死神に拾われた少女は、世界の魂を救う運命だった

Saku.

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死神との出会い

雪の森で見つかった少女

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雪は、静かに降り積もっていた。
世界の輪郭をすべて白に染め上げるような、重い静寂の雪だった。

その中を、一つの黒い影が歩いていた。
人の形をしているが、人ではない。
外套の裾が風に揺れるたび、雪片が黒い布に吸い込まれていく。

影の名は——死神。

今日、死神には特別な仕事はなかった。
ただ、胸にひっかかる“ざわつき”の正体を探すように、森へ足を運んでいた。

死神は本来、感情など持たない。
喜びも怒りも悲しみもないはずだった。

けれどなぜか胸の奥で、針の先のような違和感が動いていた。

――呼ばれている?

そんなはずはない。
死神が人間に「呼ばれる」など、あってはならないことだ。

だが足は、雪深い森の奥へと勝手に進み続ける。

雪の匂いが濃くなった頃だった。

視界の白の中に、わずかな“違和感”があった。
黒ではない。
血の色でもない。

——小さな身体。

倒れている少女だった。

死神は雪を払いながら近づき、そっと覗き込んだ。
まだ十にも満たないほどの幼さ。
服は薄く、痣のような跡が袖口から覗いている。

通常なら、死にゆく魂は淡い光として現れる。
だがこの少女は違った。

透明な結晶のように、魂の輪郭がはっきり見える。

「……強い魂だな」

死神は、思わず漏らす。
人間で、これほどの魂を持つ者は滅多にいない。

死神の胸のざわつきが、強く響いた。
理由はまだわからない。

本来ならば、関わるべきではない。
死神は人間を助けてはならない。

それでも。

「……放っておけという方が無理だな」

死神は少女を抱き上げた。
その体は驚くほど軽い。
雪の冷たさが、肌を刺すように伝わってくる。

一歩、歩き出したその瞬間。

少女の指が、死神の外套をかすかに掴んだ。

「……ぁ……たし……」

凍えた声が、途切れ途切れに零れる。

「……死に……たく……ない……」

死神は足を止めた。

その言葉は、雪よりも静かで、
それでいて刃物より鋭く胸に刺さった。

“死にたくない”。
そう思えるのは、生に向かう強い意志がある証だ。

死神はしばらく少女の顔を見つめ、静かに言葉を返した。

「大丈夫だ。まだ、お前は死んでいない」

少女の瞼は重そうに震え、もう一度だけ声を搾り出した。

「……にぃ……ちゃ……」

死神の胸が一瞬だけ熱を持ったように錯覚する。

だが少女はそのまま意識を失った。

雪は降り続ける。
静かで、冷たくて、どこか哀しい雪だった。

死神は少女を抱き直し、森を後にした。

——この出会いが、世界の運命を揺さぶるとも知らずに。
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