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第56話
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「尼城さん」
一回だけノックした。
「尼城さん、神憑です。神憑武尊です!」
さらに二回、ノックする。
「入りますよ!」
待ってはいられなかった。
「ああ、キミか」
「お久しぶりです、尼城さん」
「キミは、この《機関》を裏切ったはずだが……」
「それは、あたしが説明します」
萌瑠が僕らの間に入る。
「神憑は心野友代と名乗る《影》を庇ったことにより、《機関》を裏切ったと、あたしが勝手に判断しました。ですが、実際は、その心野友代という《影》は今のところ、人間に危害を加えていないようなのです。危害を加える存在なら神憑は、いないでしょう」
「だが、第一の刺客として向かわせた綿里未雪くんの存在が消滅しているのは、どういうことかな?」
「この映像を観てください」
空気でできた空中に映る仮想のモニターに映像が流れる。
「これは綿里を襲ったヴィジョン・マインディングという存在です」
「なるほど。話には聞いていたが、その存在は確かに脅威だ」
「知っているんですか?」
僕の問いかけに尼城さんは答える。
「ああ、おそらく、それは《影の女王》と呼ばれる存在だろう」
「《影の女王》……?」
「《影》のなかには《影》を生み出す存在がいる。それが《影の王》と《影の女王》だ」
「《影の王》もいるんだ……。その王と女王が《影》を生み出す存在ってことは、その存在を倒せば、《影》は生まれなくなるってことですか?」
「そうだ。その尻尾を今、我々はつかもうとしている」
「でも、そんな存在が、これから、また現れるでしょうか?」
「そうだな。キミが知っている、この映像、なにか違和感がないか?」
「違和感……ですか?」
「言ってしまうとな、そのヴィジョン・マインディングは綿里くんに怒りをぶつけている」
「怒りを、ぶつける?」
「嫉妬を感じるんだよ、彼女からは。要は綿里くんに嫉妬して憤怒の感情をぶつけ、殺してしまったんだ」
「…………そんな。じゃあ、綿里さんは、そもそも、このI県に来るべきじゃなかったんだ! どうして連れてきたんですか!」
「彼女はキミをなんとかしたかったみたいだよ」
「僕、を……?」
「彼女もキミを愛していたんだ」
「…………それって」
「普通に考えたら、一年、留年してまで小学校の同級生の学校にまで転校するなんて、ありえないよ」
「ありえない、ですかね? 彼女は伝播大学へ行くためと言っていましたが……」
「嘘、だね。普通だったら、そこまでしてキミの学校へわざわざ来ないよ。伝播大学へ行きたいは方便さ」
「彼女は僕を殺すつもりで戦いに来たんじゃないのですか? だったら、あの戦いは、まったくの無意味です」
「確かに、な。だけど、彼女は自分の力で神憑くんをどうにかしたかった想いもあるんじゃないかな……?」
「それは…………」
なにも言えなかった。
僕は、もう二度と彼女から真実の言葉を聞く機会なんて、ないのだから。
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