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第65話
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《妄想具現症》――発症した患者に共通する症状は思考、行動、感情がまとまらなくなってしまうことであり、それは大脳の疲弊によって妄想が具現化するという病である。
妄想の具現化――それは《妄想具現症》の患者にしか見えない幻のヴィジョンであったり、幻の音だったりが聞こえてしまうことだ。
だが、その《妄想具現症》がどうだというのだ?
ヴィジョン・マインディングは、なにが言いたいんだ?
彼女らが作ったって、どういうことだ?
「選ばれし存在を隠匿するために作った病が《妄想具現症》という名称の病だった。このような神域を確認できる存在が《妄想具現症》の患者であるということを隠すために」
「隠す……だと?」
「本当は《妄想具現症》という病は神憑武尊という名も無き太陽神の転生した存在であることを隠すために作られたデタラメな病であることを――神憑武尊だけに知られないために作られた病であることを――このS市民だけは知っている」
「名も無き太陽神の転生した存在……なんのことだ?」
「キミが入院していた場所は伝播大学附属病院だ。その閉鎖空間にキミは隔離されていた。それを彼女らは知っている。特に、そこにいる椎菜爽芽は自らを《妄想具現症》患者であると嘘をつき、キミに近づいた」
「椎菜さんが患者じゃない……?」
「それは嘘だよ! 信じないで! 所詮《影》の言うことだ!」
椎菜さんが必死に訴えるが。
「だとしても、じゃあ、なんのために僕たちは戦っているんだ?」
「《影》は、あたしたちの見えないところで人々を殺している! それを守るために、あたしたち《機関》の人間が存在しているのです!」
萌瑠も必死に僕を説得しようとしているが。
「なんで《影の女王》であるヴィジョン・マインディングが僕のことを、そんなに……」
「それはキミの幼馴染だからに決まってるんじゃん!」
「幼馴染……!?」
やっぱり――。
「《影の女王》だったのか!? 月子が!?」
「……そうでもあるし、そうでもない。キミの言う月子は布佐良月子のことだろう?」
「はっきり言えよ月子! どうして《影の女王》なんかになっているんだ!?」
「私は布佐良月子であって、布佐良月子ではない。なぜなら私は彼女の《影》だからだ」
「月子の《影》だって……?」
「そう、私は布佐良月子の無意識に存在する《影》なのさ。なにが言いたいか、わかるか?」
「つまり、月子は知らないってこと?」
「御名答! 月子は無意識で私に怒りのエネルギーをぶつけてくれる。だから、あのとき綿里未雪を消滅させようとした瞬間、自覚なく人殺しをしたのだ」
「どうすれば、月子は、もとに戻るんだ!?」
「どうもしない。もともと、そうだったんだ。私を倒すことは、私と月子のなにかを失うことになる」
「つまり、なにをすれば……」
「答えは見えているはずだ」
彼女は笑って。
「私の死は月子の死だ」
《妄想具現症》――発症した患者に共通する症状は思考、行動、感情がまとまらなくなってしまうことであり、それは大脳の疲弊によって妄想が具現化するという病である。
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だが、その《妄想具現症》がどうだというのだ?
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彼女らが作ったって、どういうことだ?
「選ばれし存在を隠匿するために作った病が《妄想具現症》という名称の病だった。このような神域を確認できる存在が《妄想具現症》の患者であるということを隠すために」
「隠す……だと?」
「本当は《妄想具現症》という病は神憑武尊という名も無き太陽神の転生した存在であることを隠すために作られたデタラメな病であることを――神憑武尊だけに知られないために作られた病であることを――このS市民だけは知っている」
「名も無き太陽神の転生した存在……なんのことだ?」
「キミが入院していた場所は伝播大学附属病院だ。その閉鎖空間にキミは隔離されていた。それを彼女らは知っている。特に、そこにいる椎菜爽芽は自らを《妄想具現症》患者であると嘘をつき、キミに近づいた」
「椎菜さんが患者じゃない……?」
「それは嘘だよ! 信じないで! 所詮《影》の言うことだ!」
椎菜さんが必死に訴えるが。
「だとしても、じゃあ、なんのために僕たちは戦っているんだ?」
「《影》は、あたしたちの見えないところで人々を殺している! それを守るために、あたしたち《機関》の人間が存在しているのです!」
萌瑠も必死に僕を説得しようとしているが。
「なんで《影の女王》であるヴィジョン・マインディングが僕のことを、そんなに……」
「それはキミの幼馴染だからに決まってるんじゃん!」
「幼馴染……!?」
やっぱり――。
「《影の女王》だったのか!? 月子が!?」
「……そうでもあるし、そうでもない。キミの言う月子は布佐良月子のことだろう?」
「はっきり言えよ月子! どうして《影の女王》なんかになっているんだ!?」
「私は布佐良月子であって、布佐良月子ではない。なぜなら私は彼女の《影》だからだ」
「月子の《影》だって……?」
「そう、私は布佐良月子の無意識に存在する《影》なのさ。なにが言いたいか、わかるか?」
「つまり、月子は知らないってこと?」
「御名答! 月子は無意識で私に怒りのエネルギーをぶつけてくれる。だから、あのとき綿里未雪を消滅させようとした瞬間、自覚なく人殺しをしたのだ」
「どうすれば、月子は、もとに戻るんだ!?」
「どうもしない。もともと、そうだったんだ。私を倒すことは、私と月子のなにかを失うことになる」
「つまり、なにをすれば……」
「答えは見えているはずだ」
彼女は笑って。
「私の死は月子の死だ」
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