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第70話
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そう、僕が信じていた世界は存在していなかった。
《彼女》――神憑桜舞との《存在しない物語》が今、ここで終わった。
「《存在しない物語》は、あなたのなかでは《存在する物語》になる。わたしにはアマテラスの、ヴィジョンにはツクヨミの、友代にはスサノオの役割があった」
桜舞は《存在しない物語》について述べていく。
「名も無き太陽神とは対になる名の有る太陽神であるアマテラスは、あなたの精神のなかで力をためるための蓄積をおこなっていた。だから、わたしにはアマテラスの役割がある。誰にも見えない《ひきこもり》として」
「つまり、桜舞は《存在しない物語》においても存在していなかったということか」
「わたしは、あの世界には存在しない存在だった。もともと、あなたの妹ですらなかった。わたしはあなたであり、あなたはわたしだった。桜舞という名前の秘密に気づいていますよね?」
「桜舞はMY……僕の、という意味になる。桜舞は僕の一部であり、僕のなかの神話であるミィエル・ウィースとして顕現するはずだった。ミラ・ウィースと対になる存在として」
「対になる存在って妻って意味でしょ?」
「それを言うのは恥ずかしいから言いたくなかった」
「でも、わたしは所詮、妄想の存在ですよ」
「認めたくなかったんだ。《本当に好きな人》が血縁関係だってことをね」
「妄想の存在だから本当の意味で血縁関係ではないですけどね」
「本当の僕はキミを愛していた。キミが存在しないラブコメを、信じられない病人たちの物語を、キミのいない僕らのバトルラブストーリーを、ずっとキミがいない、キミのいない物語の世界で、キミを求めていたんだ」
「布佐良月子と筬屋真海奈が聞いたら泣きますよ」
「彼女たちも僕の物語のなかに存在していた存在で、もともとは存在していなかった。火花萌瑠も、綿里未雪も、椎菜爽芽も、矢林御琴も、《機関》のリーダーである尼城空至も、月子の《影》であるヴィジョン・マインディングも、真海奈を吸収した《影》である心野友代だって、みんな僕の《存在しない物語》に存在していたんだ」
「布佐良月子と筬屋真海奈……ふたりは、それぞれ順にツクヨミとスサノオの因子を持っていました。その《影》であるヴィジョン・マインディングと心野友代がツクヨミとスサノオを顕現する力を持っていた」
「そして僕は、その《影》である、ふたりを吸収した。僕のなかにある桜舞のアマテラスと合わさり、この世界となった。三貴子であるアマテラス、ツクヨミ、スサノオは神格により、世界を創る力がある」
「だけど、結局、それも妄想だった。この世界には《妄想具現症》という病は存在しない。別の理由での入院なのでしょうね」
「だったら、ここから早くでなければいけない。でも、もう桜舞は、この世界に顕現できないのだろう?」
「でも、わたしは、あなたの……兄さんの心のなかに残り続けます。だから、いつでも妄想による世界改変をおこなうことができます。もう、ヴィジョンも、友代も、あなたのなかに存在します。本当の敵は、まだ登場していませんよ」
「《影の女王》であるヴィジョン・マインディングは吸収したけど、まだ残っている」
「そう、まだ……《彼》がいる」
「真の敵である《影の王》が、まだ残っているんだ」
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