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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
26.おこ
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ブランカの現状に、ゴズメルは考えさせられてしまった。
(……ブランカ、これからどうするんだろう。まず医者を変えるべきだよな。キースが臭いってんなら、それもなんとかしなきゃいけないんだろうけど……)
ミックが買取に色をつけてくれたおかげで、懐は温かい。
夜の市場通りは屋台に灯がともり、美味しそうなにおいがそこら中に漂う。
商人には掻き入れどき、勤め人には一日のご褒美の時間なのだ。道行く人々もほろ酔いの様子で、笑い声をあげている。魔道具屋やブティックに吸い込まれていく人も多い。
いつものゴズメルなら、陽気に乗せられて一杯飲んでいくところだったかもしれない。だが今は、とてもそんな気分になれなかった。金があっても避けられない不幸があることを知ってしまったのだ。
(なんの幸せも保証できないのに、結婚してくれなんて、リリィに言えないよ……)
ブランカを見ていてゴズメルは、もしこれがリリィだったら、リリィがこんなつらい思いをしたらと、何度も考えてしまった。
ずっと体調が悪いのに、誰にも助けてもらえないリリィ。なにを食べても吐き戻してしまうリリィ。
本当は嫌なのに涙をこらえて医者の診察を受けるリリィを思うと、ゴズメルは頭の中で医者をぶち殺さずにはいられなかった。あまりにもかわいそうすぎる。
妖精族は卵生なのでブランカとはだいぶ勝手が違うだろうが、もしもを想像しただけで気が狂いそうだ。リリィをそんな目に遭わせるくらいなら、自分が妊娠したほうがマシだ。でもそれも嫌だ……。
(ああ、もう……よくわかった……)
ゴズメルは大股で冒険者協会に向かって歩き出した。
(あたしは結婚なんて一生しなくていい。偽卵を手に入れて、今のまま、リリィと安心して愛し合えればそれで十分なんだ。愛し合って結婚するのに、結婚したせいで愛を失うなんて、そんなの耐えられないよ……)
冒険者協会は、急な依頼にも対応できるよう夜間も開いている。窓口に立つのは夜行性スキル持ちの受付嬢だ。
ゴズメルは馴染みのないコウモリ族の受付嬢に、鐵刑の塔の許可証を発行してもらった。
朝一番のトロバスに乗って、ジーニョに注文をすればポップル行きにも間に合うだろう。
「あーっ、ゴズメルさん。待ってください」
帰ろうとした時、トタタタと駆け寄ってきたのはナナだった。ゴズメルは目を丸くした。
「ナナ! あんた新人なのに、こんな遅くまで働いていいのかい」
「頼んだら、研修がてら夜番に入れてもらえました……」
猫族は夜行性スキル持ちだが、ナナは朝から通しで入っている。実際、眠そうだ。
ゴズメルの心配をよそに、ナナはにやにやと猫らしく笑った。
「知ってますか、ゴズメルさん、夜番って手が空いているときは寝てもいいし、夜食ももらえるんですよ……えへへ、時給もいいし、先輩も優しいし、まるで夢のようです……むにゃむにゃ」
「おい、しっかりしろ、ナナ」
手が空いていない時は寝るなという意味だ。立ったまま寝ようとするナナを、ゴズメルは揺すって起こした。
ナナの先輩にあたるコウモリ族の受付嬢が、さっきからこっちを見ているのだ。
夢の中で優しい先輩が、現実でも優しいとは限らない。
シラヌイから家が貧しいとは聞いていたが、そんなに金に困っているのだろうか。
心配するゴズメルをよそに、ナナはぶるぶるっと体を振るって覚醒した。
「失礼しました。お約束の返事を渡せると思って声をかけたんです」
「約束? 返事?」
「ゴズメルさん、しっかりしてください」
今度はゴズメルが注意される番だった。
「リリィ先輩に気持ちを聞いてくるよう、私に依頼したのはゴズメルさんじゃないですか」
「あ……えっ、ごめん。ナナ、もしかして、あたしにそれを伝えるために残ってたってこと?」
すっかり忘れていた。戻ってこないかもしれない自分を、ナナはシフトを操作してまで待っていたのだ。
「おかげで夜番もやらせてもらえて、ラッキーでした」
ナナの言葉は皮肉ではなかった。冒険者との口約束を大切にして、彼女はここにいるのだ。
ゴズメルは尊崇の念に打たれた。
「ナナ、あんたって本当に偉いねえ。遅くまで待たせちまって本当にごめんよ」
「えへへ……いえ……実は、リリィ先輩が深刻なご様子だったので、早くにお伝えしたほうがいいと思ったのです」
「えっ!? どういうこと」
仰天するゴズメルの前で、ナナは申し訳なさそうに両手を擦り合わせた。
「……お昼休憩の時、私はリリィ先輩とお話をしました。ゴズメルさんが戻って来ないことを、先輩が気にしている様子だったので、ちょうどいいと思って、依頼された件を伝えたのです。そしたら、先輩が怒ってしまって」
「お、怒っ……!?」
ゴズメルは自分の言ったことを反芻した。
リリィとケンカなんてしてないよ。向こうにも聞いてみて。でも、もし嫌いだって言われたら教えて……あと、今日はとっても綺麗だって伝えて。昨日はバラのように、今日は百合の花みたいに……。
まとめて思い返すと、恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。
リリィはくだらないことを言うなと思って怒ったのだろうか。
(……ブランカ、これからどうするんだろう。まず医者を変えるべきだよな。キースが臭いってんなら、それもなんとかしなきゃいけないんだろうけど……)
ミックが買取に色をつけてくれたおかげで、懐は温かい。
夜の市場通りは屋台に灯がともり、美味しそうなにおいがそこら中に漂う。
商人には掻き入れどき、勤め人には一日のご褒美の時間なのだ。道行く人々もほろ酔いの様子で、笑い声をあげている。魔道具屋やブティックに吸い込まれていく人も多い。
いつものゴズメルなら、陽気に乗せられて一杯飲んでいくところだったかもしれない。だが今は、とてもそんな気分になれなかった。金があっても避けられない不幸があることを知ってしまったのだ。
(なんの幸せも保証できないのに、結婚してくれなんて、リリィに言えないよ……)
ブランカを見ていてゴズメルは、もしこれがリリィだったら、リリィがこんなつらい思いをしたらと、何度も考えてしまった。
ずっと体調が悪いのに、誰にも助けてもらえないリリィ。なにを食べても吐き戻してしまうリリィ。
本当は嫌なのに涙をこらえて医者の診察を受けるリリィを思うと、ゴズメルは頭の中で医者をぶち殺さずにはいられなかった。あまりにもかわいそうすぎる。
妖精族は卵生なのでブランカとはだいぶ勝手が違うだろうが、もしもを想像しただけで気が狂いそうだ。リリィをそんな目に遭わせるくらいなら、自分が妊娠したほうがマシだ。でもそれも嫌だ……。
(ああ、もう……よくわかった……)
ゴズメルは大股で冒険者協会に向かって歩き出した。
(あたしは結婚なんて一生しなくていい。偽卵を手に入れて、今のまま、リリィと安心して愛し合えればそれで十分なんだ。愛し合って結婚するのに、結婚したせいで愛を失うなんて、そんなの耐えられないよ……)
冒険者協会は、急な依頼にも対応できるよう夜間も開いている。窓口に立つのは夜行性スキル持ちの受付嬢だ。
ゴズメルは馴染みのないコウモリ族の受付嬢に、鐵刑の塔の許可証を発行してもらった。
朝一番のトロバスに乗って、ジーニョに注文をすればポップル行きにも間に合うだろう。
「あーっ、ゴズメルさん。待ってください」
帰ろうとした時、トタタタと駆け寄ってきたのはナナだった。ゴズメルは目を丸くした。
「ナナ! あんた新人なのに、こんな遅くまで働いていいのかい」
「頼んだら、研修がてら夜番に入れてもらえました……」
猫族は夜行性スキル持ちだが、ナナは朝から通しで入っている。実際、眠そうだ。
ゴズメルの心配をよそに、ナナはにやにやと猫らしく笑った。
「知ってますか、ゴズメルさん、夜番って手が空いているときは寝てもいいし、夜食ももらえるんですよ……えへへ、時給もいいし、先輩も優しいし、まるで夢のようです……むにゃむにゃ」
「おい、しっかりしろ、ナナ」
手が空いていない時は寝るなという意味だ。立ったまま寝ようとするナナを、ゴズメルは揺すって起こした。
ナナの先輩にあたるコウモリ族の受付嬢が、さっきからこっちを見ているのだ。
夢の中で優しい先輩が、現実でも優しいとは限らない。
シラヌイから家が貧しいとは聞いていたが、そんなに金に困っているのだろうか。
心配するゴズメルをよそに、ナナはぶるぶるっと体を振るって覚醒した。
「失礼しました。お約束の返事を渡せると思って声をかけたんです」
「約束? 返事?」
「ゴズメルさん、しっかりしてください」
今度はゴズメルが注意される番だった。
「リリィ先輩に気持ちを聞いてくるよう、私に依頼したのはゴズメルさんじゃないですか」
「あ……えっ、ごめん。ナナ、もしかして、あたしにそれを伝えるために残ってたってこと?」
すっかり忘れていた。戻ってこないかもしれない自分を、ナナはシフトを操作してまで待っていたのだ。
「おかげで夜番もやらせてもらえて、ラッキーでした」
ナナの言葉は皮肉ではなかった。冒険者との口約束を大切にして、彼女はここにいるのだ。
ゴズメルは尊崇の念に打たれた。
「ナナ、あんたって本当に偉いねえ。遅くまで待たせちまって本当にごめんよ」
「えへへ……いえ……実は、リリィ先輩が深刻なご様子だったので、早くにお伝えしたほうがいいと思ったのです」
「えっ!? どういうこと」
仰天するゴズメルの前で、ナナは申し訳なさそうに両手を擦り合わせた。
「……お昼休憩の時、私はリリィ先輩とお話をしました。ゴズメルさんが戻って来ないことを、先輩が気にしている様子だったので、ちょうどいいと思って、依頼された件を伝えたのです。そしたら、先輩が怒ってしまって」
「お、怒っ……!?」
ゴズメルは自分の言ったことを反芻した。
リリィとケンカなんてしてないよ。向こうにも聞いてみて。でも、もし嫌いだって言われたら教えて……あと、今日はとっても綺麗だって伝えて。昨日はバラのように、今日は百合の花みたいに……。
まとめて思い返すと、恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。
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