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パチパチパチ

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 パチパチパチ。

 結美の父さんが手を叩きながら俺の名前を呟いた。

「素晴らしいな高坂和希君」

「結美の父さん」

 彼は俺の肩を叩きながら「想像以上だ。娘の事は頼んだぞ」と言ってくる。

 明らかに気が早いのだが、いいのだろうか?

「パパッ♡ カズ君を認めてくれてありがとう!」

 再びパパに抱きつく結美。

「ああ、この子なら大丈夫だ。まさか土谷を倒すとは思わなかったからな。それにまだまだ奥の手を隠しているんだろう?」

 そう言われた俺は思わずギクリと唸ってしまう。

「やっぱりな。あれだけ戦えてさらに力を隠しているとは...。まさしく結美の王子様だ」

 完全に俺の事を認めたのか物凄く饒舌に語る。

「まさか一般の家の子供に娘を託す事になるとは思わなかったが、これも運命ってやつだろうな。もう一度言っておく。娘を絶対に幸せにしてやってくれ。それはきっと君にしかできないことだ」

 笑顔でそう呟いてくる彼の笑みは凄く柔らかい。

 本当に娘を俺に託す人の表情だった。

「...はい。結美を必ず幸せにして見せます!」

 俺は思わずそう叫んでいた。

「カズ君...! 私...嬉しいよ♡」

 ほんの少し涙を流した後、彼女は俺に擦り寄ってくるのだった。
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