命を燃やせ!! 撃鉄を起こせ!! 5.45ミリの女神に祈りを!! 転生したヨウヘーさん

平澤唯

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第二章 巣立ち

第三話 食堂

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 食堂内は薄暗く、オイルランプの証明が天井から吊るされていた。

荒くれ者は中心を陣取りがやがやと騒がしく、そこから数席空き、隅の方で商人達は周りを気にしながら固まって食べている。

洋平は商人の近くの席を取った。

程なくしてウェイトレスがやってきた。

二十ほどの若い娘でお盆を持ちながら駆け寄ってくる。

「注文何が良い?」

「ココではナニが食えル」

「あんた、ここらの人間じゃないね。そうだねぇ~。おすすめは豆の煮物とパリパリベークンの合わせとパンかねぇ。ここのは一味違うからねぇ」

「ベークン?」

「ああ。ベークンさ」

「ベーコンじゃナクって?」

「なんだいベーコンって。似た食べ物かい?」

「豚肉ノ塩漬け肉ダ。ソノベークンはナンだ?」

「あんた豚なんてきったねえ生き物食ってたのかい? あたいらよりよっぽど生活が困窮してたんだね…。あぁ、そのベーコンってのと似た作り方かもしれないんだけど、ベークンってのはあのランドラゴンいるだろ? あれのヒレ肉を塩漬けしたもんだよ」

「じゃぁソレをクレ」

「あいよ! 飲み物は?」

「水デいい」

「なんだい。水だなんてしけてんねぇ。男ならエールでも煽らなきゃねぇ!」

小言をいってウェイトレスは去っていった。

再び堂内を見回すと、ウリャーナもウェイトレスと同じくお盆を持って注文を渡しまわっていた。


「…ここらで腕の立つ奴らといえばなぁ…」

「…でもアイツらは盗賊だぜ。やめといたほうがいいぜ…」

「…俺の知り合いの商隊も用心棒選びミスっちまってよ、積み荷の半分かっさらわれて大目玉食らったって言ってたぜ…」

「…困ったなぁ…」

(用心棒か…。要人護衛隊が懐かしいぜ)

「ククククク…」

洋平は席を立ち、商人たちに近づいた。

「銃士ノ用心棒はイラナイか?」

「何だね、君は!?」

面食らったように各々洋平に視線を飛ばしている。

「アンタタチは用心棒イル。違うか?」

「え…、いや、まぁそうだが。あんたが誰だと聞いてるんだ」

「オレハヨウヘーだ。腕ハ保証スル」

商人たちは見合わせ、ブツブツと言い合っている。

しばらく話し合っている様子だったが、内の一人、立派な立派なカール巻きの男が口を開いた。

「ダメだ。大体あんた、この国の人間じゃないだろ。見たところ、その平たい顔はヒーヅェルの民っぽいが、しかし訛りがほとんど無い。そんな良くわからない相手に大事な商品を任せられるわけなかろうて」

うんうんと頷く商人たち。洋平の目は商人たちをギラリと覗いている。

「用心棒ノ相場ハ?」

「相場?」

商人たちの目が疑心に染まっていく。

「オレは元々傭兵ヲしてイタ。ソノ時の相場は…ソウダなぁ。五月分ダカラ、ザット………。二七〇〇〇デーミスだ」

一人がそろばんを出し、玉を弾き出す。

「二七〇〇〇デーミス…、どれどれ。白銅貨七枚と青銅貨三〇枚か…。まぁ少し高いが、相場と同じくらいか…。だが、それがどうしたのだ。」

「初回ダ。安クしてヤル。ソウダなぁ。半額デどうダ?」

「一三五〇〇デーミスか…。良心的ではある…。だが、だめだ」

カール髪の決意は硬い。

「俺の友人の商隊は見知らない用心棒を雇って、積み荷の半分をかっさらわれて大目玉を食らっている。お前がそうしない保証は?」

洋平はため息をつくと肩をすくめて答えた。

「オレ、盗賊団ミタイ、大人数ニ見エルか? 積荷はイラナイ。一人デ持ち出せナイからナ」

「それにあんたの用心棒としての腕前の保証は? しかも、あんた今、あんた一人って言ったろ?! それじゃあんた一人に一三五〇〇は高くないか。まさかあんたで国を消しされるんなら、ねぇ…」

嘲笑が渦巻いている。

「ハァ…。昔国ノ要人警護を任さレタ。ダガ、言葉デハなんとデモ言えル。腕前の保証ヲ仕事前にデキルワケナイ。ダカラ半額ナンダ。ソレデモダメなら何ガ欲しイ?」

顔を見合わせる商人たち。更に畳み掛ける。

「お前タチは用心棒ガ必要ダ。ココラで、マトモな用心棒を探すにしても、骨が折れルだろう。だから、オレを雇ウのは悪イ話ではナイはずダ。ソレトモ、アイツラにデモ頼むカ?」

堂内の中心の荒くれ者を指差す。

気持ちよく飲んでいるような顔から獲物を見るような鋭い視線が商人たちに投げられる。

「何見てんだよ! ぶっ殺すぞ!」

「モシ、オレの提案が高スギルのなら、アイツラに口添エしてヤルよ、カール巻きさんヨ」

その内の、恰幅の良い商人が言った。荒くれ者を見て引きつった顔を見せる商人たち。

「担保が必要だな。目的地に着いたらこれを返す。これでどうだ?」

「担保カ…。ナラコイツでドウだ」

 テーブルに腿から引き抜いたクロを叩き落とす。

「銃か…。銃なのか…。見たことの無い形だ」

置かれた拳銃を手に取り眺めている商人たち。

(マガジン抜いてて良かった。持ち方が危ない…)

「商売道具を担保に置くのか?」

恰幅の良い商人が驚きと疑念で答える。

「モウ一つ持ってイル。言っタ通リ担保ダ。商売道具デ大事ナ相棒だ。だが、珍シイのナラコレクターにでも売レば金ニなるダロウ」

「確かにこんなものは見たこと無い。見た所、部品の作りも一級品だ。本物か偽物かはさておくとして、担保にはなりうる品だろう。相分かった。アンタを雇おう。でも雇うからにはそれ相応の仕事をしともらう」

「任せロ。出発はイツだ?」

「出発は明日だ。明日の朝、そうだな、九刻辺り日時計集合でいいだろう」

「明日朝…。早スギル…」

「無理ならいいさ。他をあたる」

しばらく無言が続いた後、洋平が口を開いた。

「ワカッタ…。日時計はドコにある?」

「あの見張り塔の建物の下にある。そこで集合だ。遅れるなよ」

「おーい。異国人さんや? 飯持ってきたよ。って、食わないのかい?」

ウェイトレスに呼ばれ、洋平は自分の席に戻った。





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