上 下
170 / 912

嘘だろ!?

しおりを挟む
「嘘だろ!?」

 俺は思わずそう呟いていた。

 いや、確かに今までも結美は強かったが、ここまで圧倒的な強さではなかったはずだ。

(いったい何があったんだ? 明らかにパワーアップしすぎだろ!)

 ちょっとトレーニングしてきましたってレベルじゃないのが本当に意味わからない。

 ずっと一緒にいたのにこれはないだろう。

「スノウちゃん、念願の凍神龍討伐おめでとう」

 と言われているが明らかに1番動揺しているスノウ。

 今まで凍神龍を倒すために人生を費やしていただけにこの結末はどう表現していいのか理解できていないようだった。

「えっ...ああ...、ありがとう」

(ほらっ! めっちゃ微妙な顔してるじゃん! トドメの一撃くらい譲ってあげても良かったんじゃないか!?)

 結果的に強力なモンスターである凍神龍は結美の圧倒的な火力の前に倒れ、この大地に生の息吹が蘇り始めた。

「うはっ! あったけぇ!」

 雪が一気に溶け始め、春1番の暖かい風が辺りを通り過ぎていく。

「...これが春!」

 微妙な表情をしていたスノウもこれには満面の笑みを浮かべていた。

「これが花! これが青い空! これが凍っていない新鮮な空気! やったぁ!!!」

 ドサッと生まれたばかりの花や草の上に倒れ込む彼女は本当に嬉しそうだ。

「よかったねスノウちゃん。念願の春が見れてとても嬉しそう」

 結果よければ全て良し...という事にしておくか。

 俺は『クロウズ』と『メイラーズ』の面々を氷漬けの状態から元に戻すと凍神龍の素材をどう分配するかの擬論を行うのだった。
しおりを挟む

処理中です...