泊りがけのキャンプ遊び、+ピクニックのような内容になっているのだ。
薬草採取は山菜取り、魔物退治は虫取り、等に当てはめると分かりやすいだろうか。
サリサリサとアリシアの二人は、薬草を取り、その名前、何に効くか、何処にどう生えるか等を、ゼンに説明しながら集める。
薬草は各種あり、メモ無しでは覚えきれないのでは、と危惧していたが、それはまったくの杞憂だった。
ゼンは一度教えた薬草の事は、こちらの説明の全てを、暗記でも出来るかのようにどんどん覚え、その生育位置を理解すると、瞬く間に、は大袈裟だが、採取任務の規定量まで、かなりの早さで採取してきてしまった。
受けて来た採取任務の薬草は、6種もあったのだが、その説明を聞き、全てを集めるのに、2時間もかからなかった。
採取困難で、余り豊富に生える物ではないのも、2種程あったのにも関わらずに、だ。
薬草集めの天才?と驚くアリシア達に、薬草が、結構独特の匂いがするから、その生えている近くまで行けば、匂いがして分かるのだと言う。
ゼンは勘だけでなく、五感も鋭いのだと、改めて知るのだった。
薬草が集め終わったので、リュウエン達と合流し、一角兎(ホーンラビット)討伐の手伝いをした。
熊は、林や森の奥の方にいるのか、まだ確認していないと、リュウエンは言う。
狼は、ここから少し移動した場所に群れがいる筈。(兎と生息位置がずれているので)
一角兎(ホーンラビット)は、そんなにまだそれ程見つかっておらず、リュウエンとラルクスが、2羽ずつしとめていた。
4人で周辺を捜索し、程なくして、2羽の一角兎(ホーンラビット)を見つけた。
アリシア達は目くばせで、その1羽を、ゼンの方に追い込むように動き、兎はまんまと、その誘導にのって動いてくれた。
ゼンは、ゴウセルに借りている短剣を構え、一角兎(ホーンラビット)が突進で攻撃してくるのを、鮮やかにかわし、短剣で見事、その兎の首元を斬りつけ、仕留めたのだ。
その時、確かにゼンは、やった!、と喜びの声をあげ、笑っていた。
口元を歪めたような、不器用な笑い方だったが、それは確かに、ゼンが彼等に最初に見せた笑みだった。
やった!おめでとう!と祝う仲間達の声は、一体どちらにめでたさを感じての事だったのだろうか。
少年の不器用な、最初の笑みへか、それとも初めて自分一人で狩った立派な魔物の事へ、だったのか。
(かの大蝙蝠(ジャイアントバット)の話は、この際無視するとして)
兎狩りは、計14羽と、初日としては、まずまずの成果を上げたので、テントに戻って遅めの昼とする。
川岸まで行って、兎のさばき方、どこに魔石があるか、毛皮はどう剥ぐか、等をラルクスが、見本を見せながら教えていく。
女性陣は、血を見るのが嫌なので不参加だ。
何羽か、微妙な失敗をした後は、覚えの良いゼンは、これまたすぐにコツを覚え、残った8羽は、彼が全部引き受けてさばいて見せた。
なんとも見事な解体、魔石取り、毛皮剥ぎで、教えたラルクスが脱帽もの器用さだった。
スラムで狩っていた、小動物の経験も役に立ったのだろう。
兎の血抜きは、川で洗い流せばすぐ済むので、その獲物を持って戻って、串に刺して焚火で焼く。
ゼンの食べる分は、当然彼が最初にしとめた獲物で、簡単な塩コショウで味付けをしてパンにはさみ、串を抜いて食べる。
味付けも獲物自体も、大したものではないが、彼には特別美味しい昼食になっただろう。
こういうのもまた、一生ものの思い出になるのかもしれない。
ゼンの余りにも嬉しそうな様子を、微笑ましく眺めながら、そんな事を思ってしまう、旅団メンバーだった。
昼休憩をしながら、覚えの良いゼンに、サリサリサが一応魔術が使えないか、試してみないか?とゼンを誘い、やってみたのだが、呪文自体は覚えられても、残念ながら流石に術は発動しんかった。
今までゼンの、半ば万能に近い運動能力や、物覚えの良さを見ていた旅団メンバーは、むしろ少年に、出来なかった事がある事を確認出来て、多少の安堵を覚えてしまうのだった。
お茶を飲み、腹がこなれた後は、リュウエンがゼンに、剣の初訓練だ。
リュウエンは、持ってきた練習用の木剣をゼンにプレゼントした。
実はそれは、彼が冒険者になる前から、ずっと練習に使ってきた相棒とも呼ぶべき物なのだが、必要もないのにフェルズについ持ってきてしまっていた。
なので、調度いい機会、と言ってしまうのも変なのだが、これから剣士を志すゼンに、それで練習して剣士になったリュウエンは、縁起のいい物、と思ってゼンにあげることにしたのだ。
それを、余りにもゼンが瞳を輝かせて喜ぶので、そもそも粗末な手作りの、剣の形になっているだけの安物だ。
リュウエンは、逆に悪い事をしたような気になって、フェルズでもっといい物を買って、取り換えようかと言い出すのだが、ゼンはこれがいい、と断固返そうとしなかった。
結局、贈った者としては、そこまで喜んでもらうのは満更でもなく、その木剣は、晴れてゼンの物となるのであった。
そして始まった訓練。
リュウエンは、鞘に納めたままの短剣で、剣の振りや足の位置、力の籠め方等の見本を見せ、初心者向けな一通りの事を教え、ゼンに木剣を振らせてみる。
そして、その振りの何処が悪いか、姿勢、足の踏ん張り方、剣の握り、色々細かく注意し、ある程度さまになった所で、ゼンに、自分に斬りかかるよう催促する。
模擬戦、ではない。まだまだ、その領域には至っていない。
斬りかかってくるゼンの木剣を、鞘に納めたままの短剣でリュウエンは受ける。
そしてまた注意をしてから、その注意を意識させて、斬りかかってもらう、それを受け、注意して、もう一度。
その繰り返しを、何度もやる。
二人とも熱中していたので、いつのまにか、結構な時間が経っていた。
知らないうちに、サリサリサとラルクスは、周囲の探索と兎狩りの続きに行っていた。
横では、石に布をしき、そこに座っていたアリシアが、ニマニマと二人を見ながら微笑んでいた。
「リュウ君も昔、そんな風に先生と、熱心に練習してたよね」
そしてその横には、同じように微笑んで見物している、幼いアリシアの姿があった。
「お、俺達も、狩りに行こうぜ。
兎はラルク達に任せて、狼の方を。
恐らく、川下の方にいると思う。
今まで兎を狩っていても狼達は、1匹も見かけていない。
つまりは、ここが風下になっているって事だ。風は、川下の方から吹いているようだ」
リュウエンは装備を整え直し、出発する。
「リュウ君、あったまいい~~」
「いや、臭いを嗅ぐ力の強い、犬系の魔獣の対処として当たり前なんだがな……」
テレ臭さを隠しつつ、リュウエンは達は進む。
「……オレ、席を外す、じゃなくて、ラルク達の方、行こうか?」
ゼンが、少し気まずそうに言う。
「へ?なんで?」
「いや、二人っきりの方が、いいのかな、って……」
「や~~ん。ゼン君ってば、気をまわし過ぎ~」
「いやいや、今、そう言う事言ってるような、場合じゃないから!
ただでさえ減ってる戦力を、減らしてどうするんだよ!」
「あ。そっか。そういう面もみないと、いけないんだ。成程……」
しばらく行くと、狼達の一群が、草原でくつろいでいるのが見えて来た。
「調度ドンピシャだな。見えるか?」
「狼さん、5匹ぐらい?」
「や、伏せてて見えないだけ、で、8匹ぐらい。
見張りとかに出てるのも、いそうだから、10匹ぐらいの群れ、かも。
中央にいる大きいのがボスっぽい、ね」
ゼンが、群れの様子を鋭く、細かく見て考察する。
「サリサの魔術はない。アリア、俺達に補助を」
「オレも?」
「ラルクスの代わりで、援護してくれ。
迷宮の狼程、強くはないから、ゼンなら大丈夫だ」
「……うん、わかった」
ゼンの顔に、緊張が見えるが大丈夫だ。
実際、迷宮(ダンジョン)にでた、Dグレイウルフより数段弱い。
普通の狼よりは強いが……。
「よし、いくぞ。うぉぉ~~~~」
リュウエンが、わざと大声を上げながら、狼の群れに飛び込む。
匂いの嗅げない風下からの奇襲だ。
グレイウルフは混乱し、右往左往している。
バスターソードを振り回し、なるべくたくさんの狼を巻き込むように攻撃する。
群れのボスが吠えて、何か指示を出す。
何匹かが、リュウエンの後ろにまわりこむ。
包囲するつもりのようだ。
「余り意味がないんだが、な!」
迷宮(ダンジョン)の狼に比べて、まるで手応えがない。
周りこもうとしていた数匹が、ゼンの短剣に続けて倒された。
(弱いんじゃなく、俺達が強くなったんだ)
逆にゼンの方が、ボスの後ろにまわり、逃げ道を塞いでいた。
「最初に、すぐ逃げを選ばなかった時点で、おまえは悪いボスなんだよ!」
リュウエンの攻撃が、ついにボスをとらえ、ほとんどのグレイウルフが屍をさらした。
こちらの人数が少ないので、数匹は逃げただろうか。
「私、2匹~~」
アリシアも戦棍(メイス)で攻、撃にちゃっかり参加していた。
見張りに出ていて、戻った狼に出くわした様だ。
脅威度の高い敵ではなかったので、対応したアリシアを褒めるべきだろう。
「G級からF級になったぐらいだ。
強くなって、当たり前なんだな……」
今更ながら、自分達の実力が上がっている事に気づいた、リュウエンなのであった。
「8、9、と、9匹倒せたね。1匹逃げたぐらい?」
3人で奇襲した割に、上々の戦果だ。
とりあえず一度、ゼンのポーチで川まで運んでもらって、それから解体、血抜きだ。
「狼って、食べれるの?」
ゼンが、不思議そうに聞く。
普通肉食の獣は、余り旨くないので食べないが、魔物は別だ。
「体内の魔力が、肉を旨くする、とかなんとか。
魔石を間違って飲んでしまうと、大抵が腹痛おこして、体調崩す破目になるんだが……」
「……知ってる。前に、魔鼠を、魔石ごと食べて……」
「え!あいつ毒あるだろ?平気だったのか?」
「……うん。治してくれた人、いて……」
ゼンの様子が、突然に変になった。
明らかに、恐ろしく暗い表情。いつも以上に、だ。
「その、治してくれた人が、どうかしたのか?」
「……答えたく、ない」
うつむく顔からは、何の感情も伺えなかった。
「……そういう事もあるか。仕方ないな。とにかく戻ろう」
帰り道もほぼ無言。
色々アリシアが話しかけているが、駄目なようだ。
キャンプ地に着くと、サリサリサとラルクスが、笑顔で迎えてくれた。
「兎、12羽確保。血抜きとかも(ラルクが)済ませてあるわよ。兎はノルマ達成ね」
「こっちは、グレイウルフが8匹。血抜きとかはこれからだな」
「まあ、それはいいとして、どうかしたの?」
サリサリサが、小声で、ゼンに聞こえない様問いかける。
「多分、ゼンの暗い過去、思い出させたようだ……」
「あちゃぁ……。ほっとくしかない?」
「多分。アリアでも無理みたいだからな……」
あえて大声で、ゼンに頼み事をする。
「ゼン、ラルクに、グレイウルフの解体、習ってくれ。
兎とはかなり違うぞ」
「……うん」
こういう時は、身体を動かしている方がいい。
ラルクスに連れられて、川へと向かうゼンを、複雑な表情で見送る三人。
「せっかく、こっち来てから、いい表情見せてくれてたんだがな……」
「仕方ないでしょ。
ゴウセルさんから聞いてたけど、あの子の過去って多分普通のスラムの子に比べても、相当過酷なものらしいし。
別に、過去、ほじくり返すような事言った訳じゃないんでしょ?」
サリサリサは、リュウエンの顔を下からジト目でうかがう。
「もちろん!そんな事するかよ!」
「……あのね。リュウ君は、魔物の魔石を間違って食べると、腹痛になって、調子を崩すって話してたの。
そしたらゼン君、魔鼠の肉でそうなった事あるって言って、あれって毒があるから、平気だったのか?って聞いたら、それを治してくれた人がいる、って……」
「あぁ、うん、分かった。その治してくれた人に、何かあったんだ……」
「多分。その人の事聞いても、話したくないって言ってたから……」
そう言うと、アリシアの方が、ボロボロと大粒の涙を流し始めた。
「やだ、シア。あんたまで泣かないの。気持ちは分かるけど……」
サリサリサは親友を抱きしめて、その頭を優しく撫でてあやす。
「だって……私って苦労知らずで……世間知らずで、皆に守ってばっかりだったけど、あの子はそういう人いないで、一人であんなに立派に生きてるけど、すごいすごい苦労してきて、いろんな悲しみも背負っていて、涙、止まらないよ……」
リュウエンは、ただその場をオロオロ動き回っている。
「うん。それでもね、あの子はゴウセルさんに会って、で、私達に出会った。それは、悲しい事じゃないでしょ?」
アリシアは、涙ながらにコクリと頷く。
「あの子の悲しい事、苦しい過去が、それで帳消しになる訳じゃないけれど、決してなくなりはしないけれど……。
でも、私達がこれから、そんなの忘れるぐらい、吹き飛ばすぐらい、幸せにしてあげればいいのよ!
シア、あなたはあの子の、お姉さん役をしていくつもりなんでしょ!なら!メソメソ泣いていないで、ただあの子を、温かく見守って、微笑んでいればいいの!」
「……そんなので、いいのかなぁ~」
「そんなのが大事なの!私には出来ない。リュウ達にだって出来ない、大切な役割よ」
「……うん、分かった。頑張ってみる!」
「ん。なら涙拭いて、表面だけでも、明るく振る舞いなさいな」
わかった~、とアリシアはテントの中にトテトテ入って行った。
中で涙を拭き、身支度を整えるのだろう。
「……すまんな、サリサ」
「……なんであんたに謝られるのよ。これも、大事な親友の役割なんだからね」
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オマケ
リ「迷宮の外、久しぶりだな」
ラ「日光がまぶしい、きつい……」
サ「吸血鬼か!」
ア「ピクニックみたいだねぇ~」
ゼ「……」(ワクワク)
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