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“終わり”を感じた夏の日

まるで、古代遺跡を見たような気持ち

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遠い昔に恋した人と同じ月日ときを過ごした建物が、まだ残っていた。
もう取り壊されたと思っていた、あの建物が──。


駅との距離を、勘違いしていたんだね。
今日のような酷暑こくしょの日、駅まで一緒に歩いたのは途中からだった。

取り壊されたんだ……と寂しくなったあの日、一緒に歩き始めた所に建物がなくて、勘違いをしたんだ。


同じ建物で同じ月日ときを過ごしていても、不思議と同時に出て一緒に歩く機会がなかったよね。

──あの時も同時には出なかったけど、途中から駅まで一緒に歩けた。
心がかよい合っているのを感じながら、たった一度きりでも……。


視界の全てが淡いパステルカラーで色づいているような、“長い数分間”だった。


それで想いを深めていって……、深まり過ぎてしまったのかもしれない。

それから程なく、恋は終わった。

私の気持ちの中では、ずっと線香花火の終わりかけのように、くすぶっていたけれど……。



──10年後──



まだ残っている建物を見て、ようやく“終わり”を感じることができた。
「もう想い出に変わったことなんだ」と、古びた建物に告げられた。

そっくりな若者に会えたことは、きっと“終わり”の前触れだったんだ。


長い、長い線香花火が、ようやく終わった。



あの時は、嬉しかったよ。
さようなら。
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