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第1章 ポーター編
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「なんとも、閉まらん結果になったな……」
人に説教しておいて、無様に負けるとは、笑い話にもならん……。
油断もあった。奢りもあった。慢心していた。傲慢でもあったのだろう。
格下に負ける要素、てんこ盛りだ。
ラザンは、闘技場の治療室から隠形を使って、誰にも気づかれずに、外へ抜け出した。
「綺麗に治してくれたのは有り難いが、一日安静とか、悪いが寝てる気分じゃないんでね……」
腰に差し、鞘に収まった、折れたカタナの事思うと、憂鬱になる。
「やるんなら、もっとうまくやってくれよ、まったく……」
最初から騒いでいる大男と、これから騒ぎ出すであろう、忠犬の事を思うと、激しく頭が痛くなってくる。
試合前に武器の確認(チェック)を怠(おこた)った、自分の迂闊さも呪いたくなる。
(そろそろ潮時かね。一つ所に留まり過ぎたのだろう)
水は流れる物。
一つ所に留(とど)まれば、水は澱む。
黒く濁って腐るが運命(さだめ)か。)
「俺もいい加減、焼きが回ったな……」
フェルズの街並みを、昔を思い出しながら、無目的にうろつく。
ふと足が向いたのは、この街に着いた頃に見つけた、物騒な場所だ。
屋敷に縛られた怪異のお陰で、絶好の鍛錬場であり、居場所のなかった自分が当時、唯一心落ち着ける場所だった。
「まあ、なんだかんだで、慣れていっちまったんだが……」
うろ覚えだったが、目的の場所につけた。
「おー、前より年月進んだ分痛んで、いい風格になったな……」
ラザンは、軽く跳躍して壁の上に上がる。
すると、まるで昔の自分を見たのかと、つい、自分の正気を疑ってしまっう光景があったが、何のことはない。
完全に別人(当然)だ。
どこかの子供が入り込んで、昔の自分の様に、素振りをしているだけだった。
しかし、よく見るとそれは、ただの素振りではなかった。
(あれは、もしかして、今日の俺の試合の動きを、真似してるのか?)
つまりは、今日の観戦客の一人だったのだろう。
「しかし、十歳にも満たない小僧(ガキ)が、俺の真似するたぁ、目の付け所が違うな。感心、感心」
などと、ご機嫌になりながらよく見てみると、その子供の、更にとんでもない所が分かった。
「ただ振りだの型だのを、真似てるだけでなく、歩方……『流歩』まで真似ようとしている、だと……。
子供のくせに、大した観察眼してるな。
人間の子供じゃないのか?」
大陸中央の人種(ひとしゅ)は、エルフだの小人族だの、年齢や見た目が、そのままではない種族も多い。
だが、”気”を探ってみても、普通にごくごく一般的な子供だった。
だからこそ、いくら真似しようとしても、出来ていない。
当り前だ。
あれは、闘気を使えるようになり、それを、自由自在に操作出来る様にならなければ、不可能な技術だ。
闘気が使えようになったとしても、その後、五年単位の修行で、出来るか出来ないか、それも才能次第で決まる。
ま、それはそれとして、面白い小僧だ。
ラザンは、壁から少年の所まで、一瞬で飛ぶと、隠形を解いて姿を見せた。
※
ゼンは、目の前に立つ、フェルズで『三強』と呼ばれ、つい先程の試合で負傷した筈の男を見て、最初に思ったのは、偽物の可能性だ。
これだけの有名人になると、その名や強さの権威を利用して悪さを働く、そんな頭の悪い、最終的に本人にバレたりしたら、どんな目にあわされるか、分からないのに……な悪党も、いると言う。
だが、負傷した時についたのだろう血の跡が、キモノの前面に少し残っている。
そんな細かい所まで真似る偽物など、いはしないだろう。
「……何、ですか?」
偽物の心配はないと思うものの、何となく目の前の存在へ、警戒心を抱いてしまう。
ゼンは、今までずっと人間不信だったのだ。
ゴウセルや『西風旅団』のメンバーのお陰で、それはある程度改善されてはいるが、完全に払拭(ふっしょく)された訳ではないのだ。
「なんだ、随分と淡泊な反応だな。お前さん、今さっき、俺の試合での動きを真似て、稽古してたんじゃないのか?」
「そうです、けど……」
「なら、俺の、”ふぁん”とか、そういう意味で、憧れているんじゃないのか?」
「……憧れ……強さには、その、憧れはあります、けど……」
言外に、それ以外を全否定している。
それも無理はない。
普段の言動も、チャランポランでいい加減で、そのだらしない服……キモノの着こなしからしても分かる。
適当な無精髭、ニヤニヤとしまりなく始終笑い、咥える謎の木の枝。
このだらしない見た目の、何に憧れればいいと言うのか。
「……なんか俺今、結構ひどい扱いされたか?」
「あ、別に、そんなつもりじゃ……。その、すみません」
「まあ、いいさ。”強さ”を否定されないなら、他なんざ、大した話じゃねぇからな」
ラザンは、また一瞬で消える。
『流歩』で移動したのだ。
庭にある、一本の小さな木に近づき、その枝を一本、適当に折ると、余計な葉や枝をはらって、即席の棒を作り、ゼンの傍まですぐに戻る。
「『流水』のラザン様が、直々に稽古つけてやるよ、小僧」
その枝を、ピシリとゼンに向け言い放つ。
唐突な申し出。
だが、ラザンの人となりを、少しでも知る者なら納得するだろう。
彼は、気紛れでいい加減で、その日の気分次第で、適当に行動を決める。つまりロクデナシだ。
子供相手だろうと、突然に”遊び”をしようと持ち掛けても、不思議はない。
「……その枝で、ですか?」
「おっと。”気”を使えねぇド素人はこれだから。
……ま、その歳じゃ仕方あるまい」
ニヤリと笑うその顔は、ゼンの無知さを面白がって、からかっているのか。
「なら坊主は、その安物そうなボロ木剣で、この枝が折れると思ってる訳だ。いいぜ、折ってみろよ」
ラザンはそう言って、ゼンの前、当てやすい位置に、その棒を差し出す。
ゼンは、ムっとしていた。
リュウエンの木剣を、けなされたからと、後はーー
「さっきからその、坊主とか小僧とか、やめて、くれませんか。
オレの名前、ゼン、です」
「ほお、なんだ、怒ったのか。
クククッ、その意気や良し。わかった、ゼン。じゃ、やってみな」
ゼンは、大きく息を吸うと、普段よくやっているように、木剣を構え振り上げると、上段から思いっきりその枝に向かって、振り下ろした!
ギンっと、木と木が当たったような音ではない、硬質な音がして、ゼンは痛みで木剣を、取り落としそうになった。
遥かに硬いものに打ち付けた感触。
その細い枝は、折れも曲がりせず、ゼンの木剣に一撃に、こゆるぎもしていなかった。
「もっと分かりやすく、見える様にしてやろう」
ラザンが言うと、その枝は急に青白く輝く。
その光に覆われた枝は、まるで一回り、いや二回り程も太い、光の柱の様になった。
「これが、”気”とか”闘気”とか、呼ばれるものだ。
普通は、扱える者じゃなきゃ、見えないものなんだが、ここまで濃密にすると、ゼンにも見えるだろ?」
ゼンは無言で頷いた。
その輝きに、圧倒的なまでの”力”を感じて、驚いているのだ。
「戦士や剣士、前衛に立つ者は、これで己が身を強化し、武器にも流して強化する。
武器によっては、強過ぎる気を流すと、壊れたりもするんだが、この枝は、俺が強度そのものも強化しているから、そのままの形、原形を保っている訳だ」
説明し、”気”をゆるめると、その圧倒的な光は消え、一本のみすぼらしい枝へと戻る。
「だから、これでもゼンの相手が、充分出来るって、わかったか?」
「あ、は、はい」
ゼンは、まだ痛む手をさすりながら、木剣を握り直す。
「それとゼン、あの移動術、今は諦めろ。
あれは、気をかなり極めないと、駄目な技だ。
今のお前じゃ、カケラも使えん。真似事でも、身体を壊すぞ」
「……わかりました」
ゼンが、木剣を中段に構える。
ラザンも構える、利き手ではない、左手のみで枝を持ち、左目を瞑(つぶ)って。
「……ハンデ、ですよね?」
「おう、当然だ。力も適当に抜く。まさか、不満か?」
「いいえ……」
当然の話だ。
『三強』の『流水』相手に、年端も行かない子供(ガキ)が、ハンデなしで来い、等とぬかしたら、本気でぶち殺してしまったかもしれない。
ゼンは木剣を構えるが、中々打ち込んでこない。
「?どうした、まさか、怖気(おじけ)づいたのか?」
「いえ、どう攻めればいいか、考えてたん、です」
(おお、そうだ!それだよ!)
ラザンは表情には出さず、内心ひどく喜んでいた。
『三強』のビシャグに、あれ程言って聞かせても、分からせられなかった事を、その子供と言ってもいい様な歳のゼンは、すでに理解しているのだから。
(そうだ、戦いとは、ただ、力が強けりゃいいってもんじゃない。
その場その場の状況を判断し、自分の出来得る事を考え、敵の事も考え、そして攻め方を考える。
考え過ぎても駄目かもしれんが、何も考えないのは、最初から勝ちを放棄(すてた)した、愚か者のする事だ)
「……決めました。行きます」
そして、ゼンは打ち込み始める。
ラザンは、適当にその打撃を枝で受け止め、併せて、打ち返しもする。
(おお、こいつは面白い。自分の剣を真似されるのは、なんだか不思議な感覚で、新鮮だ)
ゼンは、ラザンの枝を受け、それを別方向へと流そうとする。
まだまだつたない、ちゃんとした受け流しに、なってはいないが、子供にしたら、まあ上出来の部類だろう。
ゼンとラザンは、何合かそのまま打ち合い、稽古を続けた。
すると、ラザンはまた、それ以上に驚く事になる。
打ち合えば打ち合う程、ゼンの受け流しが、サマになって行く。
たったこれだけの短時間で、この少年は、目に見える程の上達ぶりを、ラザンに見せつけているのだ。
(なんだ?なんだ、これは?)
ラザンは、驚愕を胸の中に押しとどめ、ゼンへの攻撃の速さ、そして力を少しづつ挙げていく。
だがゼンは、それにも対応し、ラザンを真似た受け流しで、木剣をふるう。
(こいつ、”普通”の子供じゃないのか?
だが、いくら気で中身を走査しても、単なる人間族の子供だ。
身体も、多少普通よりは、鍛えている程度でしかない……)
ラザンは、しばらく色々試してみた。
フェイントをかけてみたり、枝の攻撃だけでなく、足で引っ掛けたり、と何度か虚を衝く攻撃を、織り交ぜてみたりした。
その場合、一度目は大抵見事に引っかかる。
だのに、二度目以降となるとーーー
ラザンは、中段への攻撃と見せかけて下段、足元を枝で鋭く払う。
ゼンはその場ですぐ跳躍し、そのまま木剣で、ラザンの顔を狙う。
ラザンは、軽くのけぞってその攻撃を躱したが、
(やべぇ、なんなんだこいつは!
空中での攻撃なんて、腰が入らんから、大した一撃にはならない。
むしろ、その隙を突かれやすい。
なのにこいつは、躊躇なく顔面を狙う事で、その隙に攻撃されない様にこちらを牽制して、一時(いっとき)の時間を稼いだ……)
戦いの中で常に思考し、攻防両面の意味合いすら、理解しての行動。引っ掛けの様な動きには、中々騙されなくなっている。
ラザンにとってこの立ち合いは、単なる気まぐれが起こした、お遊び程度の意味合いでしかなかったのだが、どんどんこの『稽古』を楽しんでいる自分がいる事に、ラザン自身、気づかない訳にはいかなかった。
そしてーーー
ゼンが、今までになく大胆に踏み込で、攻撃に転じる。
(お、なにか策でもあるのか?いいぜ、やってみな……)
ゼンが、何をしようとしているのか、大体は読めているのだが、あえてやらせて受け止める自信が、ラザンには有った。
ゼンの攻撃が、左に偏り、
(そうだ、左目の視界なく、枝も左手だ、当然、その横を抜けた左、背中まで来れば、完全な死角。それを、利用しない手はない)
そして、一度右に打ち込んでから、ゼンの姿がフっと消える。
背中側にまわったか。
直前に、引っ掛けも混ぜたが、それらは予想済み……
「だが、それは安直過ぎるぜ」
ラザンは、自分の背中側にいるだろう、相手に向かって枝をーーー、
(いや、ちがう!)
余りに不意を突かれ、意外な所から来た攻撃に、とっさにラザンは手加減を忘れ、反射的に反応してしまった。
自分の死角でなく、右側に、”気配”を消して攻撃して来た、大胆なゼンの行動に、カウンター気味となって、容赦なく枝が振り払われた。
ラザンの一撃を受け、ゼンは、面白い程軽くすっ飛んだ。
庭に、無秩序に生える木々の枝が、クッションになってくれなかったら、どうなっていた事か。
ラザンは、慌ててゼンの所に駆け寄り、抱き起こした。
「うわわ、すまんって、気絶してるか。そりゃそうだ。
回復薬(ポ-ション)、回復薬(ポ-ション)っと」
ラザンは、自分の収納具をあさり、どうにか効能切れギリギリの回復薬(ポ-ション)を見つけ、(彼はほとんど怪我をしないので、一応の意味合いでしか、薬の類いを買い込まないのだ)それを、枝で擦られた跡のある、センの首筋に垂らす。
攻撃を当てる、ギリギリの瞬間に気づき、なんとか力と”気”抜いたのだが、勢いだけは止められなかった。
「骨までは……いってないな……。本気でヤバかったな。
下手したら、首の骨折って……」
危なく、児童殺人を犯すところだ。
(まあ、ここのギルドの治癒術士は、優秀だから、急いで駆け込めば、蘇生も間に合わなくない、事も、ない筈………。
あれ?その場合、間に合っているのか?いないのか?)
彼は、らしくなく、かなり混乱している。
ラザンは、その屋敷にいた悪霊(レイス)を、一振りで薙ぎ払い、消滅させると、屋敷の応接間であったらしき場所のホコリを、気で外へと強引に押し流した。
そして、ソファの残骸に、自分の収納具に入っていた、用途不明の布を敷いて、極力汚れない様にしてゼンを寝かせた。
(こういうのを、”逸材”って言うのかね。俺は、師範代の資格なんざ、持っちゃいないがな……)
資格等得る前に、流派の師匠も仲間も皆、卑怯な手で皆殺しにされ、復讐を果たしても、ただただ空しく、死ぬ事にも意味を見出せずに、状況に流されるまま、フェルズに流れ着いたが……
気絶したゼンの姿を見て、自重気味に笑う。
「今更俺に、どうしろと……」
※
ゼンが目を覚ますと、そこは薄暗い建物の中で、傍らには、自分を見下ろす様に、『流水』のラザンが立っていた。
「……ここは?」
「庭のあった、屋敷の中だ。
悪霊(レイス)は消しておいたから、心配するな」
事も無げに言う。
「悪かったな。お前の攻撃が、予想外の所から来て、つい反射的に……。
っと、そうだ。一応、回復薬(ポーション)、一口だけ飲んどけ。
外からかけたが、飲む方が、効果は確実だからな。飲み過ぎると、害になるから一口だけ、な」
ゼンは、手渡された瓶から言われた様に、一口だけ中身を飲んで、ラザンにそれを返す。
受け取ったラザンは、腰の収納具に入れると、ゼンの向かいの、ソファの残骸っぽい物に乱暴に腰かける。
「お前、気配を消す事が、出来たんだな。
完璧って訳じゃなかったが、一瞬消えたみたいに見えて、お前の策に見事嵌められた、って感じだな」
「そうなったらいいな、と思って、やってみました……」
ゼンは、少しはにかみながら答える。
「少し、他の話も、聞かせてもらっても、いいかな?」
「?……はい」
ゼンには、先程までのラザンと、気配の印象が変わった様に思えて、なんだか戸惑う。
(なんか、柔らかくなった……?)
「お前、その……今、何して生活してるんだ?
普通の子供って事は、ないと思うんだが……」
ラザンは、考え考え、言葉を選んでいる様に、感じられた。
それも、先程までの彼と違う感じがする。ゼンにはよく分からないが、それはきっと、悪い事ではないのだろう。
「えーっと。オレは、スラムの出なんだけど…ですけど、お世話になった人の紹介で、冒険者パーティーのポーターをやって、ます」
自分のつまらない話等、聞いて面白いとは、到底思えなかったので、適当に端折って話した。
「なんだ、敬語とか苦手か。俺ぁ、気にしねぇから、適当に話していいぜ」
「あ、うん……はい…」
うつむいて、さもおかしそうに笑うラザン。
なんか面白い事、言っただろうか?とゼンは、不安になる。
「好きにしろって。ポーターか……。じゃ、迷宮(ダンジョン)にも潜った事が?」
「はい。初級の、ロックゲートに」
「ふむ?(知らんな)そうだ、そのパーティーは、何てとこだ?クラスは?」
「『西風旅団』です。今はえっと、F級です」
(それも、まるで知らんな。下級の雑魚なんざ、見向きもした事ねぇしなぁ……)
ゼンに気づかれないのをいい事に、好き勝手な事を考えるラザン。
「ボス戦は?」
「そこのボス戦を。1月ぐらい前に攻略し、ました。西風旅団のみんなが。
後は、野外の討伐任務にも、何度か連れて行って、もらいました」
とても楽しかった、とゼンは、心の中だけで付け足す。
「そうか……。ゼンは、木剣で素振りしてたぐらいだから、ポーターで終る気はないんだろう?冒険者志望って事で、いいのか?」
「あ、はい。剣士志望にして、ます」
「そうか……」
しばし言葉を止め、考え込む様子のラザン。
「俺は、な、ゼン」
「はい?」
何か、とても真剣な様子に変わった。
ゼンもつられて、真面目な顔になる。
「今回の闘技会の試合の事、他の事でもだが、思う事あって、ここを出ようと思っている」
「!」
ゼンは驚愕の声を、なんとか喉の中に押し込めた。
「武者修行の旅って、分かるかな。まあともかく、世界中まわって、強ぇ魔獣を狩りまわって、更に強くなろうって話だ」
「そう……なんですか」
ゼンはそれを聞いて、とてもガッカリ落胆している自分がいて、なんでだろう、と考えるとすぐに分かった。
先程までの、ラザンとの立ち合い稽古(と言っていいかどうか分からないのだが。自分が弱過ぎて)が、とても楽しかったのだ。
やり甲斐のある鍛錬だったので、ラザンがフェルズにいるのなら、またその機会もあるかもしれない、と思えたからだ。
『三強』と言われる者との稽古等、今日の様な、奇跡的な機会にでも恵まれなければ、あり得ない筈だが。
でも、彼がフェルズからいなくなるなら、その機会は、奇跡的な確率すらなくなり、もう完全に失われるのだ。
「それで、だ」
ラザンを立ち上がると、何か言い辛そうに、しばらく逡巡した後でようやく言った。
「お前も、俺と一緒に来ないか?ゼン」
「………………え?」
なにを言われたのか、よく意味が分からなかった。
「剣は俺が教えてやるから、俺の弟子になって、一緒に旅に出ないか、と言ったんだ」
*******
オマケ
ア「~~~♪」
サ「何か楽しそうね、シア」
ア「うん!なんだかもう、悲しい事なんて、来ないんじゃないかってぐらい、毎日が楽しいんだもの。サリーはそうじゃないの~~?」
サ「え~、どうかな。でも確かに、色々上手く行ってる気はするけどね」
ア「明日はどうしよっかな~~」
リ「いやいや。明日は、闘技会の決勝だから……」
ラ「そうそう。それに、今日もまだ時間はあるぞ」
ア「そっか。まだ、夕ご飯前だもんね~」
リ「ゼンの勉強教材でも、作ったらどうだ?正直、ゴウセルさんに指摘されて、ヒヤっとしたし…」
サ「あ、確かに。ちょっと迂闊だったわね。つい、常識的な話だと、忘れがちだし……」
ラ「じゃ、そこら辺のとこを、資料作りでもしながら話すか」
ア「意義な~~し~~」
まだ、とても楽しそうな4人だった。
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