ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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嘘だと言ってよ≪灘流≫【1】

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その光景に、心臓が、止まるかと思った。


前世入れたら四桁生きてる俺の、衝撃出来事ベスト5に入るほどの衝撃。


「……姉ちゃ、ん…?」


力が抜け、今にも座り込んでしまいそうな足を、なんとか動かす。


何かの間違いだ。うん、間違いに違いない。またいつもの悪ふざけで、俺をからかってるだけだよね?



こんなのはあり得ない。

俺の勘違いでしょ?


ねえ、今すぐそうだって言ってよ。



手が震えてしまうのを抑えるようにギュッと握った。


祈りながら、願いながら、フラフラと吸い寄せられるように、倒れている姉ちゃんに近寄る。


何時ものように、からかってるだけだよね?焦る俺を眺めたいだけなんでしょ?


「姉、ちゃ……」


声が、情けないくらい震える。

何で呼び掛けてるのに返事してくれないの?

何で俺を見てくれないの?







姉ちゃんの頭上に綴られてふわふわと浮かぶ文字をボンヤリと眺める。


見間違いの可能性にすがりながら…。





“ホクト”



淡い期待は呆気なく裏切られた。



「ちょっ、姉ちゃん、ホクトって誰!?どこのどいつ!?俺知らないんだけど!いつ何処でどんな風に出会ったの!?何歳!?詳しく聞きたいんだけど!ままままさかすすすす好きな男じゃないよね!?口で告げるのが恥ずかしいから大好きなあの人の名前を綴って教えちゃうぞってノリなの!?俺の知らないとこでデートしてるの!?今流行りのデートスポット特集してる雑誌とか参考にしてデートしたの!?もうチュウとかしちゃってるの!?違うよね!?違うって頼むから言って!ああもう俺めっちゃ泣きそうなんですけど!」


半身を起こし、肩を掴んでガクンガクンしたのに、ピクリともしない姉ちゃん。


こ、これは




成りきりオポッサムで死んだふりとみた。


「ちょっと、姉ちゃんてば答えてよ!」


ピクリともしない。


「…姉ちゃん?」


姉ちゃんの身体を俺に寄り掛からせる。


胸は呼吸時の動きをしておらず、口元に翳した手に息もかからない。



こ、これは





成りきりオポッサムで死んだふりだ(確定)



チャンス!



鼓動を確かますよ的に胸に手を


「…」
「…」


当てる前に姉ちゃんが目を開けた。


チャンスがピンチにシフトチェンジ(蒼白)


「灘流。」
「は、はい。」

「カエルには、体の機能を停止させることが出来る種類のものが居ます。脳や心臓、呼吸だって止めちゃえます。そうやって何週間も死骸っぽく過し、目覚めの日が近づくと、なんやかんやでエネルギー放出で静電気のスパークで、心臓にショックを与えて甦るのです。」


オポッサムと決めつけていた俺を責めているのですか。オポッサムよりカエルの方が高度な技術だと言いたいのですか。心臓を自在に操れるのですか。自慢話ですか。練習すれば俺にも出来ますか。講習会はありますか。講習料はいくらですか。いつの間に人間辞めたのですか。この胸の内の溢れる思いを告げてもいいですか。


「灘流。」
「何?」

「美味しいチーズが手に入ったよ。」

「それって島で売ってるってチーズ?」
「うん。」

「マジで?よく手に入ったね。」

「行った人が買って来てくれた。」

「へぇ。……もしかしてホクトって奴が?」

「灘流に、どうしても伝えたいことが。」
「……何。」


やっぱり付き合ってるの?
そんな話は聞きたくないよ…







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