我儘王女は目下逃亡中につき

春賀 天(はるか てん)

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第二章 三年前

『悪友』と『私』【2】

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【18】



ーーそして小一時間が過ぎた頃、私達は華麗?なる変貌を遂げていた。

庭に向かう廊下を私達は二人で歩いている。 すれ違う使用人達が「よくお似合いです」などと、笑顔で声を掛けてくる。そんな私の隣では、この屋敷のご令嬢であるローズロッテ嬢が出し惜しみのない満面の笑顔で皆の声に応えながら鼻歌さえ口ずさんでいる。

そして私はというと、あれから部屋を後にしてからというもの、暫く無言で歩いていたが、ようやく思考が落ち着いてきたので、ずっと考えていた疑問を この計画の発案者である隣の彼女に問うてみた。


「………ねえ、ローズ。………聞いていい?」

「~♪ んん? なんですの?」

「………羽が生えているわ?」

「ええ、そうですわね?」

「………それに何故か猫の耳?と……尻尾が付いているのだけれど?」

「ふふっ、リルディア様、すごくお似合いですわ。リルディア様の雰囲気にピッタリで作らせた甲斐がありましたわ~ お気に召して?」

「………どうかしら? 私……羽の生えた猫なんて、生まれてこのかた見たことがないもの………」


私は歩きながらまじまじと自分の姿を直視する。


「それにこれって………喪服?………にしてはやけに派手じゃない? しかも………足、出ているんだけれど………」


私はそんな自分の姿にきょうがくを覚え、先ほどから暫し言葉を失っていたのだが、やっと理性が戻ってきたようだ。

そんな驚愕を覚える私の格好とは、いつも彼女に着替えさせられていた格好といえば、彼女と同じ様な白や薄桃色や空色などの淡い色彩で花柄のサテン地やレースのリボンの沢山ついたフリフリいっぱいのドレスである。しかし今日はそんないつもの感じとは全く違って、二人とも上から下まで全身真っ黒なドレスで、リボンもレースもフリルすらも同じく真っ黒で唯一、飾りの花だけが青、赤、紫色と色彩がある。

そこまではまだいいが、何といってもそのドレス丈が問題だった。ドレス丈がやけに短い。問題のドレス丈は膝上くらいまでしか無く、だから当然、足が丸見えで縁にレースとリボンのついた黒くて長い靴下を着用してはいるものの、それでも足下がスースーするから何とも落ち着かない。そして極めつけに私の頭とお尻には黒い猫耳と長い尻尾が。ローズロッテの方は黒く長い兎の耳と大きな丸い尻尾がついている。しかもこれも何とも異様な事にそんな私達の背中にはキラキラと光る大きな黒い蝶の羽が付いていた。

ローズロッテは私の反応にクスクスと笑っている。


「これって喪服? だなんて、そんなわけがありませんわ。いつものドレスではリルディア様はお気に召されない様ですから少し趣向を変えてみましたの。ですからドレスの色をリルディア様の髪や瞳の色と同じく『黒』にしたらどうか? と思ったのですわ。

確かに黒いドレスは一般的には喪に服す時くらいにしか 着用致しませんけれど、例外にも占い師の女性などは、よく黒いドレスを着用しておりますでしょう? それに今、市井の若い娘達の間ではドレス丈の短い衣服が流行っているのですって。他の貴族のご婦人や ご令嬢達は下品で破廉恥だと仰るでしょうけれど、私、流行に関しては市井社会にも寛大な考えを持っていますのよ?

ーーふふっ、これはここだけの内緒話ですけれど、こうして足を見せるのは恋敵の多い意中の殿方の心を射止める最強の女の武器になるのですって。侍女達が こっそりと教えてくれましたわ。実は、それももう実証済みですの。私、それで素敵な殿方達と現在お付き合いしておりますのよ? まだ嫁入り前なのですもの。今の内に沢山の素敵な殿方達と自由に恋愛を楽しみたいのですわ」


そういうローズロッテはまだ15歳であるにも関わらず恋多き女であり、彼女には沢山の男の取り巻き達がいる。勿論、彼女には親の決めた婚約者がいるのだが、まだ結婚してはいないので、独身である内に沢山男遊びをしたいと言うのだから恐れ入る。


「ですがリルディア様は本当に人ですの? リルディア様はそのおみ足まですごく綺麗な形をしていらっしゃるのね? 私、そのような美脚を拝見したのは初めてですわ。ーーそうですわね。リルディア様は殿方の前で、そのお美しいおみ足を出される事は万策とは言えませんわね。それにリルディア様なら何をなさらずともどのような殿方でもたちまち心を奪われてしまいますもの。しかも肌などを見せてしまっては、リルディア様の身がかえって危険に晒されますわ。

それにリルディア様にはセルリアの麗しいユーリウス王太子様がいらっしゃいますもの。あのように完璧で美しい殿方がご婚約者であれば他の殿方など眼中にも入らないですわよね。ーーああ、そう言えば、そのユーリウス王太子様が先日、リルディア様の元に ご訪問なされたと伺いましたわ? うふふっ、どうでしたの? その後、何か進展がありまして?」


ローズロッテは急に立ち止まったかと思うと、キラキラというよりギラギラとした期待に満ちた瞳で私の返答を待っている。彼女は恋多き女だけあって、こういった恋愛話がとても大好きなのだ。


「ええっと、期待に添えなくて申し訳ないけれど、ユーリウス王子とはただ普通に面会してご挨拶しただけよ?」


彼女はご令嬢達の噂話の情報源でもあるので、その辺り 何かと面倒な事もあり当たり障りのない説明をすると、彼女は非常に残念そうな表情を浮かべる。


「まあ、なんて勿体ない! リルディア様はもっと男女の駆け引きをなさるべきですわ。それでなくともユーリウス王太子様とはあまりお会い出来ないのですもの。万が一にも王太子様が他の女性に目を向けられない様、リルディア様に釘付けになさらなくては。ですが………そうですわね。ユーリウス王太子様は性格がお優しすぎて恋愛事には少し奥手でいらっしゃるのかもしれませんわね。

リルディア様! やはりここはリルディア様から積極的に行かれては如何いかがかしら? リルディア様が本気をお出しになられて愛のお言葉でも一言、囁かれれば、それだけでもう王太子様のお心はリルディア様一筋ですわ! たとえ、こうしてお互い離れていてもユーリウス王太子様はリルディア様だけに釘付けですわよ?」

「………ローズ? 私は母様からもよく忘れられているから慣れてはいるのだけれど、私はまだ12歳で子供の領域から出てはいないの。だからそういう大人の駆け引きはもう少し歳を重ねてから考えるわ。今はそういった事はよく分からないのよ。言われてもピンとこないの」


私の言葉を聞いて、再び彼女は残念そうな表情を浮かべる。


「ああ、そうでしたわ。リルディア様はまだ御歳12歳でいらしたのですわよね。リルディア様は外見もお話になるお言葉も 全てが大人っぽくていらっしゃるから、分かってはいてもつい忘れてしまいますわ。ですがリルディア様? 男女の恋愛に年齢など関係ありませんことよ? リルディア様は精神面では既に大人でいらっしゃいますもの。もっと積極的に行かれても問題ありませんわよ。

ーー決めましたわ。わたくし僭越せんえつながらリルディア様とユーリウス王太子様のご恋愛を全面的にご協力申し差し上げますわ! 私に出来る事がありましたら何なりと仰って下さいませね? 我が父上のお仕事上、セルリアには顔も広くてよ? セルリアの『未来の王妃様』の御為にその友人代表として私、頑張りますわ!」


そんな彼女の言葉の内々に損得勘定があるのが分かる。きっと彼女はその言葉通りに未来の『セルリアの王妃』である私の為に私がお願いすれば、きっと何でもやってくれるに違いない。何と言っても“友人代表”である。ーーだから彼女とは本当の『友人』にはなれない。いくら表向きは親しくはしていても、貴族社会の人間達は自分の利の為に寄ってきたり去っていったりするからだ。

そんな彼女の父であるデコルデ侯爵は幅広く諸外国との商売も手広くやっているので、確かにその人脈は広いのだろう。ーーただし、必ずしも綺麗な商売ばかりとは限らないがーーー


「ーーええ、そうね。もし必要になったらその時は是非ともお願いするかもしれないわ。でも今は色恋事よりも自分が楽しめる事がしたいの。ーーそんな事よりも……ローズ。これはいくらなんでもやり過ぎではないの? 確かに市井の若い娘達で短い丈の衣服が流行っているのは私も知ってはいるけれど、聞く処によれば、それでもまだごく一部の人達の間だけの話だと言うじゃないの。

実際、このドレス丈はさすがに私でも恥ずかしいわ。足なんて今まで出した事が無いんだもの。ドレスの色なら『黒』でもいいわよ? 『黒』は嫌いじゃないし、いつもの白や薄桃色のフリルやレースだらけの花柄ドレスよりは色合い的にも私に合っていると思うわ。だけど………この猫耳と尻尾。しかもおまけにこんな大きな蝶の羽が付いているだなんて、いくら何でも冒険しすぎよ。確かにサプライズ的な楽しい事は私も大好きだけれど、こんな姿を他人には絶対に見られたくはないわ。きっと頭がおかしいと医者に通報されてしまうわよ?」


私が呆れながらも真顔な表情で言うと、ローズロッテはにこやかな表情で声を上げて笑い出す。


「ーークスクス、リルディア様は本当に楽しい御方ですわね。それに意外にも真面目でいらっしゃるから。そんな事を本気でご心配されるだなんてなんて素直でお可愛らしい御方なのかしら。ご安心なさって? その様にご心配されずとも、こんな格好を外の人間の前になど決して晒したりなど致しませんわ。これは我が屋敷内だけのお遊びですわよ。ーーですが、そうですわよね。確かにこんな姿で城下など歩いたら間違いなく通報されますわよね? ーークスクス」


実のところ、ユーリウス王子の話題を逸らす為に元の話題に戻したという思惑もあったのだが、これはこれで更に彼女を楽しませてしまった様で、何となくしゃくに障る。ーー意外に真面目って失礼な。


「そういう事だからもう着替えましょうよ? いくら屋敷内だけだとしてもやっぱり恥ずかしいわ」


そう言って私が彼女の部屋に戻ろうとすると、ローズロッテが再び私の腕に自分の腕を絡ませる。


「リルディア様、その様な事を仰らないで? 折角、楽しい事が大好きなリルディア様に喜んで頂きたくて、ご用意致しましたのよ? それにお庭の方もこの衣装に合わせて特別な趣向で作らせましたの。きっとリルディア様にも気に入って頂けますわ。勿論、我が家の者達は皆、口が堅いのでこの屋敷で見聞きした事は一切、口外など致しません。だからもう少しの間だけ、このままお付き合い下さいな。

普段のドレスではご用意してあるお庭の雰囲気には合わないんですの。それにこの様な格好などリルディア様以外の方とは絶対に出来ませんわ。私、リルディア様とご一緒だからこそ本当に楽しいんですの。ね? どうかお願い致しますわ」


私の腕をしっかりと抱えたローズロッテに懇願する視線を送られ、しかもこれも全ては私を喜ばせる為で、私だからこそ一緒にいて楽しいと言われてしまえば「嫌だ」とも言えない。

ーーいや、「嫌」とは勿論、言える。言えるのだが………実のところ、この黒いドレスは黒いレースやフリルが沢山使われたドレスではあるが、色合いも黒色だからなのか乙女チックな感じは無く落ち着いた感じもあって、この短すぎるドレス丈は落ち着かないものの、本当に自分によく似合っていて………実は少し気に入っていたりする。

しかも彼女の言う通り、このような常識外れの奇特なお茶会など貴族の慣例などに囚われない楽しい事が大好きな私の性格をよく分かっているからこそ出来る事であって、そうでなければ大貴族である侯爵令嬢がこの様に非常識な喪服のようなドレスを着用したり、しかも動物の耳や尻尾、さらに昆虫の羽までつけてお茶会を行うなど絶対に出来るわけが無い。

それにやり過ぎだとは思っていても、このように黒い丈の短いドレスや猫耳や尻尾、蝶の羽など、どれも初めての経験で、ここだけのお遊びであるのならすごく面白いかもしれない。


「ーー分かったわ。だけど本当にこの格好はこの屋敷内だけよ? 一国の王女の私がこんなおかしな格好をしていたと周囲に知れたら、お父様ならきっと、お気にもなされないし逆に面白がるとも思うけれど、他の人間には何こそ噂されるか分かったものではないわ。だから絶対に他言無用。ーーいいわね?」


私が念を押すと、ローズロッテは嬉しそうに首を縦に振る。


「ええ、勿論ですわ! リルディア様、私の我儘をお聞き下さり、ありがとうございます。私、リルディア様が本当に大好きですわ! それに私もリルディア様とお揃いの格好でしてよ? 口外など侯爵家の威信に掛けて絶対にあり得ません。我が屋敷の使用人達は皆、しっかりと教育されておりますし、特に人を雇う際には厳しく厳選した人物だけを採用しておりますの。ですから我が家で採用された人間は皆、主人に忠実で 口の堅い真面目な者しかおりませんので ご安心なさって?」


それを聞いた私の頭に浮かんだ事は言うまでもない。我が城では『風の噂』が往来する場所だがこの侯爵家ではそれが無いようだ。口が堅いと言うのは信用に値するが、それが全員となると、いざ自分が問いただしたい時に誰からも情報が聞けない事になる。だから私的には城の『風の噂』はある程度は容認しようと思う。

………でなければ私が困る。


「では、リルディア様。そうと決まれば早くお庭の方に参りましょう? 私共、リルディア様がおいでになるというので、屋敷の庭師から執事、使用人総動員でお庭を早急に作らせましたのよ」


そんなローズロッテの言葉に何だか気分は複雑になる。私が突然訪問したせいで、彼等には本来の仕事以上に余分に仕事をさせてしまった事になる。だがこれは私も予想外で、本当は受け取った親書の内容が気になったので、ちょっとだけ顔を出して話を聞いたら直ぐに帰るつもりだったのだ。


「ーーローズロッテ。それなら本日お庭作りに係わった者達には この後の仕事を減免して貰えないかしら? 私の為にきゅうきょ庭を作らせたのなら彼等の労力に少なからず報いたいわ」


私がそう言うと、ローズロッテは首を傾げて不思議そうな顔をする。


「まあ、彼等はただの使用人ですわよ? 主人の命に従うのは彼等の仕事であり当然の事ですわ。ですからその様なお気遣いなど全く必要ございませんのに」

「それはそうだけれど、でも出来ればそうして欲しいのよ。やっぱり駄目かしら?」


私の言葉にローズロッテは小さく肩を竦めるも頷いた。


「ーー分かりました。他ならぬ大切なご友人である王女様のお願いですもの。我が父上も勿論、承諾なさるでしょう。ですが関わった全ての使用人達に仕事を休まれては他の者達が困りますから、彼等には必要な仕事以外では休息を与えましょう。それでよろしくて?」

「ええ、そうして貰えると私も気分がいいわ」


ローズロッテはまだ不思議そうな顔をしてはいるものの「承りました」と了承したので取り敢えずホッとする。確かに彼女の言う通り、使用人が主の命に従うのは仕事であり当然の事だ。しかし私は彼等の主人ではないし、これが自分が頼んだ我儘であるならばいざ知らず、私と関係の無い他家の人間が私を喜ばせる為に余計な労力を費やさせたのだと思ったら、何となく気分がもやもやして気付けば彼等の仕事の減免をローズロッテに申し入れていた。

別に相手が勝手にやっている事だし、その主の指示で使用人達が働いているだけなのに、どうして客人であり、しかも王女である私が他家の使用人である彼等の事まで気にしなければならないのか? 本来、私は気を遣われて当然の立場の人間なのだ。だから彼等が私の為に頑張るのは当然の事なのに………

だからローズロッテが首を傾げて不思議がるのも無理はない。私自身も不思議で仕方ないのだが、それでもローズロッテが彼等に我儘を言って急遽、無理をおして用意させたのだと思ったら、次の瞬間には、自分らしくもない言葉が口から出ていた。

ーー本当に何でだろ?


そして再び私は満面な笑顔のローズロッテに腕を引っ張られながら、足早に廊下を進み始める。


ーーこうして侯爵家の屋敷の廊下を二匹?の動物なのか昆虫なのか全く不可解な、キラキラと光る黒い羽の大きな蝶がヒラヒラと舞うように飛んでいったのは言うまでもないーーー




【18ー終】

















































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