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第3章 従魔研編
082.狼調教
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「よっしゃ、始めるぞ、チビ『流水』!」
フォルゲンが、両手のナックルを叩き合わせつつ、中央へと出る。
ゼンも寄りかかっていた障壁から身を起こすが、構えようとはしない。
「まだ、調整が済んでいないようです」
「あんだと?」
いや、調整は済んでいたのだ。ゼンが障壁に寄りかかっていたので、変化させられなかっただけで。
すぐに、その周囲を覆っていた直方体、ともいうべき障壁の壁は縮まり、変化する。それは、正しく立方体と呼べる物になった。
「こ、こいつは……?」
「あんたの戦い方だと、狭い方がいいんだろ?しかもこれで、どこでも同じ距離だ。天井も、上下左右前後、全て同じ距離だ。やりやすいだろ?」
「……これを、あの術士に頼んでいたのか?」
フォルゲンは茫然としている。この意味する事は、自分が絶対優位になる、という事だからだ。
「そうだよ」
「お前は、馬鹿なのか?頭おかしいのか?BランクとDランクって実力差があって、更に俺に有利な舞台にするだと!」
「それは違う。試験見てただろ?今はC級(ランク)だよ。1階級差が縮まったね」
にこやかに説明するゼンは、まるで余裕だ。負ける事などあり得ない、とでも考えているかのように。
「……頭のおかしな奴を、理解しようとするのはやめる。だが、武器を持たないのはどういう事だ!」
「必要ないから。レオさんとの戦い見ても分かった。武器なんていらない、そう思える戦い方だったからさ」
「……どこまでも、人を馬鹿(コケ)にしくさりやがって!だったら、俺もいるか!」
フォルゲンは木製のナックル・ダスターを外して、横に投げる。それは障壁に当たって、そのまま下に落ちた。
「ふむ。でも、爪を伸ばしたりするなよ?使っていいのは手刀ぐらいだ」
「お前みたいな小生意気なガキに、爪や牙なんか使わん!素手で引き裂いてやる!」
フォルゲンはまた、縦横無尽に跳ね回り、戦闘準備の動きを開始する。
その動きは、先程よりも段違いに速く、目で追うのもかなり困難な速さだ。それもその筈。ゼンが、フォルゲンの戦いやすい大きさを考えて、結界障壁を調整してもらったのだから。
レオの時は、ゼンに本気を見せたくなくて、多少手を抜いていた事もあるようだが、速さを増しても、余り意味はないのだ。まるでレオの忠告を聞かずに、同じことを繰り返す単細胞さには呆れるばかりだ。
「まだ種明かしを聞いてないのに、短気な奴だな」
「そんなの知るか!ボコボコにしてやるぜ!」
フォルゲンはゼンの真上、頭頂部から狙える位置についた。人間の戦いにおいて、上を取れば有利なのは、どんな闘技術も流派も関係ない。そして、頭の真上からの襲撃など、どんな戦いにおいても完全想定外の攻撃になるのだ。
「死ね!」
実際は、防壁があるので、殺す事など無理なのだが、その場の気分とノリだ。
フォルゲンの真上の天井部を蹴って、下降の威力に重力のそれも加わった拳の振り下ろしは、恐るべき破壊力となっただろう。当たっていれば―――
スっとゼンが後ろに下がる。まるで分かっていて狙ったような動きは、それだけでフォルゲンの拳はむなしく空を切り、慌てて握った拳を開いて床に手をつき、肘を曲げそれを緩衝役としてギリギリ顔を無様にぶつけないで済んだ。
肘を伸ばす屈伸の要領で、腕の力だけで飛び、態勢を立て直してゼンとの距離を取る。
「な、何故分かったんだ、俺が真上から攻撃するのが!あの検定官もそうだった。まさか、この訓練所に妙な仕掛けが……?!」
「そんな事を、俺はともかく、ギルドの検定官がする訳がないだろ。だから、親切に謎解きしてやる。これは、お前だけじゃなく、身体能力に頼り切った獣人族特有の欠点でもあるからな」
ゼンならするのか?と観客は苦笑する。
「お前は、その跳躍で動く時、何を見て飛ぶ?」
「何って、目的地の場所に決まって……?」
自分の当然の返答に、今までの一連の答えが分かってしまい、サーっと青ざめるフォルゲン。
「ようやく気付いたのか。そうだ、その速い移動、壁などの足場を使っての跳躍は、その足場の状態を確かめる為に、必ず1度以上、その場所の確認をする。
本来は、森や林なんかで、これを使って魔物を翻弄して倒す、絶対無敵の技だ、とでも思ってたんだろ?森なんかじゃ、いくらでも足場がある、でも、跳躍に耐えられる太い足場でなければ使えない。万一にでも細い枝や、弱い木なんかを踏み抜いたら大変だからな。
つまり、この技。でいいのか?は、お前の視線、顔の向きを見てれば、どこに行くかが丸わかりなんだよ。知恵の足りない魔物ならば、それでも通じるかもしれないが、対人戦じゃてんで駄目だ。
当然、苦しい修行の末に身に着けたんだろうが、だからこそ、その癖は身体にしみ込んでいる。矯正するのは難しいぞ。今、話を聞いただけで、それを直すのは不可能だろうな」
ゼンが懇切丁寧に説明した、その動きの弱点に、茫然としてしまうフォルゲンだ。
確かに、常人なら目で追いかけるのも不可能な動きを、同じ冒険者ならば、どうにか目で追えるのは分かっていた。だが、それで完璧な予想がされてしまう等、師範も誰も教えてはくれなかった。
まさか、こんな致命的な欠点があったとは……。
「い、いや、待て。俺が真上についた時、お前は俺を見上げていない!」
上げ足取ったつもりだったが、それも無意味。
「真上についた時点で、攻撃が来ると分かるに決まってるだろ?
そこから一つ違う場所を経由すれば、攻撃が決まる確率は増えるだろうが、お前は、そんな面倒な事は、しない。そこら辺も動きを読みやすい理由だよ。レオ検定官も言ってただろうが。動きが素直過ぎる、と」
フォルゲンは、今まで自分の信じていた土台となるものが、音を立てて崩れ去るのを感じる。
(馬鹿な!そんな馬鹿な!俺が今までやってきた修行が、無駄だとでも言うのか?いや、違う!絶対に違う!)
「そ、そんな事が、認められるか!この、“立体包囲殺法”は、死角のない、無敵の技だ!」
そしてまた、飛び跳ね始める。ただし、少し動きに変化がある。手で目を覆ったり、顔をそっぽ向かせたりと、ゼンに動きの先を読ませない様にしている。
「努力は認めるけど、無敵なんて、そうそうないのが分からないのかな」
今度は背後から来た拳を受け止め、そして流す。思いっきり床に叩きつけて!
「ガッフッ!…」
防壁は壊れないが叩きつけた衝撃までは殺せなかったようだ。血を吐きながらも、フォルゲンはすぐ丸まって回転し、ゼンから離れて態勢を立て直してからまた“立体包囲殺法”とやらを再開する。
「剣がなくても流水は出来る。動きの基本なんだから……」
レオは、フォルゲンが叩きつけられた様を見て、自分はやられなくて良かった、と本当に胸を撫で下ろす。
それからも、フォルゲンは果敢に攻撃を続けるが、それらはいなされ、あるいは受け流されて反撃され、見る影もなくボロボロにされていく獣人の闘士。
「さすがにタフだけど、これ以上やる意味があるのか?」
「う、うるさいうるさい!俺は、まだだ、まだ負けてない!『流水』なんぞに、負けてたまるか!」
フォルゲンの“闘気”が集まる。
「やっと奥の手を使う気になったのか。お手並み拝見……」
ゼンに相対するフォルゲンの“闘気”が爆発的に高まり、それは炎となって燃え上がり、一度まばゆく光ったと思ったら、5つの炎に包まれた獣人の集団となる。
「“気”が炎属性を持っているのか?そしてこれは、分身?」
一斉に襲い掛かる炎の狼獣人を、ゼンは冷静に対処する。単なる分身。“気”で散らすのもたやすいが、さて本物は?
その時、4人の炎の獣人がゼンを包囲する中で、一人だけが横に跳躍して壁を蹴り、また“立体包囲殺法”でゼンを攻撃するかに見えた―――
「やっぱりその技が好きなのか。通用しない技で心中か?」
ゼンに迫るその炎の獣人は、ゼンの手前で爆発して、ゼンを包囲していた4人の、背後の一人に吸い込まれる。他の3人もだ。
「くらえ、ガキが!」
突如一人となった、炎を纏いしフォルゲンは、手刀でゼンの脇腹を攻撃して、ゼンの身体がスッパリと両断される!
「嘘っ!!」
声にならない悲鳴を上げたのは、ザラだったのかサリサだったのか、それとも他の誰かだったのかは分からない。
「へ、へへへ……。殺っちまったな……」
ギルドで人殺しだ。当然罪に問われる。それをやってしまう程に、フォルゲンは追い詰められていたのだ。
その背後で、パチパチと軽い拍手の音が聞こえる。
「血も出てないその遺体(?)を見て、その判断は早過ぎだろ?」
フォルゲンが、信じられない、と振り向くとそこには隠形を解いたゼンがいる。
と同時に両断された身体は消える。
「こ、これは何だ?」
「君のと同じような物。残像を映した影に、“気”で質量もあるっぽく見せる。でも、斬った時の手応えがおかしい事に、気づくのが普通だ」
防壁もなかっただろ、とゼンは付け足す。
フォルゲンは、もう立っているのがやっとだ。今の技“五つ身炎身乱舞”で、全闘気を使い果たしたのだ。
「最後のは良かったよ。“立体包囲殺法”にこだわっていると見せかけて、包囲してた一人に身を潜ませ、一気に全闘気を集めて攻撃する。もっと素早く集められたら、多少はマシになるだろう」
「……いつ、入れ替わっていたんだ?」
「いつでもいいだろ。些細な問題だよ」
ゼンは、フォルゲンの間近に歩み寄ると、剣呑な眼差しで、フォルゲンを凍り付かせる。
「さて、これからが本題だ。君には、その無駄に闘気をたれ流す、大技よりも、もっと基礎の、身体強化を覚えてもらう」
「……俺は負けた。勝手にしろ!」
フォルゲンは吐き捨てる様に言う。
「無論、そうするさ。じゃあ、お前は今、“気”を使い果たしたと思ってるみたいだが、まだ出せる。“丹田”に力を込めて“気”をひねりだせ」
「?なんだ、そりゃ?」
答える声に力がない。脱力している。
「……それすら習ってないのか。腹の下、身体の中心、腰の中心のような場所だ。そこに力をこめろ」
ゼンは溜息をつきつつ、説明をする。
「くっ……、勝手な事を……。そんな所に力を込めたからって……、な、なんだこりゃ?」
「そこが人体で“気”を造る場所だから、力を込めればまだ出せるだろ?」
「うぅ……確かに、“気”が溢れてくるが、何故だ?もう使い果たした筈なのに?」
フォルゲンには理解出来ない。“気”の基礎すら習ってない彼には分からないのだ。
「そこはもう考えるな。その気を、全身に行き渡させる、循環させるんだ。分かるか?全身に流して戻して、と血液のように、行き渡させてから、また戻す。繰り返すんだ。
そうして、身体強化する。目や耳とかの五感もだ。鼻や耳は、強化し過ぎると、獣人じゃ拾い過ぎるかもしれんから、そこは自分で加減しろ」
「そ、そんな器用な事、いっぺんに言われても、出来るかよ!」
「出来なきゃ。痛い目みるだけだ。行くぞ!」
ゼンは防壁を、フォルゲンの前方から拳で殴る。いわゆる正拳突きだ。フォルゲンの防壁に波紋が浮かび、一瞬後に正拳の威力が中まで通って行った。
「ぐぐぅ……ぐは!な、なんで防壁があるのに、そんな軽い突きで、攻撃の威力が通るんだ?!」
「“通し”とか“鎧通し”とか言われる、防御の中に攻撃を浸透させる技だよ。“通背拳”とも言ったかな?師匠も色んなとこで色んな技覚えてるから、ゴチャゴチャになってるんだ。
それはそれとして、身体強化すれば耐えられる範囲内の攻撃だ。身体強化を、使え」
「い、いや、やってるけど、そうそう上手くいかねぇんだよ!」
フォルゲンが泣き言を言う。
「言っておくが、出来るまで続けるぞ。そんなに恵まれた身体、身体能力がある癖に、ゆるく“気”をたれ流すような勿体ない真似、いつまでもさせられるか!
それが出来るようになれば、多少は“気”が引き締まる。練度も上がる。従魔も造れる。さあ、続けろ!」
そうして、しばらくフォルゲンはずっとボコボコと殴り続けられて、ようやく使えるようになった所で解放されたのだった。
※
「ゼン君の修行って、あんなに凄いスパルタで厳しいのか?」
レオは拷問にも近い強制学習に、思わずフォルゲンに同情してしまう。
「まさか。俺等の時はもっと普通に、分かりやすく教えてくれましたよ」
「教えるって言うよりも、性根を叩き直すって意味でああなんでしょ」
リュウもラルクも、自分達は普通で良かった、としみじみ思うのだ。
「あー、やっと終わった。覚えの悪い、駄狼……」
ゼンは、厳しい鍛錬で意識をなくしたフォルゲンを肩に担いで来る。
そしてドサっと乱暴に降ろす。
「お疲れさん」
レオやリュウ、ラルクがねぎらっていると、何やら背後から凄い勢いで誰かがやって来る。
パッチーン!
不意打ちで思いっきり頬をはたかれたゼンが、それをしたサリサを、驚きの目で見る。
「え?俺、なんで叩かれたの?」
もう一人来て、まだ叩かれていない方の頬をひっぱたかれた。
バッチーン!
ザラが涙目でゼンを見ている。
「あんな心臓に悪いもの見せられて、当り前でしょ!」
「ゼンは、周囲に心配かけているのに、あんな、あんなことを!……」
サリサとザラは、超ご機嫌斜めで、涙目だ。
「え、と、その……。心配かけて、ごめんなさい……?」
二人の機嫌を直すのにも、かなりの時間を要したゼンだった。
※
「じゃあ、従魔と主人となるものの、相性について説明します」
研究棟に戻ったゼンは、最初の講義室らしき部屋で、4人の被験者に説明する。
学者、研究者達も、被験者達とは距離を置いているが、その話を聞いている。
一番後ろの席では、ニルヴァーナとエリンのエルフコンビが、ボンガと仲良く交流している。
ゼンがいない間も、変な事は起きなかった様だ。念話もなかった。
「それは、主人と従魔が似通った性質を持つものである場合に、従魔との“共鳴現象”が起きる、というものです。それは特に魔術等の術系統では、顕著に現れる、らしいです。
自分は剣士ですので分からないのですが、パラケス翁のお言葉です。
つまり、オルガさんは、風系の術が得意で、精霊魔術も風と相性がいい、と言ってましたね」
「ええ。そうです、教官」
被験者のダークエルフの冒険者が愛想よく答える。
「……教官て。臨時の指導役、教育係なだけなので、そんな風に呼ばなくていいですよ」
「そうですか?でも、役職的におかしくないのでは?」
オルガはニルヴァの方を向く。
「そうね。別に教官でいいじゃないですか。私達もそう呼びますから」
とニルヴァも調子よく、オルガに同意する。
(ゼン殿、とかずっと呼ばれるよりはいいのかなぁ……)
「……じゃあ、それでもいいです。で、風系が得意なオルガさんには、風のスキルや術が使える鳥系の魔物がいいかもしれません。“共鳴現象”がどの程度影響するかも見られますから」
「……そうですか。私は最初は、犬か狼系かな、と番犬代わりに使えそうで」
「そこら辺は強制ではありませんが、同時に使役が2体、4体までは契約所持出来る事を考えた上で、慎重に検討して下さい。
後で、“絆”を切って、従魔を殺し、別の従魔にする事も出来はしますが、それは多分、ずっと仲良しだった愛玩動物(ペット)を捨てるよりも、もっと心、精神に来るものがあると思うので、お勧めしません」
ゼンは眉をしかめる。自分なら絶対やらない。
「心と心、魂と魂の繋がった絆を切る、ですか。確かにゾっとしますね。精霊魔術で、精霊と繋がった事のあるものなら分かります」
オルガも嫌な表情をしている。皆、彼女の様に分かりがいいと楽なのだが。
「多分、従魔を使う全ての冒険者が分かる事になると思います」
「なあ、師匠。それだと、俺は狼系の魔物がいいのかね。相性は」
「師匠言うなって言ってるだろうが!
多分、狼系と相性はいいと思う。ただ“共鳴現象”は、術系以外は微妙な効果しかないから、過度の期待はしない方がいい。君は、炎の“気”が使えるんだし、炎の魔物でもいいかもしれない。炎獅子とか」
ほうほうと、フォルゲンは感心した様にうなずく。
負けを認めたフォルゲンが、すっかり大人しくなったのはいい事なのだが、何故かかゼンを師匠呼ばわりするのは困ったものだ。
師範代を名乗っていいなど、ラザンからは言われていない。
“気”の基礎を少し教えてだけでそれでは、リュウやラルクまでゼンの弟子、という事になってしまう。
「ともかく。今まで説明した様に、従魔は、自分が倒した魔物の魔石でしか出来ない事。
で、その範囲内での選択、となります。どこからか買って来た魔石とかじゃ駄目です。
それと、従魔はあくまで自分の力の分身なので、自分以上の強さにはなりません。たとえば、A級魔獣を偶然B級の皆さんが倒せても、従魔になるとB級に弱体化します。スキル等は、その限りじゃないかもしれませんが。
あ、でも、従魔は主人とともに成長しますから、A級まで成長出来たら、従魔も元の強さを取り戻すかもしれません。
後は、説明した進化、ですね。流した“気”や魔力の質や量で、その魔物の上位になる事があります。これは、まだ何がどう関係するか、パラケス翁の統計でもハッキリとは出ていないので、要検証事項ですね」
「なかなか選択が難しいわよね。高い魔石は勿体ない気もするけど、スキル的には上位の魔物の方がいい。
でも一番安い魔石使って進化するなら、それが一番安上がりだけど、確実じゃない……」
被験者の魔術師、カーチャが頭を悩ませる。
「いや、でも一番安い魔石使うと、従魔がそればっかりにならないか?」
地味顔剣士のマークが言う。
「そればっかり、とは?」
「俺達はまだ実験最初の組だけど、うまくいったら従魔は上位冒険者、全てが持つ事になるじゃないですか?」
「全てかどうかは分かりませんが、大多数は使うでしょうね」
「つまり、ペットに当てはめると簡単です。ペットって血統書つきとか高くて、庶民はそこらの野良ばかりだったりするじゃないですか」
「だから?」
「狼系だとグレイウルフとか、ホーンラビットや、紫鹿だの魔猪だのが従魔で一杯になったりしたら、他との差別化を考えて、多少高くても一生ものだし、なるべく上位の魔物にして、他と被らないようにしたいじゃないですか」
なるほど、そういう考え方もあるか、とゼンは思う。うちの子は他の家の子とは違う、と見せたい訳だ。
「で、それらを考えて、皆さんが持ってきた魔石で従魔は出来そうですか?」
一同はう~~~んと唸る。
「もし、他の魔物にしたい、とかあるなら、この5人で何処かの迷宮に潜ってチャチャっと取って来ますか?」
迷ってる4人にゼンが提案する。
「この5人て……?」
オルガは被験者4人を見て、それから教官様を見る。
「皆さんB級だから、俺も同行者として上位迷宮でも入れますよ。そんな奥に行く程日数は取れませんが」
「うお、師匠の魔物討伐が見れるのか?それは是非行きたいな!」
フォルゲンが違う意味で張り切る。
「……いい加減、師匠やめないと、君だけ連れて行かない事にしようか?」
「そ、そりゃ、ひどい!殺生な!」
泣きつくフォルゲンの哀れさが、その場に笑いを誘う。
この分だと、明日は迷宮だろうか?
ゼンはのんびり考える。
*******
オマケ
サ「ゼンって、どこかズレてるって言うか、デリカシーに欠けるとこあるのよね!」
ザ「あれはひどいわ。心臓が止まるかと思った……」
ゼ「いや、悪気があった訳じゃないっていうか、どうして俺、怒られてるの?」
(途方にくれ)
ア「まあまあ、それも乙女心だよ~」
(ニマニマ)
レ「ゼン君はいろいろ大変だねぇ」
リ「それが宿命なのか……」
ラ「いろいろあるさ、人生は~~」
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