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第1章 ポーター編
020.野外任務(3)赤熊討伐
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夜が明け、朝になる。
冒険者の活動時間は、限られているが故に、農民と同じ様に、朝日が昇って明るくなれば、即活動時間だ。
「……私、低血圧だから、朝はきついのよね……」
「むにゃむにゃ、サリーそれ、私のブラシ~」
時に、例外もある……。
女性陣は早朝が弱いので、なにか違う、軟体動物のようにホニャホニャ?している。
「ミシアの葉でも噛め。少しはスッキリするぞ」
そう言ってリュウエンは、一足先にテントを出た。ゼンも一緒だ。
見張り役のラルクスは、外でそのまま朝食の支度をしている。
ハーブの一種であるミシアには、覚醒効果があり、味もスーっと喉にしみるような、独特の味がする為、それを加工した食品等もあるのだが、冒険者は効果が大きいので、生のミシアの葉を、直接噛む者が多い。
「でも、私、この独特の味苦手で……」
「むにゃむにゃ、美味しくないよね~」
「テントは流石に、ベッドと同じ寝心地というわけにいかないせいか、どうも女性陣の寝起きが悪いな。
そんな様子じゃ、ゼンに笑われるぞ~」
朝食の用意をすでに済ませたラルクスが、中々テントから出てこない女性陣の様子見に中を覗いて、笑ってからかうと、間一髪で身を伏せたその上を、火の玉が唸りを上げて通り過ぎていった。
「これから身支度整えるから、覗くな、スケベ!」
「いやいや、お前!なんでもすぐ魔術ぶっぱなすなよ!冗談になってないから!」
「勿論、冗談じゃないわ。
大丈夫よ。それ位、シアが速攻で治癒してくれるから」
サリサリサは、寝起きで機嫌が悪く、ジト目が怖い。
治すぞ、おー、と杖を振り回してるアリシアは、まだ寝ぼけている。
「治るから、それでいいってもんじゃないだろうが。
火傷は痛いんだぞ……」
諦めてスゴスゴとテントを出る、ラルクスの背中の哀愁が悲しい……。
「しかも人が用意した朝食、遠慮なくパクパク食うとか、どういう神経してるんだか……」
適当に、昨夜の残り物を焼き直して、軽く味付けをして、パンに挟んだ簡単な物だ。
「ご苦労様、いつもありがとう(棒)」
ニッコリ笑って、棒読みセリフ。
「ありがとうだね~」
やっと覚醒したアリシアは、状況を少しも理解していない。
余りにも和やかというか、何処か殺伐とした物もあるのだが、それはこの際無視するとして、リュウエンは昨夜の、悪夢の様な出来事と、この朝の光景のギャップが凄まじくて、目まいがしてくるようだ。
「……リュウさん、なんか顔色悪いけど、どうかした?」
気遣い上手のゼンに心、配をかけてしまう。
付き合いの長く、親しい間柄の幼馴染達は、何も気づいていないと言うのに。
「いや、俺も少し寝起きが悪いだけだよ」
とりあえず、昨夜の事は、仲間達には知らせない事にした。
無駄に不安を煽っても仕方がない。
知らせるとしても、フェルズに戻って、状況が安定してからでいいだろう。
「じゃあ今日は、まず森の探索と、昨夜の狼の解体に分かれる訳だが……」
「ああ、そいつは俺が引き受けるよ。
女性陣と、ゼン引き連れて行ってくれ」
「ゼンは残した方が、いいんじゃないか?結構、量があるぞ」
「分かってる。しかし、ゼンには色々な経験をさせた方がいいだろ?
もう解体の指導は、昨日ので充分だろうし。
他の種の魔物の解体が、ある訳じゃない。俺が残るのがベストさ」
「しかし一人で残って、何かあった時は、どう対処する?」
ラルクスは、3色の石がはまった腕輪二つを、取り出して説明した。
「そいつなら、これの出番だな、通信魔具だ。
と言っても、通話が出来る奴じゃない。
あれは結構な値段がするからな。
3色の石がついてるこれの信号で、符丁を決めて、状況を知らせるんだ。
双方向で、どちらからでも連絡出来る。色は、赤、黄、青だ。
勇者のいる異世界の、何か代表的な色らしい。
で、赤は、緊急事態発生、至急応援求む、て感じか。
黄は、何か起きたが、応援を呼ぶほどの事態ではない。
青は、異常無し。本日は晴天なり、て感じかな」
二つの内の一つを、リュウエンに渡し、実際にちゃんと動作するかの確認をする。
ラルクスが、軽く気を指先に集め、腕輪の赤い石に触れる。
すると、リュウエンの持っている方の腕輪の赤い石が、赤く輝いた。
「へぇ、成程な……」
リュウエンも、自分の持つ腕輪の青い石に、軽く気を流す感じで触れると、ラルクスの持った方の、腕輪の青い石が光るのだった。
「実験成功、と」
「なるほど、通話出来なくても、大雑把な状況をお互いに知らせ合える訳だな。これは別行動する時、確かに便利だな」
「そうそう。何かあったら、それで連絡しよう。どうせ、昼には戻ってくるだろう。始終連絡しなくていいぜ。
そっちのが人数多いんだ。マズイ事が起きるとしたら、こっちだろうから」
軽く危ない事を言っている。
ラルクスなら、大抵の事は心配いらないだろう。
リュウエンは、そう判断する。
「そうだ、リュウ、森の中だと、バスターソードは余程広いところじゃないと使いにくいぞ。
刺すぐらいか、縦に斬るぐらいにしか使えん。予備の剣の方だしておいて、それで無理なら、広い場所まで敵を誘導しろよ」
「分かった。そうする」
有り難い助言だ。
「サリサ、素材がどうの、でなく、火炎系使うなよ。
周り中の木に燃え移って燃え広がって、自分達まで逃げられなくなった挙句、この辺りの森林全部焼失とか、お前の術の威力だと、充分あり得る事なんだからなー」
「……なに、あんた。旅団のお母さんかなんかなの?
出かける前に、偉そうに注意なんかしてくれちゃって……」
こちらは、有り難くない助言、と言うか、一言多過ぎたようだ。
サリサリサの周囲に、大小さまざまな氷の槍が現れ、目標めがけて今にも発射されそうだ。
「ゼン、昨夜のグレイウルフ、川の近くに全部出してくれ……」
ラルクスは、ゼンの腕を引っ張って、サリサリサ方面の盾にして隠れ、ゼンと話している。
とても賢く、卑怯な選択だ。
「あ、うん。分かった、行こう……」
ともかくゼンの隣りで、その陰から出ないようにしつつ、小川に移動だ。
ゼンがグレイウルフの死体を、全て山積みにしたのを見て、格好よく引き受けてしまったが、これは一人では終わらん、ゼンが帰ってきたら、手伝ってもらおう。
と、ラルクスは格好悪く思っていた。
ゼンが、リュウエン達の所に戻って来たところで、改めて、赤熊(レッドベア)探索に出発だ。
いきなりの遭遇戦は、ないと思われるが、先頭はリュウエン、サリサリサ、アリシア、しんがりがゼンである。
木の密集した暗い森では、1列で移動せざるを得なかった。
しばらく、獣の気配や足跡、縄張りを主張する爪痕等を探したが、中々見つからず、奥へ奥へと進んだ。
そして一行は、余り鳥の鳴き声も聞こえぬ静かな森の奥で、かすかに水の音、水が落ちる音ががするのに気づいた。
どこかに滝でもあるのだろうか、とその音を頼りに進むと、一気に森を抜け、開けた場所に出る。
高台から、少量の水が、滝となって流れ落ちて、泉のような場所を形成している。
その水は、リュウエン達が来た方向とは、別の方に流れる小川となって、森に流れている。
あの小川の源泉がここだったのか、単に支流で、合流しているのかまでは分からなかったが。
そこに、4頭の赤熊(レッドベア)が水辺の浅瀬に立ち、水を飲み、小川にいる魚を、爪ですくい取ったりしていた。
1匹が5メートル級、残り3頭も軽く4メートルを超える大物ぞろいだった。
群れなのか、親子なのかは分からないが、集団行動をしているようだ。
いきなり目当てが、まとめていると思わなかった旅団側と、敵の接近に滝の音で気づかないでいた、赤熊(レッドベア)側の出遅れは互角だった。
だが、狩りをするつもりで来た旅団側の方が、まだ心構えがあった分、行動を先んじたのは旅団側であった。
「アリア、俺に補助!サリサ、あいつらの足元の水を凍らせて、動きを封じてくれ!ゼンは待機だ。大物過ぎて危ない!」
リュウエンが、すぐに赤熊(レッドベア)の一番大きな、集団のボスと思われる個体に向かう。
「……『氷結乱舞(フリージングダンス)』!」
その時、小川は凍り、泉も凍り、その小さな滝さえもが凍り付いた。
まるで、時間が止まったかのような、美しい光景であった。
中位の魔術呪文であったが為に、呪文詠唱、魔術形成の間が長く、4頭の内2頭が、水から出て、リュウエンを迎え討つ態勢になっていた。
大型のボスも、その内の1頭だった。
リュウエンには、ここが開けた場所だったので、本来の武器が使える、絶好の狩り場であった。
闘気で身体強化をし、先頃覚えたばかりの大技スキルを使った。
「『大・切・斬』!」
リュウエンのバスターソードが、一瞬青く輝き、彼の放った斬撃は袈裟懸けに吸い込まれるように、5メートル級のボス大熊を襲い、大熊は斜めに、完全に綺麗に切断された!
「は?」
放った本人が、一瞬、呆(ほう)ける程の一撃だったが、敵は1頭のみではない。
Goaaaaaa!
横合いから残った赤熊(レッドベア)が、リュウエンの動きが止まった隙に、頭めがけて爪をふるう、その瞬間、ゼンが投げた拳大の石が、赤熊(レッドベア)の鼻面を直撃した!
「す、すまん」
謝りながら、自分の鼻を押さえ、苦痛に鳴く赤熊(レッドベア)のがら空きな腹に、バスターソードが水平に斬り込まれる。
一瞬後に、切り口から内臓が飛び出る、残酷(グロ)な光景。
今度はその腹を押さえる、赤熊(レッドベア)の首筋に斬撃を浴びせ、とどめを刺し、苦痛から解放してやった。
足元が凍り、動きを完全に封じられていた、二頭の赤熊(レッドベア)は、サリサリサが風の斬撃呪文で、頭を斬り飛ばした。
リュウエンの間抜けな一場面がなければ、西風旅団の完全勝利だった。
彼は、何度ゼンに命を救われるのだろうか……。
※
「なんだ、せっかくの通信魔具も使わず、もう戻ってきたのか。
忘れ物かなんかか?こっちは解体、全然はかどってないぞ」
彼等が森に入ってから、まだ小一時間強、と言ったところだ。
ラルクスがそう思うのも、無理はない。
「解体4頭追加だ。俺もやる。
ゼンには、赤熊(レッドベア)の解体を教えよう」
ゼンは頷き、グレイウルフの死体の山の横に、赤熊(レッドベア)の死体を、追加して置く。
ラルクスは、目を丸くして驚いている。
まさかこの短時間で、狩りを済ませて戻って来るとは、流石に思わなかったのだ。
「おいおい、どうしたんだ、この順調過ぎる成果は。
ゼンはもしかして俺らにとって幸運の女神、いや、女の子じゃないんだ、男神?少年神、とか言うべきか?」
「……そうかもしれんな。
森の奥に、滝と、泉のような場所があってな。
水飲みとかしている赤熊(レッドベア)4頭と鉢合わせた。
半数は凍らせて、動きを止めてからサリサが。
もう半分は俺が、覚えたてのスキル技使って1頭、もう1頭も、まあ一応俺が……」
「おお、そいつは凄い。後でそのスキル見せてくれよ。
赤熊(レッドベア)を仕留める技なんだ。さぞ、威力があったんだろうな?」
そこで、たまらずサリサリサが吹き出した、
「それが、聞いてよ。
確かに、一番でっかい赤熊(レッドベア)のボスっぽいのを、そのスキルで、一撃で肩から脇腹まで、完全に切断したのよ」
「へえ。赤熊(レッドベア)は毛皮には、結構な物理耐性あった筈だが、成程このデカイ奴か。
見事、斜めに輪切り状態だな。凄い威力だ」
ラルクスは、一番大きな赤熊(レッドベア)の死体を検分する。
「面白いのは、ここからなのよ。ププッ」
「多分、初めて使ったの?あっさり大物を両断出来て、リュウったら、は?とか言って、驚いて、完全無防備になっちゃったのよ!
そこを残りの1頭が、攻撃してこようとして……」
サリサリサは、笑いがこらえ切れず、またプーっと吹き出してしまう。
「ゼンが大きな石投げて、九死に一生を得たのよ!
オークキングに続いて、またゼンに助けられちゃって……ぷぷっ」
「サリー、そんなに笑っちゃ、リュウ君が可哀想だよ~」
「だって、カッコつけて、「大物過ぎて危険だから、ゼンは待機だ!」とか言った、その後すぐの話なのよ。
私は、台本ありの喜劇かと思ったくらい……」
サリサリサは、余程ウケたのだろう。
その場でしゃがみ込んで、息をするのも苦しげなくらいに、笑っている。彼女には少し、笑い上戸の気があった。
リュウエンは憮然としているが、嘘偽りのない、全くの事実だ。
反論の余地すらない。
「はあ、そりゃまあなんとも……」
どうにも、慰めようのない状況だったようだ。
まあ、結果的には何の被害も出さずに、討伐任務を完了出来たのだ。
それで良し、とするしかないと思うのだが。
※
獲物の解体は、昼になってもまだ終わらず、目を離すと危ないので、昼食は川岸で取る事にした。
昼から熊肉は重いので、川で魚でも、と思ったのだが、あいにく釣りの道具を、持ち合わせていなかった。
ゼンに、釣りを教えようかと思った旅団メンバーは、残念がったが仕方がない。それは、次の機会にすればいいだろう。
魚は、サリサリサが魔術で水を操作し、魚を周囲の水ごと捕獲、魚入りの水の立方体が、フヨフヨ浮いて陸地まで移動、術を解除すると、地面に魚が落ちる。
なんともシュールな光景だ。
これを適当に繰り返し、昼食分の魚を確保した。
これにゼンが感動して、瞳をを輝かせて、凄い凄いと目連呼するものだから、サリサリサはすっかり調子に乗って、
「いやいや、少年、この程度の魔術で感動するな、小生テレるではないか、はっはっは」
と、変な口調になっている。
隣では、何故かアリシアが頬を膨らませ、「私だって、色々治せるもん。リュウ君、ちょっと大怪我してみて?」とか、無茶ぶりしていた……。
焼いた川魚で、昼食を済ませた後は、解体の続きだ。
赤熊(レッドベア)がどれも大物で、毛皮を剥ぐのに苦労したり、グレイウルフの物量に、時間がかかったりしたものの、どうにか全ての処理が終わったのは、午後の中途半端な時間だった。
川での血抜きは、肉がすぐに悪くならない様に、冷やす意味もあるのだが、売るのもなるべく早めがいい。
今から帰れば、ギリギリ、フェルズの門の閉門時間に間に合う。
夜は魔物の活動時間であり、基本、都市の門は通行出来る時間が決まっていて、夜、閉門されたら、余程の緊急な要件でもない限り、入れてもらえないのが、辺境の都市の掟だ。
人型で知能の高い(人種(ひとしゅ)とは違う)魔物が、人に化けて、都市内に入ろうとする事例も多々ある。
そうした事態を避ける為の、厳格ま決まりだった。
だが、今回の野外任務は、元々3日を想定していた。
今から行って、ギリギリ門前払いをくらったりしたら、街道横でキャンプと間抜けな事になる。
なので、予定通り今日はここで泊り、明日朝に、フェルズに戻る事とした。
つまり、残りは自由時間だ。
ここでリュウエンは、ゼンに昨日の剣の稽古の続きをする。
各自自由なので、ラルクスは各種武器魔具の点検整備。
サリサリサは、そこいらの岩めがけて魔術実験。(環境破壊はするなよ、と声をかけたラルクスは……以下略)
アリシアは今日も、二人の訓練風景を、嬉しそうに横で見学。
リュウエンは、ゼンが一人の時でも訓練が出来るように、一通りの素振りの仕方を教えた。
素振りは、剣の基礎中の基礎。
戦闘経験にはならないが、腕力、上体の筋肉を鍛えられるし、自分がどのような動きで、どこまで出来るか、等の限界を覚える事も出来る。
構え、振る、突く、横なぎに払う、斜めに斬る。
上段、中断、下段。
それぞれの動きでおかしい所がないか、リュウエンが横から前から後ろからチェックし、何かあれば注意し、それを直し、そして続ける。
やはりゼンは、飲み込みが早い。
そして、恐ろしいばかりの集中力だ。
自分にはこの一度限りの、一生に一度の機会である、とでも言わんばかりの真剣さで、全身全霊を込めて、稽古に打ち込んでいる。
だからこそか、横で今見ている瞬間にも、みるみる動きが良くなり、上達しているのが分かる。
教えれば教えただけ吸収し、間違いを指摘すれば、打てば響くがごとく、修正された動きが返ってくる。
ついこちらも熱中して、基礎を飛び越え、高度な技まで教えそうになっていた。
無駄に急ぐ事はない。
今は基礎を繰り返し、素振りをして力をつけ、腕力、体力、持久力を得るのだ。
昨夜ラルクスとも話した通りに、目下の課題は体力づくり、身体つくりだ。
基本となる身体が出来ていなければ、ゼンの攻めは、軽い攻撃となってしまう。
それに、長く戦い続けられないし、高度な技を覚えられたとしても、いつかどこかで破綻して、身体を壊す事になりかねない。
ここで例に出すのは心苦しいが、サリサリサが、いい例となってしまう。
彼女は恐らく、十年、いや百年に一人の天才なのだろう。
それは、卒業するまで5年かかる魔術学校を、たったの2年で卒業した事からも分かる。
彼女は全ての属性魔術に精通し、下位から中位、上位、そして恐らく最上位の魔術までも扱える、驚異の天才(ラルクス曰く天災)魔術師だ。
だが、悲しいかな、彼女の魔力容量は、普通の、その年の少女としての、一般的な魔力容量を超える物ではない。
だから、彼女は最上位の魔術が使えても、それ一発で魔力容量を使い切り、卒倒してしまうだろう。
上位も1発が限度。2発目は撃てない。
だから、彼女は通常戦闘では、下位や中位の魔術をやりくりして、戦闘をしているのだ。
そして彼女は今、その魔力容量を増やそうと、悪戦苦闘している。
ラルクスにふざけて、攻撃魔術を使ったりしているのも、その一環なのだろう。多分……。そうであるといいなぁ……。
ゼンの鍛錬は、日が落ちるまで休みなく続いた。(リウュエンも、夢中になって休憩入れ忘れた)
夕食は熊鍋だ。
ゼンは、野菜や肉のアクを取る、という料理の技法を知らず、昨夜は煮た物を捨てるなんて、そんな勿体ない!、と騒いでいたが、今日は、もうその事を覚えているので、騒ぐ事はない。
捨てたアクを、未練たらしく見つめていたが。
熊は普通クセのある肉なのだが、魔獣の熊ともなると、そこは緩和されるのか、普通に美味しく食べられた。
他愛のない話で盛り上がりながら仲間達と鍋をつつく。平和で緩やかな時間。
リュウエンは、昨夜の悪夢の様な存在を、思い出さないでもないのだが、あれが、弱者と見下した者の所に、再び現れるとは考えられない。
今は忘れよう。
今夜は、昨夜とは逆の順番で、見張りをする事になった。
ゼンも見張りに参加したい、と申し出てくれたが、昨日今日と続けた鍛錬のせいで、腕に筋肉痛が来ている様子だった。
なので、今夜はゆっくり休んでもらう事にした。
筋肉痛は限界まで鍛錬している、証拠のような物だ。
これを続けていけば、いずれ痛まないようになり、彼に足りなかった力がつくようになるのだ。
そうして、2泊3日となった、ゼンにとっては初めての野外任務は終わり、翌朝、西風旅団一行はフェルズへの帰途についた。
*******
オマケ
リ「終わった。初スキル技披露!なのに扱いがひどい……」
ラ「まあまあ。俺の方が、ある意味ひどいと思うんだがね……」
サ「今日も好調、魔術が冴える!」
ア「楽しかったね~。私は迷宮より外の方が好きかも~」
ゼ「うん、楽しかった……。こんな日が、ずっと続けば、いいのに……」
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