剣と恋と乙女の螺旋模様 ~持たざる者の成り上がり~

千里志朗

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第1章 ポーター編

028.選択肢

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 ※


「なんとも、閉まらん結果になったな……」

 人に説教しておいて、無様に負けるとは、笑い話にもならん……。

 油断もあった。奢りもあった。慢心していた。傲慢でもあったのだろう。

 格下に負ける要素、てんこ盛りだ。

 ラザンは、闘技場の治療室から隠形を使って、誰にも気づかれずに、外へ抜け出した。

「綺麗に治してくれたのは有り難いが、一日安静とか、悪いが寝てる気分じゃないんでね……」

 腰に差し、鞘に収まった、折れたカタナの事思うと、憂鬱になる。

「やるんなら、もっとうまくやってくれよ、まったく……」

 最初から騒いでいる大男と、これから騒ぎ出すであろう、忠犬の事を思うと、激しく頭が痛くなってくる。

 試合前に武器の確認(チェック)を怠(おこた)った、自分の迂闊さも呪いたくなる。

(そろそろ潮時かね。一つ所に留まり過ぎたのだろう)

 水は流れる物。

 一つ所に留(とど)まれば、水は澱む。

 黒く濁って腐るが運命(さだめ)か。)

「俺もいい加減、焼きが回ったな……」

 フェルズの街並みを、昔を思い出しながら、無目的にうろつく。

 ふと足が向いたのは、この街に着いた頃に見つけた、物騒な場所だ。

 屋敷に縛られた怪異のお陰で、絶好の鍛錬場であり、居場所のなかった自分が当時、唯一心落ち着ける場所だった。

「まあ、なんだかんだで、慣れていっちまったんだが……」

 うろ覚えだったが、目的の場所につけた。

「おー、前より年月進んだ分痛んで、いい風格になったな……」

 ラザンは、軽く跳躍して壁の上に上がる。

 すると、まるで昔の自分を見たのかと、つい、自分の正気を疑ってしまっう光景があったが、何のことはない。

 完全に別人(当然)だ。

 どこかの子供が入り込んで、昔の自分の様に、素振りをしているだけだった。

 しかし、よく見るとそれは、ただの素振りではなかった。

(あれは、もしかして、今日の俺の試合の動きを、真似してるのか?)

 つまりは、今日の観戦客の一人だったのだろう。

「しかし、十歳にも満たない小僧(ガキ)が、俺の真似するたぁ、目の付け所が違うな。感心、感心」

 などと、ご機嫌になりながらよく見てみると、その子供の、更にとんでもない所が分かった。

「ただ振りだの型だのを、真似てるだけでなく、歩方……『流歩』まで真似ようとしている、だと……。
 
 子供のくせに、大した観察眼してるな。

 人間の子供じゃないのか?」

 大陸中央の人種(ひとしゅ)は、エルフだの小人族だの、年齢や見た目が、そのままではない種族も多い。

 だが、”気”を探ってみても、普通にごくごく一般的な子供だった。

 だからこそ、いくら真似しようとしても、出来ていない。

 当り前だ。

 あれは、闘気を使えるようになり、それを、自由自在に操作出来る様にならなければ、不可能な技術だ。

 闘気が使えようになったとしても、その後、五年単位の修行で、出来るか出来ないか、それも才能次第で決まる。

 ま、それはそれとして、面白い小僧だ。

 ラザンは、壁から少年の所まで、一瞬で飛ぶと、隠形を解いて姿を見せた。 


 ※


 ゼンは、目の前に立つ、フェルズで『三強』と呼ばれ、つい先程の試合で負傷した筈の男を見て、最初に思ったのは、偽物の可能性だ。

 これだけの有名人になると、その名や強さの権威を利用して悪さを働く、そんな頭の悪い、最終的に本人にバレたりしたら、どんな目にあわされるか、分からないのに……な悪党も、いると言う。

 だが、負傷した時についたのだろう血の跡が、キモノの前面に少し残っている。

 そんな細かい所まで真似る偽物など、いはしないだろう。

「……何、ですか?」

 偽物の心配はないと思うものの、何となく目の前の存在へ、警戒心を抱いてしまう。

 ゼンは、今までずっと人間不信だったのだ。

 ゴウセルや『西風旅団』のメンバーのお陰で、それはある程度改善されてはいるが、完全に払拭(ふっしょく)された訳ではないのだ。

「なんだ、随分と淡泊な反応だな。お前さん、今さっき、俺の試合での動きを真似て、稽古してたんじゃないのか?」

「そうです、けど……」

「なら、俺の、”ふぁん”とか、そういう意味で、憧れているんじゃないのか?」

「……憧れ……強さには、その、憧れはあります、けど……」

 言外に、それ以外を全否定している。

 それも無理はない。

 普段の言動も、チャランポランでいい加減で、そのだらしない服……キモノの着こなしからしても分かる。

 適当な無精髭、ニヤニヤとしまりなく始終笑い、咥える謎の木の枝。

 このだらしない見た目の、何に憧れればいいと言うのか。

「……なんか俺今、結構ひどい扱いされたか?」

「あ、別に、そんなつもりじゃ……。その、すみません」

「まあ、いいさ。”強さ”を否定されないなら、他なんざ、大した話じゃねぇからな」

 ラザンは、また一瞬で消える。

 『流歩』で移動したのだ。

 庭にある、一本の小さな木に近づき、その枝を一本、適当に折ると、余計な葉や枝をはらって、即席の棒を作り、ゼンの傍まですぐに戻る。

「『流水』のラザン様が、直々に稽古つけてやるよ、小僧」

 その枝を、ピシリとゼンに向け言い放つ。

 唐突な申し出。

 だが、ラザンの人となりを、少しでも知る者なら納得するだろう。

 彼は、気紛れでいい加減で、その日の気分次第で、適当に行動を決める。つまりロクデナシだ。

 子供相手だろうと、突然に”遊び”をしようと持ち掛けても、不思議はない。

「……その枝で、ですか?」

「おっと。”気”を使えねぇド素人はこれだから。

 ……ま、その歳じゃ仕方あるまい」

 ニヤリと笑うその顔は、ゼンの無知さを面白がって、からかっているのか。

「なら坊主は、その安物そうなボロ木剣で、この枝が折れると思ってる訳だ。いいぜ、折ってみろよ」

 ラザンはそう言って、ゼンの前、当てやすい位置に、その棒を差し出す。

 ゼンは、ムっとしていた。

 リュウエンの木剣を、けなされたからと、後はーー

「さっきからその、坊主とか小僧とか、やめて、くれませんか。

 オレの名前、ゼン、です」

「ほお、なんだ、怒ったのか。

 クククッ、その意気や良し。わかった、ゼン。じゃ、やってみな」

 ゼンは、大きく息を吸うと、普段よくやっているように、木剣を構え振り上げると、上段から思いっきりその枝に向かって、振り下ろした!

 ギンっと、木と木が当たったような音ではない、硬質な音がして、ゼンは痛みで木剣を、取り落としそうになった。

 遥かに硬いものに打ち付けた感触。

 その細い枝は、折れも曲がりせず、ゼンの木剣に一撃に、こゆるぎもしていなかった。

「もっと分かりやすく、見える様にしてやろう」

 ラザンが言うと、その枝は急に青白く輝く。

 その光に覆われた枝は、まるで一回り、いや二回り程も太い、光の柱の様になった。

「これが、”気”とか”闘気”とか、呼ばれるものだ。

 普通は、扱える者じゃなきゃ、見えないものなんだが、ここまで濃密にすると、ゼンにも見えるだろ?」

 ゼンは無言で頷いた。

 その輝きに、圧倒的なまでの”力”を感じて、驚いているのだ。

「戦士や剣士、前衛に立つ者は、これで己が身を強化し、武器にも流して強化する。

 武器によっては、強過ぎる気を流すと、壊れたりもするんだが、この枝は、俺が強度そのものも強化しているから、そのままの形、原形を保っている訳だ」

 説明し、”気”をゆるめると、その圧倒的な光は消え、一本のみすぼらしい枝へと戻る。

「だから、これでもゼンの相手が、充分出来るって、わかったか?」

「あ、は、はい」

 ゼンは、まだ痛む手をさすりながら、木剣を握り直す。

「それとゼン、あの移動術、今は諦めろ。

 あれは、気をかなり極めないと、駄目な技だ。

 今のお前じゃ、カケラも使えん。真似事でも、身体を壊すぞ」

「……わかりました」

 ゼンが、木剣を中段に構える。

 ラザンも構える、利き手ではない、左手のみで枝を持ち、左目を瞑(つぶ)って。

「……ハンデ、ですよね?」

「おう、当然だ。力も適当に抜く。まさか、不満か?」

「いいえ……」

 当然の話だ。

 『三強』の『流水』相手に、年端も行かない子供(ガキ)が、ハンデなしで来い、等とぬかしたら、本気でぶち殺してしまったかもしれない。

 ゼンは木剣を構えるが、中々打ち込んでこない。

「?どうした、まさか、怖気(おじけ)づいたのか?」

「いえ、どう攻めればいいか、考えてたん、です」

(おお、そうだ!それだよ!)

 ラザンは表情には出さず、内心ひどく喜んでいた。

 『三強』のビシャグに、あれ程言って聞かせても、分からせられなかった事を、その子供と言ってもいい様な歳のゼンは、すでに理解しているのだから。

(そうだ、戦いとは、ただ、力が強けりゃいいってもんじゃない。

 その場その場の状況を判断し、自分の出来得る事を考え、敵の事も考え、そして攻め方を考える。

 考え過ぎても駄目かもしれんが、何も考えないのは、最初から勝ちを放棄(すてた)した、愚か者のする事だ)

「……決めました。行きます」

 そして、ゼンは打ち込み始める。

 ラザンは、適当にその打撃を枝で受け止め、併せて、打ち返しもする。

(おお、こいつは面白い。自分の剣を真似されるのは、なんだか不思議な感覚で、新鮮だ)

 ゼンは、ラザンの枝を受け、それを別方向へと流そうとする。

 まだまだつたない、ちゃんとした受け流しに、なってはいないが、子供にしたら、まあ上出来の部類だろう。

 ゼンとラザンは、何合かそのまま打ち合い、稽古を続けた。

 すると、ラザンはまた、それ以上に驚く事になる。

 打ち合えば打ち合う程、ゼンの受け流しが、サマになって行く。

 たったこれだけの短時間で、この少年は、目に見える程の上達ぶりを、ラザンに見せつけているのだ。

(なんだ?なんだ、これは?)

 ラザンは、驚愕を胸の中に押しとどめ、ゼンへの攻撃の速さ、そして力を少しづつ挙げていく。

 だがゼンは、それにも対応し、ラザンを真似た受け流しで、木剣をふるう。

(こいつ、”普通”の子供じゃないのか?

 だが、いくら気で中身を走査しても、単なる人間族の子供だ。

 身体も、多少普通よりは、鍛えている程度でしかない……)

 ラザンは、しばらく色々試してみた。

 フェイントをかけてみたり、枝の攻撃だけでなく、足で引っ掛けたり、と何度か虚を衝く攻撃を、織り交ぜてみたりした。

 その場合、一度目は大抵見事に引っかかる。

 だのに、二度目以降となるとーーー

 ラザンは、中段への攻撃と見せかけて下段、足元を枝で鋭く払う。

 ゼンはその場ですぐ跳躍し、そのまま木剣で、ラザンの顔を狙う。

 ラザンは、軽くのけぞってその攻撃を躱したが、

(やべぇ、なんなんだこいつは!

 空中での攻撃なんて、腰が入らんから、大した一撃にはならない。

 むしろ、その隙を突かれやすい。

 なのにこいつは、躊躇なく顔面を狙う事で、その隙に攻撃されない様にこちらを牽制して、一時(いっとき)の時間を稼いだ……)

 戦いの中で常に思考し、攻防両面の意味合いすら、理解しての行動。引っ掛けの様な動きには、中々騙されなくなっている。

 ラザンにとってこの立ち合いは、単なる気まぐれが起こした、お遊び程度の意味合いでしかなかったのだが、どんどんこの『稽古』を楽しんでいる自分がいる事に、ラザン自身、気づかない訳にはいかなかった。

 そしてーーー

 ゼンが、今までになく大胆に踏み込で、攻撃に転じる。

(お、なにか策でもあるのか?いいぜ、やってみな……)

 ゼンが、何をしようとしているのか、大体は読めているのだが、あえてやらせて受け止める自信が、ラザンには有った。

 ゼンの攻撃が、左に偏り、

(そうだ、左目の視界なく、枝も左手だ、当然、その横を抜けた左、背中まで来れば、完全な死角。それを、利用しない手はない)

 そして、一度右に打ち込んでから、ゼンの姿がフっと消える。

 背中側にまわったか。

 直前に、引っ掛けフェイントも混ぜたが、それらは予想済み……

「だが、それは安直過ぎるぜ」

 ラザンは、自分の背中側にいるだろう、相手に向かって枝をーーー、

(いや、ちがう!)

 余りに不意を突かれ、意外な所から来た攻撃に、とっさにラザンは手加減を忘れ、反射的に反応してしまった。

 自分の死角でなく、右側に、”気配”を消して攻撃して来た、大胆なゼンの行動に、カウンター気味となって、容赦なく枝が振り払われた。

 ラザンの一撃を受け、ゼンは、面白い程軽くすっ飛んだ。

 庭に、無秩序に生える木々の枝が、クッションになってくれなかったら、どうなっていた事か。

 ラザンは、慌ててゼンの所に駆け寄り、抱き起こした。

「うわわ、すまんって、気絶してるか。そりゃそうだ。

 回復薬(ポ-ション)、回復薬(ポ-ション)っと」

 ラザンは、自分の収納具をあさり、どうにか効能切れギリギリの回復薬(ポ-ション)を見つけ、(彼はほとんど怪我をしないので、一応の意味合いでしか、薬の類いを買い込まないのだ)それを、枝で擦られた跡のある、センの首筋に垂らす。

 攻撃を当てる、ギリギリの瞬間に気づき、なんとか力と”気”抜いたのだが、勢いだけは止められなかった。

「骨までは……いってないな……。本気でヤバかったな。

 下手したら、首の骨折って……」

 危なく、児童殺人を犯すところだ。

(まあ、ここのギルドの治癒術士は、優秀だから、急いで駆け込めば、蘇生も間に合わなくない、事も、ない筈………。

 あれ?その場合、間に合っているのか?いないのか?)

 彼は、らしくなく、かなり混乱している。

 ラザンは、その屋敷にいた悪霊(レイス)を、一振りで薙ぎ払い、消滅させると、屋敷の応接間であったらしき場所のホコリを、気で外へと強引に押し流した。

 そして、ソファの残骸に、自分の収納具に入っていた、用途不明の布を敷いて、極力汚れない様にしてゼンを寝かせた。

(こういうのを、”逸材”って言うのかね。俺は、師範代の資格なんざ、持っちゃいないがな……)

 資格等得る前に、流派の師匠も仲間も皆、卑怯な手で皆殺しにされ、復讐を果たしても、ただただ空しく、死ぬ事にも意味を見出せずに、状況に流されるまま、フェルズに流れ着いたが……

 気絶したゼンの姿を見て、自重気味に笑う。

「今更俺に、どうしろと……」



 ※



 ゼンが目を覚ますと、そこは薄暗い建物の中で、傍らには、自分を見下ろす様に、『流水』のラザンが立っていた。

「……ここは?」

「庭のあった、屋敷の中だ。

 悪霊(レイス)は消しておいたから、心配するな」

 事も無げに言う。

「悪かったな。お前の攻撃が、予想外の所から来て、つい反射的に……。

 っと、そうだ。一応、回復薬(ポーション)、一口だけ飲んどけ。
 
 外からかけたが、飲む方が、効果は確実だからな。飲み過ぎると、害になるから一口だけ、な」

 ゼンは、手渡された瓶から言われた様に、一口だけ中身を飲んで、ラザンにそれを返す。

 受け取ったラザンは、腰の収納具に入れると、ゼンの向かいの、ソファの残骸っぽい物に乱暴に腰かける。

「お前、気配を消す事が、出来たんだな。

 完璧って訳じゃなかったが、一瞬消えたみたいに見えて、お前の策に見事嵌められた、って感じだな」

「そうなったらいいな、と思って、やってみました……」

 ゼンは、少しはにかみながら答える。

「少し、他の話も、聞かせてもらっても、いいかな?」

「?……はい」

 ゼンには、先程までのラザンと、気配の印象が変わった様に思えて、なんだか戸惑う。

(なんか、柔らかくなった……?)

「お前、その……今、何して生活してるんだ?

 普通の子供って事は、ないと思うんだが……」

 ラザンは、考え考え、言葉を選んでいる様に、感じられた。

 それも、先程までの彼と違う感じがする。ゼンにはよく分からないが、それはきっと、悪い事ではないのだろう。

「えーっと。オレは、スラムの出なんだけど…ですけど、お世話になった人の紹介で、冒険者パーティーのポーター荷物持ちをやって、ます」

 自分のつまらない話等、聞いて面白いとは、到底思えなかったので、適当に端折って話した。

「なんだ、敬語とか苦手か。俺ぁ、気にしねぇから、適当に話していいぜ」

「あ、うん……はい…」

 うつむいて、さもおかしそうに笑うラザン。

 なんか面白い事、言っただろうか?とゼンは、不安になる。

「好きにしろって。ポーター荷物持ちか……。じゃ、迷宮(ダンジョン)にも潜った事が?」

「はい。初級の、ロックゲート岩の門に」

「ふむ?(知らんな)そうだ、そのパーティーは、何てとこだ?クラスは?」

「『西風旅団』です。今はえっと、F級です」

(それも、まるで知らんな。下級の雑魚なんざ、見向きもした事ねぇしなぁ……)

 ゼンに気づかれないのをいい事に、好き勝手な事を考えるラザン。

「ボス戦は?」

「そこのボス戦を。1月ぐらい前に攻略し、ました。西風旅団のみんなが。

 後は、野外の討伐任務にも、何度か連れて行って、もらいました」

 とても楽しかった、とゼンは、心の中だけで付け足す。

「そうか……。ゼンは、木剣で素振りしてたぐらいだから、ポーター荷物持ちで終る気はないんだろう?冒険者志望って事で、いいのか?」

「あ、はい。剣士志望にして、ます」

「そうか……」

 しばし言葉を止め、考え込む様子のラザン。

「俺は、な、ゼン」

「はい?」

 何か、とても真剣な様子に変わった。

 ゼンもつられて、真面目な顔になる。

「今回の闘技会の試合の事、他の事でもだが、思う事あって、ここを出ようと思っている」

「!」

 ゼンは驚愕の声を、なんとか喉の中に押し込めた。

「武者修行の旅って、分かるかな。まあともかく、世界中まわって、強ぇ魔獣を狩りまわって、更に強くなろうって話だ」

「そう……なんですか」

 ゼンはそれを聞いて、とてもガッカリ落胆している自分がいて、なんでだろう、と考えるとすぐに分かった。

 先程までの、ラザンとの立ち合い稽古(と言っていいかどうか分からないのだが。自分が弱過ぎて)が、とても楽しかったのだ。

 やり甲斐のある鍛錬だったので、ラザンがフェルズにいるのなら、またその機会もあるかもしれない、と思えたからだ。

 『三強』と言われる者との稽古等、今日の様な、奇跡的な機会にでも恵まれなければ、あり得ない筈だが。

 でも、彼がフェルズからいなくなるなら、その機会は、奇跡的な確率すらなくなり、もう完全に失われるのだ。

「それで、だ」

 ラザンを立ち上がると、何か言い辛そうに、しばらく逡巡した後でようやく言った。

「お前も、俺と一緒に来ないか?ゼン」

「………………え?」

 なにを言われたのか、よく意味が分からなかった。

「剣は俺が教えてやるから、俺の弟子になって、一緒に旅に出ないか、と言ったんだ」



*******
オマケ

ア「~~~♪」
サ「何か楽しそうね、シア」
ア「うん!なんだかもう、悲しい事なんて、来ないんじゃないかってぐらい、毎日が楽しいんだもの。サリーはそうじゃないの~~?」
サ「え~、どうかな。でも確かに、色々上手く行ってる気はするけどね」
ア「明日はどうしよっかな~~」
リ「いやいや。明日は、闘技会の決勝だから……」
ラ「そうそう。それに、今日もまだ時間はあるぞ」
ア「そっか。まだ、夕ご飯前だもんね~」
リ「ゼンの勉強教材でも、作ったらどうだ?正直、ゴウセルさんに指摘されて、ヒヤっとしたし…」
サ「あ、確かに。ちょっと迂闊だったわね。つい、常識的な話だと、忘れがちだし……」
ラ「じゃ、そこら辺のとこを、資料作りでもしながら話すか」
ア「意義な~~し~~」

まだ、とても楽しそうな4人だった。
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