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最終章EX 星の英雄
170.生還帰還(1)
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※
白い、見知らぬ天井。継ぎ目も何もない見慣れない天井。
(ここ、何処だ?俺は今まで……。記憶が上手く繋がらない。眠る前は、何をしていたんだっけかな……)
気づくと、薬品の匂いがする。
見回すと、整理された棚や、不自然に綺麗な白い壁などが見える。
(医療施設?マルセナさんやザラにいる、ギルドのそれとは違うけど……)
ザラの顔が浮かんだ事で、急速に記憶が蘇った。
(俺、力尽きて死んだんじゃなかったのか?あれ?何か、女神ヘルと話したような……。だとすると、ここは冥府の医療……何で死者に、治療が必要になるんだよ!)
それに、何かこの部屋は、以前に似たような部屋を見た覚えがあるような……。
(そうか、ムーザルの……?)
左腕の一部が、チクリと痛み、見て見ると、何か針の様な物が左腕の中間、肘の関節近く、曲がる表側に刺さっていた。
それには、透明なチューブが繋がり、ゼンの眠っていたベッドのすぐ近くにある、金属パイプの器具に釣り下がった、何か液体っぽい物の入れ物にまも繋がっていた。
(これは、流し込まれた知識に中にあったような……。確か、点滴とかいう……)
<あ、主様、目を覚まされたのですか!>
<おお、本当だぜ。いつのまに。良かったな!>
<無事生還、歓喜……!>
<ゼン様、意識が戻られたんですね。良かったです……>
<あるじあるじあるじ!ぜ~~ん、おー!>
急に、中にいる従魔全員が大声で歓声を上げ、ゼンは顔をしかめる。
耳を塞ぎようのない、中からの声だ。
<みんな、トーン抑えて……。ボンガぐらいに……>
(みんなが中にいるって事は、従魔契約の解除もなく、俺は…生きてる……?)
念話を出さなくとも、従魔達の喜びの波動で、ゼンは内側から暖かく満たされるのを感じていた。
と、何か巨大な力が、凄い速度で近づいて来るのを感じる。
(この、暴力的で、破壊的な特徴のある“気”は……)
自動ドアが開くのが待ちきれず、蹴破って乱暴に室内に入って来たのは、ゼンの予想通り、いつものハイエルフ様だった。口に何かの食べカスがついたままだ。
「ゼンっ!何故わしが食事中で離れている時に、わざわざ目覚めるのじゃ、この唐変木が!」
アルティエールが、驚いた事に、こちらに向かって飛びついて来た。
「お、おい、アル!」
ゼンは、上手く動かせない上体を起こしかけていたが、左腕が点滴に繋がったままだ。
右腕とその小さな身体で受け止めるしかないが、アルが途中で威力を弱めたのか、ゼンにかかる衝撃は、思ったよりも来なかった。
「お主は、わしに心配ばかりかけおって!」
「え~と。アル、俺。起きたばかりだから、状況説明が欲しいんだけど……」
ゼンは困って、むしゃぶりついて来るアルの頭を撫でてなだめながら、説明を求めるが、まるで聞いている様子がない。
「丸四日も目を覚まさんで、あの淫乱女神はー!」
何か危ない言葉も口にしている。信徒的に、大丈夫なのだろうか?
(四日……。ここは多分、最初に来た、ムーザルの、ジークのいた海底の研究施設なのだろう。その医療室、といったろころか。じゃあ、あの女神ヘルとの会話、俺が暗闇に落ちて行ったところから、四日も経っていた?そんなに長く話した覚えはないけれど……)
ヘルによって眠らされたらしい時間も、含まれるのかもしれない。
するとそこに、アルがドアを壊してしまった出入口から、おなじみ、角で直立耐性の、透明な立方体が2体、部屋にプカプカ浮かび、回転しながら入って来た。
【自動で開くドアを待ち切れず壊すとか、直情径行、短気にも程がある……】
【まあ、それだけ心配しておったようじゃしのう】
中央部び赤と青の光がある、その立方体は、母星から射出され宇宙を渡った弾丸型のカプセルを出てから見られなかった、神々の器となる魔具。懐かしさすら感じる姿だ。
※
「―――それでお二人が、今の状況を説明してくれるんですよね?俺は、あの時、死んだ、と思ったのですが。冥府らしき場所で、女神ヘルとも会いましたし」
アルティエールは、何故かゼンの寝るベッドに潜り込み、隣りでさも満足そうにひっついている。
【うむ。それなのじゃがな、お主が行った場所は、正確には冥府ではない。近い場所ではあるが、ヘルがお主を直接ねぎらいたかったのじゃろうて】
【お前は死んでなどおらぬ。この事態は、我等には想定済みの話。だからこそ、女神達から加護を授かったのだ】
「?よく、解らないのですが」
【つまり、お主は、死の直前になると、生命力が回復し、傷ついた魂も治療、補完されるように、蘇生いや再生?死んだ者を蘇らせるのは、自然の理(ことわり)に反しておるからのう。それは出来ぬから、元の健康な状態に戻せる加護が、成されておったのじゃ】
「……あの、物凄いやり方の加護に、そんな意味が……」
やり方に、意味等まるでない。それでも、その事を口に出して、藪蛇をつついたりはしない、賢明な二柱であった。
【これは、一人の人間には、一度しか与えられぬ、しかも女神二柱以上の協力がいる加護で、命に関わるので、ヘルの加護は必須となる】
【幸い、二柱の器となっても大丈夫な関係者がいてくれたので、ノートとヘルになった】
「そうですか。でも、なんで事前に、俺に話してくれなかったのですか?」
【それは、話したら、お主が自分の命を盾にするような、無茶な戦法と取りかねない気性だと、判断したからじゃよ。実際、修行の旅の時、似たような事を、やっておるじゃろ?】
なんでそんな事まで知られているのかと、ゼンは内心しかめっ面になる。
【普通に、魔術強化や魔力容量の増加等もあった。宇宙空間の戦闘では、母星の近くまで来たから余計に、ノートの加護が強まり、追撃戦では機動力が上がった】
【お主は、ヴォイドが、月に落ちる芝居の為に、わざとやられて、と思ったらしいが、そうではないのじゃ】
【うむ。あれも、二段構えの戦術で、本来ヴォイドは、月に戦場を移す偽機神(フェイク・マキナ)と、飛行ユニットの収納空間に隠れ潜むヴォイドがアースティアに向かう、両面作戦を展開するつもりであったのだろう】
「ああ、そういう……」
こちらの戦力の少なさを逆手に取り、完全に裏をかくつもりだったようだ。
【そう。こちらが月で戦闘をしている間に、勝っても負けても、ヴォイドは母星に降下していて、何もかも手遅れになる、と……】
成功していたら、本当に、どうにも手の出し様がなくなっていただろう。
【それが、お主とアルティエールに、飛行ユニットはエンジンをやられ、別軌道へと押しやられた。まさに、向こうにとっては計算違いの事態であっただろうな】
【軌道を収納空間の中から、念動か何かで止めて、軌道修正するのには、かなり手間と時間がかかった筈じゃよ。じゃから、月での戦闘が終わりに使づいたあの時、あの壊れかけた飛行ユニットはやっと、母星近くまで来ていたのじゃが……】
そこでミーミルは、気まずそうに言葉を濁す。
テュールも心なしか、落ち込んでいるような印象を受けた。
【あれは、ヘルの言う通り、儂らの落ち度じゃった。あの時、全ての敵の動きを演算して予測を立て、監視すべきじゃったのに、儂らはまるで観客の様に、お主等の戦闘を見守ってばかりで……いや、見入っていたのじゃろう】
【うむ。かつてない危機、最後の決戦。我等は、その戦いを見惚れていた。見とれていたのだ。自分の役目を忘れた訳ではないが、戦うお主らに肩入れし過ぎて、全体的な戦況を見張り、用心すべき役割に徹し切れていなかった】
「ヘルの言う通り、ってもしかしてあの会話を?」
ゼンが、女神と交わした会話を思い出して尋ねる。
【そうじゃ。自分の声のみ、他の神々にも聞こえるようにしておったのじゃよ。ゼンの声は聞こえなかったが、何を言っているかは大体想像がついた】
【そう思っていたのは、ヘル一人ではなかったからな。我等は、他の神々にも、自分が行っていたら、あのような無様は晒さなかっただろう、と散々な不興を買った】
二柱から、悄然とした印象を受けるのはそのせいなのだろう。
ゼンは、隣りで寝ているアルの髪を、無意識に撫でながら、考え考え言う。
「俺は、その……自分が、生きて帰れず、約束を破ってしまったと思ったから、色々反省して考えていたんですが、それは、神々の配慮で事なきを得ました。
だから、言う訳じゃないんですが、自分達は生きて帰って来れて、頼まれた討伐任務は完遂した。そうですよね?」
【確かに、そうじゃな】
【ああ。この上ない程の成果だと、我は思っておる】
「なら、その上で言うと、もう終わった事だから、不謹慎に思われても大丈夫でしょう」
「俺はこの、星を飛び出して、宇宙で敵を迎え撃つ旅は、全体的には、楽しかったんです」
【??楽しかった、じゃと?】
【それは、どういう意図なのかな】
「戦いの合間合間の時間が長くて、訓練と暇潰しとかする時間も結構あったじゃないですか。で、ミーミルからは知識のうん蓄を聞いたり、テュールから戦士のあるべき姿、心構えなんかも聞いて、アルは基本的に色々と無茶を言って、でも全体的には楽しい旅でした。厳しい戦闘を抜かせば。
俺は、他の神々が来たら、もっと上手くいけたかも、とかの可能性はよく解りませんが、俺はこの四人、と数えると不敬かもしれませんが、ジークいれて五人か。での道中は冒険者の仲間と迷宮(ダンジョン)に潜る時みたいに楽しく、しかも与えられた任務は無事達成出来た。この五人で上手くやって、その成果が出せたんだと、思ってます。
むしろ、俺はまだ、神様不信の、今までの癖が抜けきれてなくて、色々と身勝手な事や、生意気な態度も取っていたと思いますから、やっぱり俺にも問題が沢山あったと思います」
ゼンはただ、思ったままを口にする。
「結果論かもしれませんが、それでも上手くいったのだから、俺はお二人で良かったと思っています。不敬かもしれませんが……」
「お主の周りに、人が集まる意味が解るのう……」
アルは、ゼンに撫でられる心地よさに眼を細めながら笑う。
「え?あ、ごめん!ミンシャがよく隣りに潜り込んでた時、そうしてたから……」
「だーっ!わしを撫でておるのに、別の女の名前を出すではない!そういうとこが、お主の無神経なところじゃ!」
「……あー、うん、ごめん」
ゼンとアルが茶番を演じるのを見ながら、二柱の神は、どうやら自分達は慰められた、あるいは、道中の全てが認められた、そんな気がしてしまう。
<やはり、余り女神達を接触させない方がいいな……。我は今どうも、喜んでしまっているらしい。人の子に言われた、ただそれだけの事で……>
<同意じゃのう。その生まれだから、なだけでなく、神たらしの素質まであるらしい。末恐ろしい子じゃよ>
二柱は、神のみ聞こえる念話で、確かに、それなりに楽しかったのかもしれない、と思ってしまう自分達の戸惑いを隠せないでいたのであった。
*******
オマケ
ゾ「いやぁ~、主がいない時は、正直生きた心地がしなかったな。自分達が無事なら、主もだって分かっちゃいたけどよ」
セ「そうですね。主様は、ボク達にとって、本当に必要不可欠な存在ですから。主人がどうの、以前に……」
ガ「完全同意」
ボ「育てて貰って、親も同然で、主様で、とっても大事な人だものね」
ル「るーもそうだお!」
4人「「「「良かった良かった」」」」
ル「とっても、良かったんだお!」
どっとはらい。
白い、見知らぬ天井。継ぎ目も何もない見慣れない天井。
(ここ、何処だ?俺は今まで……。記憶が上手く繋がらない。眠る前は、何をしていたんだっけかな……)
気づくと、薬品の匂いがする。
見回すと、整理された棚や、不自然に綺麗な白い壁などが見える。
(医療施設?マルセナさんやザラにいる、ギルドのそれとは違うけど……)
ザラの顔が浮かんだ事で、急速に記憶が蘇った。
(俺、力尽きて死んだんじゃなかったのか?あれ?何か、女神ヘルと話したような……。だとすると、ここは冥府の医療……何で死者に、治療が必要になるんだよ!)
それに、何かこの部屋は、以前に似たような部屋を見た覚えがあるような……。
(そうか、ムーザルの……?)
左腕の一部が、チクリと痛み、見て見ると、何か針の様な物が左腕の中間、肘の関節近く、曲がる表側に刺さっていた。
それには、透明なチューブが繋がり、ゼンの眠っていたベッドのすぐ近くにある、金属パイプの器具に釣り下がった、何か液体っぽい物の入れ物にまも繋がっていた。
(これは、流し込まれた知識に中にあったような……。確か、点滴とかいう……)
<あ、主様、目を覚まされたのですか!>
<おお、本当だぜ。いつのまに。良かったな!>
<無事生還、歓喜……!>
<ゼン様、意識が戻られたんですね。良かったです……>
<あるじあるじあるじ!ぜ~~ん、おー!>
急に、中にいる従魔全員が大声で歓声を上げ、ゼンは顔をしかめる。
耳を塞ぎようのない、中からの声だ。
<みんな、トーン抑えて……。ボンガぐらいに……>
(みんなが中にいるって事は、従魔契約の解除もなく、俺は…生きてる……?)
念話を出さなくとも、従魔達の喜びの波動で、ゼンは内側から暖かく満たされるのを感じていた。
と、何か巨大な力が、凄い速度で近づいて来るのを感じる。
(この、暴力的で、破壊的な特徴のある“気”は……)
自動ドアが開くのが待ちきれず、蹴破って乱暴に室内に入って来たのは、ゼンの予想通り、いつものハイエルフ様だった。口に何かの食べカスがついたままだ。
「ゼンっ!何故わしが食事中で離れている時に、わざわざ目覚めるのじゃ、この唐変木が!」
アルティエールが、驚いた事に、こちらに向かって飛びついて来た。
「お、おい、アル!」
ゼンは、上手く動かせない上体を起こしかけていたが、左腕が点滴に繋がったままだ。
右腕とその小さな身体で受け止めるしかないが、アルが途中で威力を弱めたのか、ゼンにかかる衝撃は、思ったよりも来なかった。
「お主は、わしに心配ばかりかけおって!」
「え~と。アル、俺。起きたばかりだから、状況説明が欲しいんだけど……」
ゼンは困って、むしゃぶりついて来るアルの頭を撫でてなだめながら、説明を求めるが、まるで聞いている様子がない。
「丸四日も目を覚まさんで、あの淫乱女神はー!」
何か危ない言葉も口にしている。信徒的に、大丈夫なのだろうか?
(四日……。ここは多分、最初に来た、ムーザルの、ジークのいた海底の研究施設なのだろう。その医療室、といったろころか。じゃあ、あの女神ヘルとの会話、俺が暗闇に落ちて行ったところから、四日も経っていた?そんなに長く話した覚えはないけれど……)
ヘルによって眠らされたらしい時間も、含まれるのかもしれない。
するとそこに、アルがドアを壊してしまった出入口から、おなじみ、角で直立耐性の、透明な立方体が2体、部屋にプカプカ浮かび、回転しながら入って来た。
【自動で開くドアを待ち切れず壊すとか、直情径行、短気にも程がある……】
【まあ、それだけ心配しておったようじゃしのう】
中央部び赤と青の光がある、その立方体は、母星から射出され宇宙を渡った弾丸型のカプセルを出てから見られなかった、神々の器となる魔具。懐かしさすら感じる姿だ。
※
「―――それでお二人が、今の状況を説明してくれるんですよね?俺は、あの時、死んだ、と思ったのですが。冥府らしき場所で、女神ヘルとも会いましたし」
アルティエールは、何故かゼンの寝るベッドに潜り込み、隣りでさも満足そうにひっついている。
【うむ。それなのじゃがな、お主が行った場所は、正確には冥府ではない。近い場所ではあるが、ヘルがお主を直接ねぎらいたかったのじゃろうて】
【お前は死んでなどおらぬ。この事態は、我等には想定済みの話。だからこそ、女神達から加護を授かったのだ】
「?よく、解らないのですが」
【つまり、お主は、死の直前になると、生命力が回復し、傷ついた魂も治療、補完されるように、蘇生いや再生?死んだ者を蘇らせるのは、自然の理(ことわり)に反しておるからのう。それは出来ぬから、元の健康な状態に戻せる加護が、成されておったのじゃ】
「……あの、物凄いやり方の加護に、そんな意味が……」
やり方に、意味等まるでない。それでも、その事を口に出して、藪蛇をつついたりはしない、賢明な二柱であった。
【これは、一人の人間には、一度しか与えられぬ、しかも女神二柱以上の協力がいる加護で、命に関わるので、ヘルの加護は必須となる】
【幸い、二柱の器となっても大丈夫な関係者がいてくれたので、ノートとヘルになった】
「そうですか。でも、なんで事前に、俺に話してくれなかったのですか?」
【それは、話したら、お主が自分の命を盾にするような、無茶な戦法と取りかねない気性だと、判断したからじゃよ。実際、修行の旅の時、似たような事を、やっておるじゃろ?】
なんでそんな事まで知られているのかと、ゼンは内心しかめっ面になる。
【普通に、魔術強化や魔力容量の増加等もあった。宇宙空間の戦闘では、母星の近くまで来たから余計に、ノートの加護が強まり、追撃戦では機動力が上がった】
【お主は、ヴォイドが、月に落ちる芝居の為に、わざとやられて、と思ったらしいが、そうではないのじゃ】
【うむ。あれも、二段構えの戦術で、本来ヴォイドは、月に戦場を移す偽機神(フェイク・マキナ)と、飛行ユニットの収納空間に隠れ潜むヴォイドがアースティアに向かう、両面作戦を展開するつもりであったのだろう】
「ああ、そういう……」
こちらの戦力の少なさを逆手に取り、完全に裏をかくつもりだったようだ。
【そう。こちらが月で戦闘をしている間に、勝っても負けても、ヴォイドは母星に降下していて、何もかも手遅れになる、と……】
成功していたら、本当に、どうにも手の出し様がなくなっていただろう。
【それが、お主とアルティエールに、飛行ユニットはエンジンをやられ、別軌道へと押しやられた。まさに、向こうにとっては計算違いの事態であっただろうな】
【軌道を収納空間の中から、念動か何かで止めて、軌道修正するのには、かなり手間と時間がかかった筈じゃよ。じゃから、月での戦闘が終わりに使づいたあの時、あの壊れかけた飛行ユニットはやっと、母星近くまで来ていたのじゃが……】
そこでミーミルは、気まずそうに言葉を濁す。
テュールも心なしか、落ち込んでいるような印象を受けた。
【あれは、ヘルの言う通り、儂らの落ち度じゃった。あの時、全ての敵の動きを演算して予測を立て、監視すべきじゃったのに、儂らはまるで観客の様に、お主等の戦闘を見守ってばかりで……いや、見入っていたのじゃろう】
【うむ。かつてない危機、最後の決戦。我等は、その戦いを見惚れていた。見とれていたのだ。自分の役目を忘れた訳ではないが、戦うお主らに肩入れし過ぎて、全体的な戦況を見張り、用心すべき役割に徹し切れていなかった】
「ヘルの言う通り、ってもしかしてあの会話を?」
ゼンが、女神と交わした会話を思い出して尋ねる。
【そうじゃ。自分の声のみ、他の神々にも聞こえるようにしておったのじゃよ。ゼンの声は聞こえなかったが、何を言っているかは大体想像がついた】
【そう思っていたのは、ヘル一人ではなかったからな。我等は、他の神々にも、自分が行っていたら、あのような無様は晒さなかっただろう、と散々な不興を買った】
二柱から、悄然とした印象を受けるのはそのせいなのだろう。
ゼンは、隣りで寝ているアルの髪を、無意識に撫でながら、考え考え言う。
「俺は、その……自分が、生きて帰れず、約束を破ってしまったと思ったから、色々反省して考えていたんですが、それは、神々の配慮で事なきを得ました。
だから、言う訳じゃないんですが、自分達は生きて帰って来れて、頼まれた討伐任務は完遂した。そうですよね?」
【確かに、そうじゃな】
【ああ。この上ない程の成果だと、我は思っておる】
「なら、その上で言うと、もう終わった事だから、不謹慎に思われても大丈夫でしょう」
「俺はこの、星を飛び出して、宇宙で敵を迎え撃つ旅は、全体的には、楽しかったんです」
【??楽しかった、じゃと?】
【それは、どういう意図なのかな】
「戦いの合間合間の時間が長くて、訓練と暇潰しとかする時間も結構あったじゃないですか。で、ミーミルからは知識のうん蓄を聞いたり、テュールから戦士のあるべき姿、心構えなんかも聞いて、アルは基本的に色々と無茶を言って、でも全体的には楽しい旅でした。厳しい戦闘を抜かせば。
俺は、他の神々が来たら、もっと上手くいけたかも、とかの可能性はよく解りませんが、俺はこの四人、と数えると不敬かもしれませんが、ジークいれて五人か。での道中は冒険者の仲間と迷宮(ダンジョン)に潜る時みたいに楽しく、しかも与えられた任務は無事達成出来た。この五人で上手くやって、その成果が出せたんだと、思ってます。
むしろ、俺はまだ、神様不信の、今までの癖が抜けきれてなくて、色々と身勝手な事や、生意気な態度も取っていたと思いますから、やっぱり俺にも問題が沢山あったと思います」
ゼンはただ、思ったままを口にする。
「結果論かもしれませんが、それでも上手くいったのだから、俺はお二人で良かったと思っています。不敬かもしれませんが……」
「お主の周りに、人が集まる意味が解るのう……」
アルは、ゼンに撫でられる心地よさに眼を細めながら笑う。
「え?あ、ごめん!ミンシャがよく隣りに潜り込んでた時、そうしてたから……」
「だーっ!わしを撫でておるのに、別の女の名前を出すではない!そういうとこが、お主の無神経なところじゃ!」
「……あー、うん、ごめん」
ゼンとアルが茶番を演じるのを見ながら、二柱の神は、どうやら自分達は慰められた、あるいは、道中の全てが認められた、そんな気がしてしまう。
<やはり、余り女神達を接触させない方がいいな……。我は今どうも、喜んでしまっているらしい。人の子に言われた、ただそれだけの事で……>
<同意じゃのう。その生まれだから、なだけでなく、神たらしの素質まであるらしい。末恐ろしい子じゃよ>
二柱は、神のみ聞こえる念話で、確かに、それなりに楽しかったのかもしれない、と思ってしまう自分達の戸惑いを隠せないでいたのであった。
*******
オマケ
ゾ「いやぁ~、主がいない時は、正直生きた心地がしなかったな。自分達が無事なら、主もだって分かっちゃいたけどよ」
セ「そうですね。主様は、ボク達にとって、本当に必要不可欠な存在ですから。主人がどうの、以前に……」
ガ「完全同意」
ボ「育てて貰って、親も同然で、主様で、とっても大事な人だものね」
ル「るーもそうだお!」
4人「「「「良かった良かった」」」」
ル「とっても、良かったんだお!」
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