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第一章 お屋敷編
第五十話 雪鏡 上
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「――景」
掃除をしている途中で偶然発見してしまったお屋敷の隠し部屋。
「十徹さん……?」
その奥であぐらをかいて座っていたのは……二十代中頃ぐらいの大柄のカモシカの男性、十徹さんだった。
「あっ……お、お邪魔します!」
十徹さんが手にしているのも当然、切れ味なんて無い木刀で……。一瞬真剣だと勘違いしてしまった自分の早とちりを自覚させられて、慌てて頭を下げる。それに何の断りもなく上がり込んじゃってるし……。
「……」
十徹さんは一糸の乱れもない、きちっとした礼を返してくれた。
だけど、どうして隠し部屋に、十徹さんが……?
「……」
寡黙な十徹さんの表情はいつもの様に、長い前髪に隠れていてよく読み取れない。ただ、その身が纏っている研ぎ澄まされた雰囲気を、同じ部屋に居るだけでもひしひしと感じる。
しかもそれは単に、190cm以上は有りそうな身長や、がっちりした体格だけから来るものじゃなくて……鍛錬によって磨かれたものだということが伝わってくる。
だけど。十徹さんの雰囲気は、決して誰かを傷つけようとするものじゃない。お屋敷の人達を守ろうとしているものだ。それはきっと、いや、絶対に間違いないだろう。
……ただ、俺が十徹さんについて知っているのは、お屋敷の警備を担当していることぐらいで……。
思い返してみれば十徹さんと俺は、挨拶以外でこれまで話したことは殆ど無かったのだ。……やっぱり、ずっとこのままなのは、あんまり良くないよな……。
「凄い雨ですね」
ちょっと勇気を出して、十徹さんに話し掛ける。
「……」
すると十徹さんは、小さく頷いてくれた。
「……今日は御珠様は、お休みなんですか……?」
この時間の十徹さんは普段は、二階で儀式中の御珠様の護衛をしていることが多い。
十徹さんが今ここに居るということは、突然の雨で御珠様の儀式が中止になったのかもしれなかった。
部屋の中で行う儀式でも、天候で左右されたりするのかな?
「……御珠様は先に、向かっている……」
「えっ……。どこに向かっているんですか?」
そんな話、聞いたことが無かった。どうやら、突然出来た用事みたいだけど……。
「それは。……。…………」
すると、十徹さんは口をつぐんだ。きっと、教えてはいけない類の話なんだろう。確かに、今の質問は余計だったな……。
「「…………」」
そして、二人の間に漂う沈黙。
……いきなり話し掛けて、十徹さんに迷惑をかけてしまったかな……。それに十徹さんは、今は誰かに話し掛けられたくない状況だったのかもしれないし……。
そんな後ろ向きな気分になっている内に、ふと、気が付いた。
あれ。一見するとこの部屋、他の部屋と変わりが無い様に見えるけど。
よく見ると、大きな傘立ての様な箱に、沢山の竹刀や木刀が入れられてたり。競技で使う様ななぎなたや弓が壁に掛けられていたり。タンスの上には、鎧の様な防具が置かれていて。
そして天井近くには大きな書が、額縁に入れられて飾られている。あまりに達筆な崩し字で、何が書いているかは分からない。多分、漢字だと思うけど……。
とにかく。この部屋は明らかに、普通の部屋とは違った。
言うならば、武道に使う道具が収納されている――『武』の部屋だ。
つまり十徹さんはここに、何らかの道具を取りに来たんだ。ようやく納得がいく。
きっと箪笥の中には、道着や袴が沢山入っているんだろうな、なんて思っていると。
「……」
十徹さんが突如、すっくと腰を上げて、タンスの近くに置かれていた竹刀・木刀入れに歩み寄った。
そしてその中から、中ぐらいの長さの木刀を一本引き抜いて、
「……」
俺に手渡したのだった。
「えっ、あっ……はい」
反射的に手に取ったけれど。
「あっ……!」
危ない。思わず取り落としてしまいそうになった。人生で初めて握った木刀は案外重くて、ずっしりとした感覚が手に走る。ちゃんと支えていないと、うっかり落としてしまいそうだ。
長さは大体、一メートル。十徹さんの持っている更に長い木刀と比べると相対的に短く思えてしまうけど、それでも十分に長く思える。手にぴったりと馴染むぐらいの程よい太さで、茶色い木材がひんやりとしていて気持ち良い。
それに、無駄がなくすらっとした外見も、とてもかっこよかった。
でも、何故十徹さんは、これを俺に? 今から剣の稽古をしよう、とか……?
無いとは思うけど、十徹さんと試合をすることになったら……どうしよう。
俺は剣道は未経験者だし、木刀も初めて触れたのだ。それに、運動神経がお世辞にも良いとは言えないし……。万が一、仮に、木刀を構えた十徹さんと面と向かうことになったら、気迫だけでも気絶する自信が有る。
まさかとは思いつつ、内心恐ろしくなっていると。
十徹さんは箪笥の下から三段目を開けて。
「……」
今度はハガキほどの大きさの一枚の紙を取り出して、俺に差し出したのだった。
「ありがとうございます」
そっと手にしてみると、ざらりとした感覚がする。裏返してみれば、紙の表面には細かな砂の粒が沢山付いていた。これは工作の時間に何度か使ったことが有る。
紙やすりだ。
「……時間は、有るか」
そして十徹さんは箪笥からもう一枚の紙やすりと、模造紙ほどの大きな紙を取り出して。その紙を広げて床に敷いてから、再び腰を下ろした。
「はい」
即答して、慌てて俺もその場に座る。
十徹さんは頷いて。
「……」
それから、紙やすりを木刀に当てて、やすりがけを始めたのだった。
「……」
俺は、手にしている紙やすりと木刀をじっと見つめる。
えっと……とにかく、十徹さんと同じ様に、紙やすりで木刀を磨けば、良いんだよな……。
状況が未だによく掴めないまま俺も、十徹さんの見よう見まねで木刀を磨き始める。
……とりあえず、色んなことはやすり掛けをしながら考えれば良いな、うん。
隠し部屋にわずかに木の粉が宙を舞って、鼻の奥がくすぐったくなる。
そして仄かに木のいい香りが漂っている。きっと、しっかりとした木で作ったんだろう。
それでも刃にあたる部分を触ってみると、表面には細かい傷や凹凸やささくれが有って。そういう部分には重点的にやすりを当てて、滑らかにしていけば良いはずだ。
「「…………」」
そのまま板敷の間には、静かな時間が流れていく。
一度始めてしまえば、集中して木刀を磨いている自分が居た。
なるべく傷を減らすために、けれど木刀を削り過ぎない様に力加減を調整していくのが、結構難しい。
だけど、十徹さんから注意されないということは、基本方針は間違ってないんだろう。
それにしても……。俺はちらりと、二メートルほど離れた正面に座る十徹さんの様子を見る。
やはり十徹さんは慣れているだけあって、手付きも鮮やかで。そして、道具を大切にしているというのが伝わる丁寧な扱い方をしていた。
十徹さんの真摯な態度に応える様に、木刀の方もみるみる内に研ぎ澄まされていくのが分かる。木刀なのに、まるで真剣の様な輝きを宿し始めた様にも見えた。
あ、いけない。そんな流れを見ていて、自分の作業がおろそかになっているのに気が付く。すぐにまた、やすりがけを再開して。
何分経ったんだろう。この状況に違和感を感じなくなっていると……。
「……刀や防具が、ここには有る」
十徹さんがぽつりとそう呟いた。思った通り、ここは武道に関係する物だけを収納する倉庫として使われている部屋だったらしい。
「あ、あの」
そうだ、一つだけすっかり忘れていた疑問を思い出す。十徹さんは、ちらりとこっちを見た。前髪の奥に隠れた、やや緑色がかった茶色の瞳が輝く。
「最初廊下から見た時には、この部屋が有ることに気付けませんでした。その後で襖の数が増えたり、壁が回転したりして……」
「……」
こくり、と頷いてくれる十徹さん。やっぱり、錯覚じゃなかったらしい。
「あれも……御珠様の、術ですよね。でも、どうしてあんなことを……」
余っている部屋なら他にも沢山有るのに。わざわざこの部屋にこんな仕掛けを作った理由が、未だに良く分からなかった。悪戯……にしては、手が込んでいると思うし。
「………………」
十徹さんが、顔を上げる。目が合って、まだ少しだけ緊張してしまう。
「――年頃になると、部屋の入り口が見えてくる。大人になれば、常に襖は現れる」
そして十徹さんは、俺の後ろに有る隠し扉の方を見つめた。
「しかし、都季と灯詠にはまだ見えぬ。危ないから……」
「なるほど……」
つまり、武具が収納されているこの部屋は危ないから、都季や灯詠の様な子供には最初から存在が見えない、分からない様な術を掛けているらしい。
それなら確かに納得だし、正しい判断だと思う。だって、その方が絶対に安全だ。竹刀や木刀は使い方を誤ったら、危険な事態になりかねないのだから。
どうやら大人になれば、部屋の入口――襖の存在をはっきりと見える様になるらしい。
だけど、まだ大人になり切っていない年頃の人、例えば十七才の俺にはこの部屋の入り口は、最初から見えなかったり、襖だったり回転する壁だったりと、色んな形態に揺らいで認識されているみたいだった。
こんな風に部屋の入口が定まらなかった時期が、十徹さんにも有ったんだろう……なんて思っていると。
「……一つ、訊きたいことが有る」
十徹さんがやすりがけをする手を止めて、再びまっすぐこっちを見た。
訊きたいこと。その言葉に、場に緊迫感が戻ってくる。そしてぴしっと空気が張り詰める。
「良いか」
ことり、と、十徹さんは木刀と紙やすりを床の上に置く。
「は、はい」
俺も慌てて、木刀と紙やすりを置いた。緊張が戻ってきて、体が凝り固まっている。
思い当たる節は無く、想像もつかない。
一体、どんな質問なんだろう……?
掃除をしている途中で偶然発見してしまったお屋敷の隠し部屋。
「十徹さん……?」
その奥であぐらをかいて座っていたのは……二十代中頃ぐらいの大柄のカモシカの男性、十徹さんだった。
「あっ……お、お邪魔します!」
十徹さんが手にしているのも当然、切れ味なんて無い木刀で……。一瞬真剣だと勘違いしてしまった自分の早とちりを自覚させられて、慌てて頭を下げる。それに何の断りもなく上がり込んじゃってるし……。
「……」
十徹さんは一糸の乱れもない、きちっとした礼を返してくれた。
だけど、どうして隠し部屋に、十徹さんが……?
「……」
寡黙な十徹さんの表情はいつもの様に、長い前髪に隠れていてよく読み取れない。ただ、その身が纏っている研ぎ澄まされた雰囲気を、同じ部屋に居るだけでもひしひしと感じる。
しかもそれは単に、190cm以上は有りそうな身長や、がっちりした体格だけから来るものじゃなくて……鍛錬によって磨かれたものだということが伝わってくる。
だけど。十徹さんの雰囲気は、決して誰かを傷つけようとするものじゃない。お屋敷の人達を守ろうとしているものだ。それはきっと、いや、絶対に間違いないだろう。
……ただ、俺が十徹さんについて知っているのは、お屋敷の警備を担当していることぐらいで……。
思い返してみれば十徹さんと俺は、挨拶以外でこれまで話したことは殆ど無かったのだ。……やっぱり、ずっとこのままなのは、あんまり良くないよな……。
「凄い雨ですね」
ちょっと勇気を出して、十徹さんに話し掛ける。
「……」
すると十徹さんは、小さく頷いてくれた。
「……今日は御珠様は、お休みなんですか……?」
この時間の十徹さんは普段は、二階で儀式中の御珠様の護衛をしていることが多い。
十徹さんが今ここに居るということは、突然の雨で御珠様の儀式が中止になったのかもしれなかった。
部屋の中で行う儀式でも、天候で左右されたりするのかな?
「……御珠様は先に、向かっている……」
「えっ……。どこに向かっているんですか?」
そんな話、聞いたことが無かった。どうやら、突然出来た用事みたいだけど……。
「それは。……。…………」
すると、十徹さんは口をつぐんだ。きっと、教えてはいけない類の話なんだろう。確かに、今の質問は余計だったな……。
「「…………」」
そして、二人の間に漂う沈黙。
……いきなり話し掛けて、十徹さんに迷惑をかけてしまったかな……。それに十徹さんは、今は誰かに話し掛けられたくない状況だったのかもしれないし……。
そんな後ろ向きな気分になっている内に、ふと、気が付いた。
あれ。一見するとこの部屋、他の部屋と変わりが無い様に見えるけど。
よく見ると、大きな傘立ての様な箱に、沢山の竹刀や木刀が入れられてたり。競技で使う様ななぎなたや弓が壁に掛けられていたり。タンスの上には、鎧の様な防具が置かれていて。
そして天井近くには大きな書が、額縁に入れられて飾られている。あまりに達筆な崩し字で、何が書いているかは分からない。多分、漢字だと思うけど……。
とにかく。この部屋は明らかに、普通の部屋とは違った。
言うならば、武道に使う道具が収納されている――『武』の部屋だ。
つまり十徹さんはここに、何らかの道具を取りに来たんだ。ようやく納得がいく。
きっと箪笥の中には、道着や袴が沢山入っているんだろうな、なんて思っていると。
「……」
十徹さんが突如、すっくと腰を上げて、タンスの近くに置かれていた竹刀・木刀入れに歩み寄った。
そしてその中から、中ぐらいの長さの木刀を一本引き抜いて、
「……」
俺に手渡したのだった。
「えっ、あっ……はい」
反射的に手に取ったけれど。
「あっ……!」
危ない。思わず取り落としてしまいそうになった。人生で初めて握った木刀は案外重くて、ずっしりとした感覚が手に走る。ちゃんと支えていないと、うっかり落としてしまいそうだ。
長さは大体、一メートル。十徹さんの持っている更に長い木刀と比べると相対的に短く思えてしまうけど、それでも十分に長く思える。手にぴったりと馴染むぐらいの程よい太さで、茶色い木材がひんやりとしていて気持ち良い。
それに、無駄がなくすらっとした外見も、とてもかっこよかった。
でも、何故十徹さんは、これを俺に? 今から剣の稽古をしよう、とか……?
無いとは思うけど、十徹さんと試合をすることになったら……どうしよう。
俺は剣道は未経験者だし、木刀も初めて触れたのだ。それに、運動神経がお世辞にも良いとは言えないし……。万が一、仮に、木刀を構えた十徹さんと面と向かうことになったら、気迫だけでも気絶する自信が有る。
まさかとは思いつつ、内心恐ろしくなっていると。
十徹さんは箪笥の下から三段目を開けて。
「……」
今度はハガキほどの大きさの一枚の紙を取り出して、俺に差し出したのだった。
「ありがとうございます」
そっと手にしてみると、ざらりとした感覚がする。裏返してみれば、紙の表面には細かな砂の粒が沢山付いていた。これは工作の時間に何度か使ったことが有る。
紙やすりだ。
「……時間は、有るか」
そして十徹さんは箪笥からもう一枚の紙やすりと、模造紙ほどの大きな紙を取り出して。その紙を広げて床に敷いてから、再び腰を下ろした。
「はい」
即答して、慌てて俺もその場に座る。
十徹さんは頷いて。
「……」
それから、紙やすりを木刀に当てて、やすりがけを始めたのだった。
「……」
俺は、手にしている紙やすりと木刀をじっと見つめる。
えっと……とにかく、十徹さんと同じ様に、紙やすりで木刀を磨けば、良いんだよな……。
状況が未だによく掴めないまま俺も、十徹さんの見よう見まねで木刀を磨き始める。
……とりあえず、色んなことはやすり掛けをしながら考えれば良いな、うん。
隠し部屋にわずかに木の粉が宙を舞って、鼻の奥がくすぐったくなる。
そして仄かに木のいい香りが漂っている。きっと、しっかりとした木で作ったんだろう。
それでも刃にあたる部分を触ってみると、表面には細かい傷や凹凸やささくれが有って。そういう部分には重点的にやすりを当てて、滑らかにしていけば良いはずだ。
「「…………」」
そのまま板敷の間には、静かな時間が流れていく。
一度始めてしまえば、集中して木刀を磨いている自分が居た。
なるべく傷を減らすために、けれど木刀を削り過ぎない様に力加減を調整していくのが、結構難しい。
だけど、十徹さんから注意されないということは、基本方針は間違ってないんだろう。
それにしても……。俺はちらりと、二メートルほど離れた正面に座る十徹さんの様子を見る。
やはり十徹さんは慣れているだけあって、手付きも鮮やかで。そして、道具を大切にしているというのが伝わる丁寧な扱い方をしていた。
十徹さんの真摯な態度に応える様に、木刀の方もみるみる内に研ぎ澄まされていくのが分かる。木刀なのに、まるで真剣の様な輝きを宿し始めた様にも見えた。
あ、いけない。そんな流れを見ていて、自分の作業がおろそかになっているのに気が付く。すぐにまた、やすりがけを再開して。
何分経ったんだろう。この状況に違和感を感じなくなっていると……。
「……刀や防具が、ここには有る」
十徹さんがぽつりとそう呟いた。思った通り、ここは武道に関係する物だけを収納する倉庫として使われている部屋だったらしい。
「あ、あの」
そうだ、一つだけすっかり忘れていた疑問を思い出す。十徹さんは、ちらりとこっちを見た。前髪の奥に隠れた、やや緑色がかった茶色の瞳が輝く。
「最初廊下から見た時には、この部屋が有ることに気付けませんでした。その後で襖の数が増えたり、壁が回転したりして……」
「……」
こくり、と頷いてくれる十徹さん。やっぱり、錯覚じゃなかったらしい。
「あれも……御珠様の、術ですよね。でも、どうしてあんなことを……」
余っている部屋なら他にも沢山有るのに。わざわざこの部屋にこんな仕掛けを作った理由が、未だに良く分からなかった。悪戯……にしては、手が込んでいると思うし。
「………………」
十徹さんが、顔を上げる。目が合って、まだ少しだけ緊張してしまう。
「――年頃になると、部屋の入り口が見えてくる。大人になれば、常に襖は現れる」
そして十徹さんは、俺の後ろに有る隠し扉の方を見つめた。
「しかし、都季と灯詠にはまだ見えぬ。危ないから……」
「なるほど……」
つまり、武具が収納されているこの部屋は危ないから、都季や灯詠の様な子供には最初から存在が見えない、分からない様な術を掛けているらしい。
それなら確かに納得だし、正しい判断だと思う。だって、その方が絶対に安全だ。竹刀や木刀は使い方を誤ったら、危険な事態になりかねないのだから。
どうやら大人になれば、部屋の入口――襖の存在をはっきりと見える様になるらしい。
だけど、まだ大人になり切っていない年頃の人、例えば十七才の俺にはこの部屋の入り口は、最初から見えなかったり、襖だったり回転する壁だったりと、色んな形態に揺らいで認識されているみたいだった。
こんな風に部屋の入口が定まらなかった時期が、十徹さんにも有ったんだろう……なんて思っていると。
「……一つ、訊きたいことが有る」
十徹さんがやすりがけをする手を止めて、再びまっすぐこっちを見た。
訊きたいこと。その言葉に、場に緊迫感が戻ってくる。そしてぴしっと空気が張り詰める。
「良いか」
ことり、と、十徹さんは木刀と紙やすりを床の上に置く。
「は、はい」
俺も慌てて、木刀と紙やすりを置いた。緊張が戻ってきて、体が凝り固まっている。
思い当たる節は無く、想像もつかない。
一体、どんな質問なんだろう……?
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