2 / 4
言葉を発せなくても
しおりを挟む
一般の病室に移されたあと、初めて面会した時、母は、言葉を発することができなくなっていた。
しかし、一見、眠っているように見えても、私の様子や言葉はわかっているようだった。
短期間だけ事実婚状態にあった人のことを、彼が単なるご近所さんだった頃のように、
「Yさん、母国に帰ったよ」
とだけ伝えた。
一度だけ彼と一緒に特養を訪れた時も、ご近所さんの一人が一緒に来てくれたという感じで会話をしただけだ。
あの時の帰り際、彼に「よろしくお願いします」と言ったのは、ご近所さんとして、という意味だったのかどうか、今は知る由もない。
(母は、彼の奥さんの死を知らないはずだけど。)
「一回だけは結婚してみたら?」
と言われていたのを、事実婚という形で果たしたことは、言わずに終わった。
病室を出ようとすると、
「あー、あー」
と、言葉にならない声を発して、引き留めようとしているのを全身で伝えてきた。
「今、新しい感染症が流行っていて、15分しか面会できないの。また来るからね」
と言うと、承知した様子で引き留めるのをやめた。
昨今の状況を思えば、短時間だけでも面会できるだけ、まだましなのかも知れない。
母の入院先を訪れるのは、所要時間や体力的な面で楽ではないけれど、通院のついでに出来るだけ行くことにした。
自宅から行くよりは、多少はましだ。
しかし、一見、眠っているように見えても、私の様子や言葉はわかっているようだった。
短期間だけ事実婚状態にあった人のことを、彼が単なるご近所さんだった頃のように、
「Yさん、母国に帰ったよ」
とだけ伝えた。
一度だけ彼と一緒に特養を訪れた時も、ご近所さんの一人が一緒に来てくれたという感じで会話をしただけだ。
あの時の帰り際、彼に「よろしくお願いします」と言ったのは、ご近所さんとして、という意味だったのかどうか、今は知る由もない。
(母は、彼の奥さんの死を知らないはずだけど。)
「一回だけは結婚してみたら?」
と言われていたのを、事実婚という形で果たしたことは、言わずに終わった。
病室を出ようとすると、
「あー、あー」
と、言葉にならない声を発して、引き留めようとしているのを全身で伝えてきた。
「今、新しい感染症が流行っていて、15分しか面会できないの。また来るからね」
と言うと、承知した様子で引き留めるのをやめた。
昨今の状況を思えば、短時間だけでも面会できるだけ、まだましなのかも知れない。
母の入院先を訪れるのは、所要時間や体力的な面で楽ではないけれど、通院のついでに出来るだけ行くことにした。
自宅から行くよりは、多少はましだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技
MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。
私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。
すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。
そんな方に言いたいです。
アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。
あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。
アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。
書いたまま放ったらかしではいけません。
自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる