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第46話
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綿里さんは伝播町のアパートで暮らし始めたそうだ。
ときどき、綿里さんにアパートへ遊びに来ないか、と誘われるのだが、さすがに女性の部屋にズカズカと入るわけにもいかないって思って断った。
帰りは綿里さんのアパートへ寄ることが日常になってきており、月子とは帰らなくなってしまった。
なにか重大な過ちを犯している気分になる――なぜかは知らないけど。
ただ、いずれ、もとの関係に戻らなきゃいけないよな、って思う。
僕は月子を優先すべきである、というのは、わかっているのだ。
だけど、昔話に花が咲いてしまった。
ただ、それだけなんだ。
確かに綿里さんはニ年間、同じ小学校にいて、意識していたこともあったんだけど、今、最も優先すべきことはなんだ?
せっかく月子と一緒に帰るようになったんだから、月子を優先すべきだろう。
――なら……こうするのは、どうだろうか……。
*
太陽の日照りに身を焦がす、暑い季節になってきた。
《影》は相変わらずS市で、それなりに発見されている。
あくまで《第三の組織》のセンサーには、だが。
だから《影》に関しては問題ない。
けど、萌瑠のいう刺客が、まだ来ていない。
いつ来るか、わからない刺客への対処を、いつまで緊張しながら待っていないといけないのか……。
ただ、確実に言えることは……誰かと一緒に帰れば、その心配はないということだ。
だから――。
「綿里さん、月子、今日は一緒に帰ろう?」
「えっ?」
……と、言ったのは月子である。
「でも、悪いよ……昔からの、友人……なんでしょ?」
「そういう意味では月子も同じだ。そういえば、お互い僕の友達なのに自己紹介しないのはマズいなあって思ってさ」
僕は綿里さんのほうを見る。
「ね、綿里さん……綿里さんだって気にしてたんだろ?」
「確かに友達がいない、というのは、ちょっと、ありえないとは思っていたけど、いて安心しましたよ。わたしだけの神憑くんじゃなかったんですね」
わたしだけの……か。
ちょっと、その言い方には引っかかりがあるけど、まあ、よしとしよう…………なにに対してだろ?
「……と、いうことで自己紹介しながら帰ろうか」
*
綿里さんと月子が一緒に帰っている。
それだけでも僕的には少し安心だ。
正直、僕に対してイライラする月子は見ていられなかった。
だから、これでいいんだ。
「布佐良月子です。綿里さんが転校してきてから結構、時間が経っているのに自己紹介が遅れてごめんなさい」
「いいよ。わたしも神憑くんの昔からの友達がいるとは思ってなかったし。よろしくね、布佐良さん」
これが始まりだ。
まだ友達でいい。
じゃないと関係が改善することはない。
少しずつ関係を構築できれば――。
「ところで神憑くんと布佐良さんは、どういう関係なの?」
「どういう関係って、ほら、いったじゃん……昔からの友達……幼馴染だって」
「へえ……」
綿里さんの冷たい目を感じてしまう……というか、どうして、そう思うのだろう。
「じゃあ、そうだね……今日は神憑くんの家にお邪魔しようかな」
「は?」
どういう、ことだ……綿里さん?
「だって、もうバスに乗っているし」
これは、どうしたらいいんだ……?
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