怠惰な蟲使い(仮)

胸の轟

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〈2〉

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「怖いの?」


怖いかって?ああ、怖いね!


小首をかしげる姿はどこまでも愛らしい。けれどもう、それを手放しで見蕩れることは出来なかった。

何故気付かなかった。容姿にばかり気がいって、声に今さら気づく。──あの日逃げようとして逃げきれなかった相手と同じ声だってことに。


自分が死ぬまでに沢山の人間の腹を裂きたい僕は、邪魔な存在に、より早く気が付くよう殺す時には神経を研ぎ澄ませ、お楽しみの最中は察知を最大にしているが、普段の生活をしている時はそこまで張り詰めてはいない。だから気づくのが遅れた。

人は見かけで判断出来ない──してはいけない。そう日頃から肝に命じていたというのに。目の前の相手の美貌に惑わされ、それも気付くのが遅れた要因でもある。──なんという失態。

あの日気配が完全に消えたと確認出来た後、尾行を恐れ念には念を入れ、普段使わない道をあちこち通り、遠回りしてから帰宅したというのに、どうやら後をつけられていたようだ。

何もかもが無意味だった。

こうして態々店までやって来て、僕の秘密を知っていることを明かしにきたことの意味を考える。

何が目的だ?──金か?それとも───・・・・・・僕の命か?

気まぐれで見逃した命を、今度は気まぐれで奪おうというのか。


嫌だ死にたくない!まだ僕は殺し足りないんだ!もっともっと腹を裂きたい!もっともっと溢れる臓物の匂いを楽しみたいんだ!

半狂乱で隠していた武器に手を伸ばせば、素早く掴まれ、手刀を叩きこまれた。

「っ!!」


流れるように頭を掴まれ膝蹴りを顔に喰らう。

「おごっ!!」


嫌な音がしたから、恐らく鼻の骨が折れた。
激痛とともに中と外に血が流れ、血の味がする。

掴んでいた手を放され、よろけたところ首を掴まれた。

「・・・ぐ・・・ぅ、ぅ・・・」

ぎりぎりと絞まる気道に意識が無くなる寸前、首の圧迫感から解放された。

「ゴホッ、ゴホッ・・・」

死ぬかと思った・・・。


「仲良くって言ったのに、襲いかかってくるとかものすごく傷付くんですけど。」

正しくは武器を取る前に防がれ未遂な訳で、寧ろこっちがものすごく傷付いてますとは恐ろしくて言えない。

「傷付いた心には癒しが必要だと思うんだよね。お前はそこのところどう思う?」


何かを要求してるのは分かった。──それが何なのかは分からないが、速やかに居なくなってほしくて首を縦に振る。


「物分り良いヤツって俺は好きだよ。──そんな物分りの良い女装君は、勿論俺が何を望んでるか分かるよね?」


何だ?何を望んでる?僕に出来ることは何だ?──さっぱり分からない。──おそるおそる菓子を差し出してみた。




正解だった。


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