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第3部
【8】因縁の再会(~朝の憂うつ)
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【8】
「………はあぁ」
私は電車の中で一人、項垂れながら何度目かの深いため息を吐く。昨日の自分の失態をこの上なく反省していた。
ーーうう~ まさかまさかの大失態。 しかも、あんな超恥ずかしい下着をよりにもよって奏達家族に見られてしまうなんて。私のバカ! アホ! マヌケ! どうしてもっと注意しておかなかったんだろう。
いや、そもそも奏と一緒なのに下着を購入する自体が根本的に間違ってた。いくら成り行きで下着売り場に行くといったって、実際 買う必要なんか無かったじゃん。
くうっ、ついバーゲンに釣られて、
しかもゲーム用の勝負下着とか頭の片隅にあったもんだから、あまり深く考えずに思わず買っちゃったんだよなあ~。しかも普通のデザインの下着ならまだともかく、あんなスケスケおパンツ付きのエッチい下着だよ?
私がそんな下着を着ける趣味があったのかと思われているかと思うと、絶対 幻滅されるだろうし、勿論 訂正したくとも顔を合わせる事自体がもはや恥ずかしすぎて出来ないーーー
「………はああぁ」
私は再び深いため息を吐くと、その場で頭を抱える。
あの後、再び康介からのメールで『姉貴が気にするまでもなく奏達は全然 気にしてねーから心配すんな。
しかも姉貴の大ボケは今に始まった事じゃねーのは有島家の人間も みんな知ってんだから、もう奏達と会わないとか馬鹿な事 考えてんじゃねーぞ? それこそ乙女ゲーでもして全部 忘れっちまえ!
ーー追伸、紗菜さんが今度 姉ちゃんと一緒に買い物に行きたいって言ってたゼ?』
ーーと、まあ、弟なりの励ましの言葉なのだろうが、昨晩は乙女ゲーをする余裕もないくらいに頭が色んな事で一杯だったんだよ。
今後、奏に どんな顔をして会えばいいの? とか、伊月達への今回の説明とか、今日の結婚パーティーの事とかーーー
そんな事を悶々と考えている間に駅に着いたので、電車を降りて駅舎を出る。
今日は日曜日でお天気も良いので昨日よりもかなり人出がある。駅の時計を見ると時刻は9時半。バイト先の『原石』で行われる結婚パーティーは11時からで一時間半早く着いた。
それというのも本来ならば10時28分着の電車に乗ってきても結婚パーティーには十分間に合うのだが、何となく昨日の一件で康介が奏を連れて家に帰ってきそうな予感がしたので早々に家から逃げてきたーーというわけである。
だって、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。 昨日の今日で どんな顔をして奏に会えるっていうのさ。
気にすんなって言われたって、一応 私にだって羞恥心というものは人並みに備わっているのだよ。
どっちにしても心の平常心を取り戻す為にも、しばらくは私をそっとしておいて欲しい。
私は駅舎の外のベンチに移動し、いったん座るとバッグから結婚パーティーの招待状を取り出して見つめる。
「………家から外出する理由としては助かったケド、ホントに いいのかなあ? 仕事ならともかく部外者が参加するなんて。しかもこんな格好だし」
そんな私の格好とは、深緑色のブレザーに白ブラウス、胸元にはエンジ色のリボン、そしてグレー色のチェックのプリーツスカートの緑峰学園高校の制服を着用している。
「………『ヒーロー』君は制服でいいからって言ってたから一応着てきたケド、他の人と比べたらかえって悪目立ちし過ぎないかな? だけど、お母さんのフォーマルスーツは着るのイヤだしーーー」
私は昨晩 母に明日、結婚パーティーに行くと告げたところ、私がきちんとしたフォーマルを持っていなかった事もあり、母が自分のフォーマルスーツを着るよう薦めてきたが、母のスーツは若い娘が着るようなデザインじゃなかったので断った。
そして会費も要らない事を話すと、「たとえ そうだったとしても、参加させて頂くからには他の招待客と同じように会費は持って行きなさい」ーーと母が会費を包んで持たせてくれた。
そんな母に感謝しつつ、私もさすがに手ぶらじゃちょっとな~と思い、行く途中にある花屋さんでちょっとしたお花のアレンジメントを買って持っていこうと思っている。なので理由はどうあれ、時間的には丁度良かったのかも。
「ああ~ それにしても、ここまで思い出せないだなんて私の記憶力ってホントに悪いんだな。こんなんでよく緑峰学園に入れたのが自分でも不思議だよ。
………『柏木ヒーロー』君。変わった名前だし、知り合いなら覚えていないはずないんだけど。
そういえば康介に聞き忘れたな。康介なら同学年だし、もしかして彼を知っているカモ?
だけど逃げてきた手前、今、聞くわけにもいかないし。しかも私が過去にセクハラして彼にトラウマを植え付けただなんて知ったら今度こそ姉弟の縁切られそうだしな~」
私は招待状をバッグにしまうと、ベンチから腰を上げる。そして空を見上げながら腕を伸ばして背伸びをした。
「まあ、自力で思い出せないものは仕方ない! どっちにしろ今日『ヒーロー』君から教えて貰えるはずだし、それできちんと誠意を持って謝罪してなんとか許して貰おう!」
そして私は気を取り直すと、まずは駅前の花屋さんへと向かう事にした。
【8ー続】
「………はあぁ」
私は電車の中で一人、項垂れながら何度目かの深いため息を吐く。昨日の自分の失態をこの上なく反省していた。
ーーうう~ まさかまさかの大失態。 しかも、あんな超恥ずかしい下着をよりにもよって奏達家族に見られてしまうなんて。私のバカ! アホ! マヌケ! どうしてもっと注意しておかなかったんだろう。
いや、そもそも奏と一緒なのに下着を購入する自体が根本的に間違ってた。いくら成り行きで下着売り場に行くといったって、実際 買う必要なんか無かったじゃん。
くうっ、ついバーゲンに釣られて、
しかもゲーム用の勝負下着とか頭の片隅にあったもんだから、あまり深く考えずに思わず買っちゃったんだよなあ~。しかも普通のデザインの下着ならまだともかく、あんなスケスケおパンツ付きのエッチい下着だよ?
私がそんな下着を着ける趣味があったのかと思われているかと思うと、絶対 幻滅されるだろうし、勿論 訂正したくとも顔を合わせる事自体がもはや恥ずかしすぎて出来ないーーー
「………はああぁ」
私は再び深いため息を吐くと、その場で頭を抱える。
あの後、再び康介からのメールで『姉貴が気にするまでもなく奏達は全然 気にしてねーから心配すんな。
しかも姉貴の大ボケは今に始まった事じゃねーのは有島家の人間も みんな知ってんだから、もう奏達と会わないとか馬鹿な事 考えてんじゃねーぞ? それこそ乙女ゲーでもして全部 忘れっちまえ!
ーー追伸、紗菜さんが今度 姉ちゃんと一緒に買い物に行きたいって言ってたゼ?』
ーーと、まあ、弟なりの励ましの言葉なのだろうが、昨晩は乙女ゲーをする余裕もないくらいに頭が色んな事で一杯だったんだよ。
今後、奏に どんな顔をして会えばいいの? とか、伊月達への今回の説明とか、今日の結婚パーティーの事とかーーー
そんな事を悶々と考えている間に駅に着いたので、電車を降りて駅舎を出る。
今日は日曜日でお天気も良いので昨日よりもかなり人出がある。駅の時計を見ると時刻は9時半。バイト先の『原石』で行われる結婚パーティーは11時からで一時間半早く着いた。
それというのも本来ならば10時28分着の電車に乗ってきても結婚パーティーには十分間に合うのだが、何となく昨日の一件で康介が奏を連れて家に帰ってきそうな予感がしたので早々に家から逃げてきたーーというわけである。
だって、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。 昨日の今日で どんな顔をして奏に会えるっていうのさ。
気にすんなって言われたって、一応 私にだって羞恥心というものは人並みに備わっているのだよ。
どっちにしても心の平常心を取り戻す為にも、しばらくは私をそっとしておいて欲しい。
私は駅舎の外のベンチに移動し、いったん座るとバッグから結婚パーティーの招待状を取り出して見つめる。
「………家から外出する理由としては助かったケド、ホントに いいのかなあ? 仕事ならともかく部外者が参加するなんて。しかもこんな格好だし」
そんな私の格好とは、深緑色のブレザーに白ブラウス、胸元にはエンジ色のリボン、そしてグレー色のチェックのプリーツスカートの緑峰学園高校の制服を着用している。
「………『ヒーロー』君は制服でいいからって言ってたから一応着てきたケド、他の人と比べたらかえって悪目立ちし過ぎないかな? だけど、お母さんのフォーマルスーツは着るのイヤだしーーー」
私は昨晩 母に明日、結婚パーティーに行くと告げたところ、私がきちんとしたフォーマルを持っていなかった事もあり、母が自分のフォーマルスーツを着るよう薦めてきたが、母のスーツは若い娘が着るようなデザインじゃなかったので断った。
そして会費も要らない事を話すと、「たとえ そうだったとしても、参加させて頂くからには他の招待客と同じように会費は持って行きなさい」ーーと母が会費を包んで持たせてくれた。
そんな母に感謝しつつ、私もさすがに手ぶらじゃちょっとな~と思い、行く途中にある花屋さんでちょっとしたお花のアレンジメントを買って持っていこうと思っている。なので理由はどうあれ、時間的には丁度良かったのかも。
「ああ~ それにしても、ここまで思い出せないだなんて私の記憶力ってホントに悪いんだな。こんなんでよく緑峰学園に入れたのが自分でも不思議だよ。
………『柏木ヒーロー』君。変わった名前だし、知り合いなら覚えていないはずないんだけど。
そういえば康介に聞き忘れたな。康介なら同学年だし、もしかして彼を知っているカモ?
だけど逃げてきた手前、今、聞くわけにもいかないし。しかも私が過去にセクハラして彼にトラウマを植え付けただなんて知ったら今度こそ姉弟の縁切られそうだしな~」
私は招待状をバッグにしまうと、ベンチから腰を上げる。そして空を見上げながら腕を伸ばして背伸びをした。
「まあ、自力で思い出せないものは仕方ない! どっちにしろ今日『ヒーロー』君から教えて貰えるはずだし、それできちんと誠意を持って謝罪してなんとか許して貰おう!」
そして私は気を取り直すと、まずは駅前の花屋さんへと向かう事にした。
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