6 / 16
第1章 魔の森編
006. 修行の日々(5)
しおりを挟む※
はぁはぁと、ゼンは激しく荒い息をつき、手を握らずに、だが伸ばさずに、手の指は中途な位置で止めて、柔らかく構えている。
殴る正拳、手刀で攻撃する、どちらにでも瞬時に対応出来る様にしているのだ。それに、手刀でもピンと伸ばさずに打ち込む方が、威力が強く、打ち込む手。自体への衝撃も緩和するのだとラザンから教わっていた。
無手の組手を始めてから、軽く小一時間は経過していた。
すでにゼンの全身各所は、痣だらけで酷い状態だった。
ラザンの攻撃が速過ぎて、まともな防御が出来ないからだ。
それでもラザンは、恐ろしく手加減をしている。身体強化は当然使っていない。力も入れていない。軽く流している。それでも圧倒的な地力の差がある。
仕方のない事だが、適当男なラザンは、加減など下手で苦手。そもそも、人に剣術を教えた事等少しもないので、手加減して攻撃するのすら、闘技会で多少やった位が関の山。人に物を教える者として、絶対的に経験不足なのだ。
そのラザンの攻撃は、防御がそもそも無駄なので、ゼンは回避、避ける事に専念していたが、それで避けられる訳でもなく、攻撃もしろ、と言われ、その岩の様に頑強な身体に、見よう見まねの蹴りや、拳を繰り出すのだが、ダメージにすらなっていない。
殴る手、蹴る脚の方がよっぽど痛い。頑強な鉱石の岩に、思いっきり手加減無しの一撃を叩き込む様な物だ。攻撃をしたくなくなる。大木でも攻撃する方がまだ楽だった。
ゼンは、ハッキリとそれを口にする。
「ん~~~?ま、しゃーねぇわな。じゃあ、俺の動きを見て、ともかく覚える事だ。俺も出来るだけ、力を抜くからよ」
と、本人はかなり加減したつもりの、遅い蹴りや、手刀でゼンに対して攻撃するのだが、とにかく見えない。速過ぎて、勘でゼンは飛びのいたり、腕で防御(ガード)したりするのだが、受けた場合、ハッキリ言って一撃で吹き飛ぶ。
面白い様に吹き飛び、周囲に生えている藪や木にぶち当たってやっと止まる。
ゼンは、攻撃された瞬間、自分でもその威力に逆らわずに、同じ向きに飛び退るのだが、まるで足りていないので、結局は吹き飛ぶ。それでも、その攻撃の威力の何割かは軽減している筈だが、ダメージがきついので、もうよく分からないでいた。
打たれ過ぎて身体のあちこち、痛まない場所など一つもないのだが、ラザンはすぐに立て、と催促して来る。
ゼンは黙って立ち上がり、荒い呼吸を吐きながら、朦朧とした意識の中で、それでもラザンの攻撃を、見て、覚えて、躱そうとする。
むしろ、意識が朦朧としてからの方が、本能的な、死から逃れる為の、緊急回避的な動きとなり、多少なりともラザンの攻撃から逃れていた。
ほう、と感心してから攻撃の速度を上げるのが、意味不明に負けず嫌いで考え無しな、ラザンらしい行動なのだが、その蹴りを流石に避け切れず、ゼンは両腕で防御した、その腕をへし折られながら、また林の中へと吹き飛んで行った……。
「あ、やっちまった……」
片手で顔を押さえ、しかめっ面をするが、それでやった事がなしになる訳でもなく、吹き飛んだ先に捜しに行けば、林の木々の枝がクッションとなり、そこにからまって、腕の骨が直角に折れて気絶しているゼンが、壊れた人形の様に、無残な醜態を晒していた。
首が折れたりして、致命傷になってはいなかったのが、不幸中の幸いだった。
※
ゼンが気が付くと、全身に濡れた感触がある。気絶した間に、ポ-ションをかけられたらしい。ジンジンとまだ熱い感覚がする。ポ-ションの効果でまだ治っている途中なのかもしれない。
折れた、と受けた時の感覚で分かっていた腕も元に戻っている。ただ、まだ少し痛みでビリビリ震える感覚があった。
「気が付いたなら、残りも飲んでおけ」
テントの近くに座っていたラザンは、目敏くゼンの意識が戻ったのに気が付き、ゼンに声をかける。
出会った時の組手でも、似た様な感じになったな、とラザンはノンビリ考える。
ゼンは、自分の脇に半分以上減ったポ-ションの瓶を見て、それを手に取り、残りをゆっくり飲み干した。
まだ動かすと、手も全身も鋭く痛んだが、それを無視して身体を動かす。
「……すみません。ちゃんと防御出来なくて……」
自分の無様さに落胆して頭を下げるゼンを、ラザンは奇妙な目で見る。
「謝る必要はねぇーよ。俺が力を込め過ぎたからな。こちらの手違いだ。俺の方が悪かったよ。
だがしかし、そのすぐ卑屈になる癖は、直した方がいいぞ」
「はぁ……」
ゼンは、自分がスラム育ちで、最底辺の身分である事への自覚を強くもち過ぎていた。
その事自体は事実だが、だからと言って、何でも下手に出ていればいいものでもない。人間とは、相手が弱い者だと知るとむしろつけ上がり、傲慢な態度に出る者も多いのだ。
それにラザンは、根っからの戦士だ。身分や生まれの出の卑しさ等、戦って勝ち取り、のし上がるものとしか思っていない。
それで尊大な態度を取れ、という意味ではないが、ゼンの遠慮ばかりする姿勢を余りいいものとは思っていなかった。どうも、性格上の問題故か、矯正するのが中々難しそうなのだが。
「……まあ、ともかく。日が低くなって来た。少し早いが、今日の鍛錬はこれまでとする」
「え?その……、俺は、まだ出来ますけど?」
ゼンの遠慮がちではあるが、強情に食い下がる態度に、ラザンは大きく溜息をつく。
「まだ回復し切ってなねぇーだろーが。お前が少しでも早く強くなりたい、と思う気持ちは分からんでもないが、休息を取れる時に取る。その見極めだって大事なんだぜ。
別に焦らんでも、修行はいくらでも厳しくしてやる。その内、夜の魔物の増強度なんかも体感させてやるが、今はまだ早い。
メシの支度(したく)と、自主練でもしててくれや」
すでにラザンは、酒の入った徳利(とっくり)と呼ばれる壺を出し、くつろぎ体勢(モード)に入っている。ゼンが何を言おうと無駄だろう。
「はい、師匠……」
ゼンは頭を下げ、自分のテントの方へ行こうとしたが、思い直してまたラザンの近くへと来る。
「師匠、その……相談、があるんですが……」
「?なんだなんだ、深刻そうな顔をして。俺に出来る事なんざ、大してねぇーぞ」
ラザンは暗い顔をするゼンを茶化す様に、ヘラヘラと笑ってみせる。
「あの……、精神鍛錬ってありますよね。それで、自分の悪い記憶とかを、封じ込める事って、出来ないんでしょうか?」
「なんだ、お前、フェルズでなんぞ悪事でも働いたのか?しかし、その記憶を失くしても、お前がやった事が消えてなくなったりはせんぞ?」
「あ、そうじゃないんです。その、自分の暗い衝動、悪い事をしそうになる、そういうのを、封印出来たら、って思って……」
「ふむ?ますます分からんな。自分が悪事をしてしまいそうになる、その原因になる記憶を封じたいって事か?」
「……そんな感じです」
ゼンは小さく頷く。
「ふん。だがな、ゼン。それが辛い記憶、苦しい記憶なら、それを抱えて、乗り越える事の方が、精神を強くする事になるんだが、それじゃ駄目なのか?」
「……ちょっと違います。具体的に話せない、話したくない事なんですが、辛い、悲しい記憶じゃないんです。むしろ逆、みたいな……」
ゼンの悲痛な顔付を見て、流石にそれを無下に出来る程、ラザンは極悪人ではなかった。
「う~~~ん。まあ確かに、自己暗示で自分の記憶の一部を封じ込めたりする事は、出来なくもないが、それは、本当に失くしてもいい“もの”、“大事な記憶”じゃないのか?」
「……いいんです。無くなった方が……」
ゼンはまるで、泣きだす一歩手前の様に悲壮で悲痛だった。
この、スラム育ちとは言え、そうとは思えない程に素直で、彼と泣いて別れを惜しむ者がいる様な純朴な少年に、一体何故、封じてしまいたい程の思い出、記憶があるのか、流石のラザンでも見通せはしない。
「……まあいい。丁度明日から、“気”の鍛錬も始めようと思っていた所だ。ある程度、身体強化を使える様になってもらわんと、まともな組手も出来んようだったからな」
「あ、はい。それじゃあ!」
ゼンの表情が、一転して明るいものとなる。
「ああ。“気”が使える様になれば、その自己暗示法も、出来る様になる。やり方も、ちゃんと教えてやるから、早まって勝手な事するなよ。素人の生兵法は大怪我の元、って言ってな」
「生、びょーほぅー?」
「俺の国のことわざだ。深く気にするな。要するに、やり方を覚えるまで、下手なやり方をするなって事だよ」
「分かりました!」
封印法が覚えられる、解決出来ると分かってか、先程とは打って変わって、軽い足取りでテントへと戻るゼン。
「……人には人の、事情がある、ってか」
それをすがめた目で眺めながら、酒を口にするラザンだった。
※
魔の森にこもり、修行にいそしむ二人。
ところで、今この二人は、お互いに隠し事があり、微妙に悩み合った状態だった。
ゼンは、先程の封じる記憶の事だけでなく、自分が抱える“事情”について。
その事は、ゴウセルがラザンに話したのではないか、と思っていたのだが、あの短い時間では、詳しい話は出来なかったであろう。
しかし、ゴウセルはラザンに、ゼンの事に対する、長い手紙を渡していた。それに必ず、ゼンの“事情”は書かれていた筈なのだが、どうもラザンは、それを適当に流し読んだだけで、ゼンが気にする“事情”の意味も内容も把握してない様に思われた。
今までの旅の途中での言動からも、それは伺えた。
ならば、ゼンは自分の口からそれをラザンに伝えるか、手紙にその事が書かれている事を伝え、もう一度読み直す事をお願いするだけでも良かったのだが、ゼンはそこでためらってしまう。
もし“あの事”を知り、ラザンが自分を、『流水』の修行をするに値しない者だと判断され、フェルズに戻れ、と言い渡されてしまったら、どうしようか、と。
ラザンの破天荒で予想のつかない、ハチャメチャな性格を知る内に、そんな可能性が少なくない。充分あり得る事だと、ゼンは理解してしまっていた。
だから恐れ、躊躇ってしまうのだ。
隠していても、いずれ絶対に気付かれてしまう事だと言うのに……。
一方のラザンの隠し事は、ゼンの修行に対する心構え、『流水』を習得しようとするに対して、避けては通れぬ修行法について、だ。
ゼンは、今でも充分厳しい修行をしている。
だが少年が成長し、強くなればなる程に、修行は過酷さを増し、常識では考えられない様な領域へと達する。
『流水』とは、それ程に特殊な剣術なのだ。
最終的に、精神的な“死”、肉体的な“死”に近い試練を乗り越えなければ、『流水』を完全に習得する事は叶わないだろう。
生きて仲間の元に、フェルズに帰還する事を夢見る少年に、“死ぬ”覚悟を強制する。
それは、無頓着で無神経なラザンでも、かなり躊躇し、言い辛い話なのだ。
すでに、ゼンと知り合ってから、一カ月以上、二カ月近く経っている。
その間に、素直でひた向きな弟子に、少なからず情が湧いてしまっている。
ラザン自身、それは思ってもいなかった程に強く。
何もかも失くし、流れ流れてついた地で、全てがどうでもいい、と投げ槍に惰性で生きていた。
その時その場所で、自分で途絶えると思われた『流水』を、継いでくれるかもしれない人材に出会えた。それは奇跡に近い。
自国でも、百人を超え、千人近く、優秀な子供を集められても、その内の2~3人がやっと、生きて『流水』を習得するに至るが、それでも完全に、ではない。
大体が、不完全な『流水』の真似事になる。
それでも彼等は、次代へと技を繋げる為に、師範代となり少しでも『流水』の技術を残そうと、悪戦苦闘してきた歴史がある。
ラザン自身、自分が『流水』の源流となる技術の何処まで覚えられたか、分かっていない。すでにそれを判断する上の者が存在しない今、分かり様がないのだ。
それでも、修行中の事故により瀕死になった経験と、一門全て、自分の妹すら殺され、恋人と思っていた女性に裏切られたラザンは、精神的な“死”をもその時に経験し、『流水』の剣士、呼べる存在まで昇華した。
それは、その時その時代、周囲を取り巻く事象の成り行きによって、偶然なされた事に過ぎない。
そもそも精神的な“死”とは、そんな具体的に、何かを失って成される様な試練ではなかったのだが、ラザンの場合はそういう成り行きで、『流水』習得の試練、壁を超えたのだ。
ゼンに課す修行で、どこまでその試練を出来得るか、ゼンがそれに耐え得るのか、ラザンにも予想がつかない。
自分は、“いつのまにか”そうなっていたのだ。
まさか、それを再現する訳にもいかない。
フェルズに戻って、ゼンの親しい者を目の前で斬り殺す?
そんな事をしても、単に恨みを買い、復讐に燃える狂戦士を生み出すだけになる可能性の方が高い。
精神的な“死”の試練とは、実際はそんな安易な物ではなかった。
だからこそ、ラザンをその壁を超えられずに行きづまったのだから。
ゼンの場合、どうするべきなのか、ない頭を悩ますラザンなのであった。
*******************
オマケ劇場
ミ「Zzzzz……」
リ「……先輩先輩、起きて下さい。始まりましたよ」
ミ「は!待ちくたびれて、眠ってしまったですの」
(口元のヨダレふきふき)
リ「まあ、気持ちは分かりますけどね」
ミ「でも、内容はちゃんと把握してますですの!ご主人様、お可哀想に!おいたわしや、ですの」
リ「まだ剣術を習い始めたばかりですし、仕方ない事ですけど、厳しい修行の場面はきついですね」
ミ「そうですの!アタシ達が中にいる時もずっと修行で、手出し厳禁無用、と言い渡されてましたから、凄くきつかったですの!」
リ「そこまでいってないのに、このありさまですから、本当に辛いですね……」
ミ「まったくですの!」
セ「なんだかんだ、主様の事だと仲いいですね、あの二人」
ゾ「ま、好きな男で主だからな。その苦境をいがみ合ってちゃ見れねーだろうさ」
ボ「うんうん。他人事じゃないからね」
ガ「同意……」
ル「おー!主さま、るーと同じ、まだ雛だからくろーしてるんだお?」
セ「そうだね。誰でも、雛、子供の時があるからね」
ゾ「それが、たった二年半で、俺を負かす剣士になるんだから、凄いの一言に尽きるな」
ボ「……ゼン様、偉い」
ガ「……同意。偉業也」
ル「るーも、主さまに負けず、ガンバル、おー!」
三者「「「はいはい」」」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる