ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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全部君のため≪北斗≫【1】

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男と女、男と男ーーいや、今これは関係ないな。


男と女が長いこと同じ時間を過ごせば、いつしか友情が恋に変わってたっておかしくない。


学校で一緒に過ごしたり、バイト先で仲良くなったり、ありふれた時間ですら恋の花が咲くわけで、ましてや過ごす時間がめっちゃ濃いなら、恋に落ちるのにさほど時間はかからない気がする。


「アリーチェ!」

ガキィイイインッー

「クッ!」


アリーチェに斬りかかった大剣を剣で受け止めれば、予想以上に重い一撃によろめく。

「ホクトッ!」

「アリーチェ下がれ!ジョルジャ!」

「慈愛溢れる母なる大地よ、我らに恩恵を!」


ジョルジャの呪文で魔族と俺の間に土壁が出現する瞬間、素早く後ろに飛んで避ける。

土壁は魔族の動きを阻害するため、四方を囲んだ。


「うぉおおおおーー!!」

雄叫びと共に繰り出された力強い剣の一撃が容易く土壁を破壊した。

モウモウと立ち込める土煙の中の魔族へと跳躍し、振るった剣を大剣で防がれた瞬間、蹴りをお見舞いし、よろけた魔族を今度こそ剣で倒した。




月光の道の見える湖のほとり、都会ではお目にかかれないほどの無数の煌めく星が、俺とアリーチェを見守っている。


「この辺りから、だんだん魔族も強くなってきましたね。」

「そうだね。」

「わたくし達に、本当に魔王が倒せるのでしょうか…」

パチパチとはぜる焚き火を眺め、アリーチェが心細げに呟く。

「う~ん…、どうだろね。」
「こういう時は嘘でも『必ず俺が倒してみせる!』とか言って安心させるものではないのですか!」

「ちょっ、アリーチェ様、声デカいから。他の人起きちゃうから。」

「『様』は要らないと申したはずです!」

「シーッ、静かにアリーチェさー、アリーチェ。公の場でウッカリ呼び捨てしちゃ不味いからさ。普段から付けて呼んでおかないと。」

「戦いの場では呼び捨てにしているではないですか。」
「あ~、まぁ、ああいう非常時は別っていうか。」

「わ、わたくしは、ホクトには呼び捨てにされたいのです。王女としてではなく一人の女性ーーい、いえっ、に、人間!そう、一人の人間として見てほしいのです!」


アリーチェの頬が赤いのは、炎のせいだろうか?

「アリーチェ。」

「な、なんでしょうか。」

「隣にいってもいい?」

「何故です?」
「アリーチェの近くにいきたいから。ーー駄目?」

「し、仕方ないですわね。ホクトがどうしてもというのでしたら、隣に来ることを許可しますわ。」

「ありがと。」


異世界召喚、勇者に魔王。討伐メンバーは、可憐な王女と美少女達。ーーそんな状態に身を置くことになったなら、年頃の男としてはモテモテハーレム勇者になりたいと、誰だって思うだろう。

でも俺はハーレム勇者なんてなりたくない。ただ一人の女性を想い、そして想われたい。

一途に誰かを想う心こそが、カッコいい。


「アリーチェ。」
「なんでしょうか。」

「アリーチェを想う権利を俺にください。」

「ホクト、それって…」


そろそろ見張りの交代の時間がくるし、次の見張りを起こさないといけないんだけど、見つめ合う俺たちは動かないーー動けない。


アリーチェの瞳に熱を感じるのは俺の願望だろうか?

それともー


どちらからともなく近づいた俺たちの影が重なった。





◆◆◆



先を急ぐ俺たちは暫く野宿続きだったが、疲労もピークに達したため、宿に泊まることにした。


コンコンー

「開いてるよ。ーーアリーチェと買い物だったんじゃないの?」

「…ホクトに話があって。」
「話?」
「ホクトが好きなの!」

「ジョルジャ…」


俺とアリーチェが恋人になったことは、仲間たちにはキチンと伝えてある。黙ったままでいるなんて、騙してるような気になるから。


「ごめんジョルジャ、俺はアリーチェのっーー!?」


ジョルジャにキスされた。

不可抗力だが、避けられなかったかといえば、避けれた。ーー決して疚しい気持ちで避けなかったわけではない。避けたことにより、ジョルジャが万が一怪我とかしたら大変だなって。


「ちょっ、っんん!…ジョルジャ、っ落ち、…ん、着っ」



ヤッベこいつ、キス上手いんだけど。



気がつくとベッドに押し倒されているという…

積極的過ぎだろ。


「年頃の男に何て大胆な…」

あー、俺の理性がちょっと…


「ホクトがアリーチェ様の恋人なのは分かってる。頭では分かってるけど、好きな気持ちは膨らむばかりなの!諦められないの!…一番じゃなくて良いから、多くを望まないから…、決して困らせたりしないって誓うわ!だから、だからお願い…私を好きになってよ…」


ジョルジャの告白を聞いてるうちに、理性が仕事をしてくれた。


「ジョルジャごめん。俺にはそういうこと無理。」

「分かってた…。ホクトみたいな誠実な男性が、受け入れてくれるはずないって。」


ジョルジャの涙が俺の頬に落ちた。

ノロノロと身体を起こし、ジョルジャが部屋を出て行く。

ジョルジャの後ろ姿が切なくて、思わず抱き締めて慰めたい気持ちに駆られたけど、それは流石にやっちゃ駄目なことだから、グッと堪えた。

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