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急・異種獣人同士で子づくり!?ノァズァークのヒミツ編
43.synopsis
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冒険者はたくさんの裏道を使う。
野良猫のように人家の庭を横切り屋根を渡っても怒られずに済むのは、冒険者協会の制服を着ているからだ。
というのも、冒険者は人々のお使いを請け負う便利屋の側面がある。あちこち駆けずり回っているのも近隣住民の役に立つためだ。みんな自分も依頼することがあるからお互い様だと思うようだ。
とはいえ、限度がある。
「キャーッ!」
窓をぶち割って施療院に乗り込んだゴズメルは、看護師に悲鳴をあげられてしまった。
三階の廊下だ。施療院に病室は三つある。六人入る大部屋が一つと、一人用の個室が二つ。
もっとも重篤な患者が入る三階の個室にいると踏んだのは間違いではなかったようだ。
個室の前の廊下に、冒険者協会の制服が固まっていた。……マリア!
前に立ちはだかるマリアに、ゴズメルは斧で打ちかかった。
盾で防いだマリアはせせら笑った。
「悪い子ねえ。昇格審査はどうしたの?」
「うるさいっそこをどけ!」
斧が盾ではじき返される。マリアは退くつもりがないらしい。
雪辱の機会だ。ゴズメルは目をぎらつかせて斧を構えなおした。
「ゴズメル、やめろ!」
一喝したのはシラヌイだった。
「ここは施療院だぞ。いったい何を考えている」
「そうよ。うふふ、おとなしくお仕置きされなさい」
「おまえもだ、マリア。おまえが本部の副会長だとしても、ここはアルティカだ、礼儀を弁えてもらおう」
「……あら。つまらないわね」
マリアが盾を下げるのと同時に、ゴズメルは病室のドアに突進した。
だが、見えない壁に弾き返される。
「な、なんだこれは……!」
ドアに封印が施されているのだ。
墨と筆で書いたような魔法陣に、ゴズメルは見覚えがあった。
「シラヌイ、あんたが封印したのかっ?」
「……俺とマリアで、やっとだ」
シラヌイは嘆息した。
「ここに担ぎ込まれた時には魔力が暴走して、もう手が付けられない状態になっていた」
「魔力の暴走……?」
「誰かがあの子の魔力を解放してしまったんだ。古びたドアの鍵を開けるみたいにな。蝶番はゆるんでいるし、ドアノブもバカになっている。あの子の肉体は、もうドアとして機能していない……」
「それって……まさか、死ぬってこと?」
「…………」
沈黙したシラヌイの後を引き取るかのように、マリアは「そうなってくれれば有難いわ」と肩をすくめた。
「結界が破られれば、アルティカは大惨事でしょうから。濃すぎる魔力がブラックホール……なんでも吸い込む穴になって、アルティカは飲み込まれてしまうもの」
口調こそ真剣だったが、マリアは可笑しくてたまらないといったふうに唇を歪ませていた。
「だから私たち……リリィちゃんと言うの? その妖精族の子が、結界の中で死んでくれるのを待っているのよ」
ゴズメルは目を大きく開いてシラヌイを見た。
シラヌイは背中を丸め、渋面を作っている。
「……魔力は、いわば生命力だ。循環が悪くなれば体調を崩すし、放出しすぎれば……」
死ぬ。
ゴズメルは「開けて」と言った。
シラヌイは「無理だ」と返す。
「おまえ、状況が呑み込めていないな。いいか、もしリリィの魔力が外に漏れたら……」
「リリィが町をぶっ壊すってのか! あんなに優しい女の子をバケモノみたいに言いやがって、恥ずかしくないのか、シラヌイ!」
「そういう問題じゃないっ!」
「あの子の鍵を開けたのは、あたしだ!」
ゴズメルの叫びに、シラヌイは息を呑んだ。驚いているらしい。
「レベルアップアイテム・童貞喪失精子を採取するために、リリィは翅を使ってくれたんだ! そのせいで魔封じのアミュレットも新調せざるを得なくなった。より強く、あの子の翅を縛るものにね……」
ゴズメルは腹立たしくて仕方なかった。リリィは妖精であることをあんなに嫌がっていたのだ。翅があるなんて恥ずかしいことだと思っていた。
そんな苦しみを何も知らない連中が、リリィを裁こうとするなんて。
死を、待つだなんて。
「強すぎる魔力を体に溜めて、そのうえ、あの子は卵を生みたがっていたんだ……それを我慢させたのもあたしだ。アルティカが破壊されるとしたら、あたしのせいだ。だから、あたしがなんとかする」
「……何か、手があるのか」
「シラヌイ、惑わされないで。そのミノタウロスには何の考えもありはしないわ」
ゴズメルはマリアを睨みつけた。
「黙れ、バイコーン。あの子の気持ちがわかるのは、あんたじゃなくて、あたしだ」
「ふぅん? あなたって、地元に着いたとたんに気が強くなるのね……」
角の生えた女二人の間で、シラヌイは天を仰いだ。
だが、やがて「よし」と言って、天狗の葉団扇を構える。
「ゴズメル、おまえだけ結界を擦り抜けさせてやる。だが、入ることはできても出ることはできないと思え」
それは死の宣告だった。もしもの時は、リリィと共に結界の中で死ねと言っているのだ。
「ああ。望むところだよ」
金がどうの、キャリアがどうのと頭を悩ませるより、そっちのほうがよっぽど性に合っている。
シラヌイは小さくうなずき、マリアに指示した。
「マリア、風を使う。施療院に害が及ばないよう盾で防いでくれ」
「……ふふっ、自信ないわ。その子ってすごく重たいのだもの」
「なんだと!」
吹き飛ばすために必要な風で、施療院が壊れると言いたいらしい。ゴズメルは食ってかかろうとしたが、その瞬間、シラヌイが葉団扇を大きく振りかぶった。
耳が、角が、ちぎれてしまいそうな突風に、ゴズメルは吹き飛ばされた。
野良猫のように人家の庭を横切り屋根を渡っても怒られずに済むのは、冒険者協会の制服を着ているからだ。
というのも、冒険者は人々のお使いを請け負う便利屋の側面がある。あちこち駆けずり回っているのも近隣住民の役に立つためだ。みんな自分も依頼することがあるからお互い様だと思うようだ。
とはいえ、限度がある。
「キャーッ!」
窓をぶち割って施療院に乗り込んだゴズメルは、看護師に悲鳴をあげられてしまった。
三階の廊下だ。施療院に病室は三つある。六人入る大部屋が一つと、一人用の個室が二つ。
もっとも重篤な患者が入る三階の個室にいると踏んだのは間違いではなかったようだ。
個室の前の廊下に、冒険者協会の制服が固まっていた。……マリア!
前に立ちはだかるマリアに、ゴズメルは斧で打ちかかった。
盾で防いだマリアはせせら笑った。
「悪い子ねえ。昇格審査はどうしたの?」
「うるさいっそこをどけ!」
斧が盾ではじき返される。マリアは退くつもりがないらしい。
雪辱の機会だ。ゴズメルは目をぎらつかせて斧を構えなおした。
「ゴズメル、やめろ!」
一喝したのはシラヌイだった。
「ここは施療院だぞ。いったい何を考えている」
「そうよ。うふふ、おとなしくお仕置きされなさい」
「おまえもだ、マリア。おまえが本部の副会長だとしても、ここはアルティカだ、礼儀を弁えてもらおう」
「……あら。つまらないわね」
マリアが盾を下げるのと同時に、ゴズメルは病室のドアに突進した。
だが、見えない壁に弾き返される。
「な、なんだこれは……!」
ドアに封印が施されているのだ。
墨と筆で書いたような魔法陣に、ゴズメルは見覚えがあった。
「シラヌイ、あんたが封印したのかっ?」
「……俺とマリアで、やっとだ」
シラヌイは嘆息した。
「ここに担ぎ込まれた時には魔力が暴走して、もう手が付けられない状態になっていた」
「魔力の暴走……?」
「誰かがあの子の魔力を解放してしまったんだ。古びたドアの鍵を開けるみたいにな。蝶番はゆるんでいるし、ドアノブもバカになっている。あの子の肉体は、もうドアとして機能していない……」
「それって……まさか、死ぬってこと?」
「…………」
沈黙したシラヌイの後を引き取るかのように、マリアは「そうなってくれれば有難いわ」と肩をすくめた。
「結界が破られれば、アルティカは大惨事でしょうから。濃すぎる魔力がブラックホール……なんでも吸い込む穴になって、アルティカは飲み込まれてしまうもの」
口調こそ真剣だったが、マリアは可笑しくてたまらないといったふうに唇を歪ませていた。
「だから私たち……リリィちゃんと言うの? その妖精族の子が、結界の中で死んでくれるのを待っているのよ」
ゴズメルは目を大きく開いてシラヌイを見た。
シラヌイは背中を丸め、渋面を作っている。
「……魔力は、いわば生命力だ。循環が悪くなれば体調を崩すし、放出しすぎれば……」
死ぬ。
ゴズメルは「開けて」と言った。
シラヌイは「無理だ」と返す。
「おまえ、状況が呑み込めていないな。いいか、もしリリィの魔力が外に漏れたら……」
「リリィが町をぶっ壊すってのか! あんなに優しい女の子をバケモノみたいに言いやがって、恥ずかしくないのか、シラヌイ!」
「そういう問題じゃないっ!」
「あの子の鍵を開けたのは、あたしだ!」
ゴズメルの叫びに、シラヌイは息を呑んだ。驚いているらしい。
「レベルアップアイテム・童貞喪失精子を採取するために、リリィは翅を使ってくれたんだ! そのせいで魔封じのアミュレットも新調せざるを得なくなった。より強く、あの子の翅を縛るものにね……」
ゴズメルは腹立たしくて仕方なかった。リリィは妖精であることをあんなに嫌がっていたのだ。翅があるなんて恥ずかしいことだと思っていた。
そんな苦しみを何も知らない連中が、リリィを裁こうとするなんて。
死を、待つだなんて。
「強すぎる魔力を体に溜めて、そのうえ、あの子は卵を生みたがっていたんだ……それを我慢させたのもあたしだ。アルティカが破壊されるとしたら、あたしのせいだ。だから、あたしがなんとかする」
「……何か、手があるのか」
「シラヌイ、惑わされないで。そのミノタウロスには何の考えもありはしないわ」
ゴズメルはマリアを睨みつけた。
「黙れ、バイコーン。あの子の気持ちがわかるのは、あんたじゃなくて、あたしだ」
「ふぅん? あなたって、地元に着いたとたんに気が強くなるのね……」
角の生えた女二人の間で、シラヌイは天を仰いだ。
だが、やがて「よし」と言って、天狗の葉団扇を構える。
「ゴズメル、おまえだけ結界を擦り抜けさせてやる。だが、入ることはできても出ることはできないと思え」
それは死の宣告だった。もしもの時は、リリィと共に結界の中で死ねと言っているのだ。
「ああ。望むところだよ」
金がどうの、キャリアがどうのと頭を悩ませるより、そっちのほうがよっぽど性に合っている。
シラヌイは小さくうなずき、マリアに指示した。
「マリア、風を使う。施療院に害が及ばないよう盾で防いでくれ」
「……ふふっ、自信ないわ。その子ってすごく重たいのだもの」
「なんだと!」
吹き飛ばすために必要な風で、施療院が壊れると言いたいらしい。ゴズメルは食ってかかろうとしたが、その瞬間、シラヌイが葉団扇を大きく振りかぶった。
耳が、角が、ちぎれてしまいそうな突風に、ゴズメルは吹き飛ばされた。
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