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獣王の娘②

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 ミルティはどうにかしてラセルの攻撃後の隙を狙っているようだったが...。

「いや...本気でムリ。全然素早くないのに攻撃速度が速すぎて近づけない」

 と彼女は声を漏らした。

 確かに素早さではミルティが圧倒的に勝っているのだが、近づいた時に振るわれる大剣の攻撃速度が尋常ではないのだ。

 恐らくラセルの腕力があまりにも卓越しているので、攻撃速度が頭のおかしい速さになっているのだと思われる。

 彼女が剣を振るう度に辺りの空気がビュンビュンと鳴っているからな。

 戦闘中の彼女の素振りを見ていると近寄りたくないなと思ってしまう。

 もはや剣を振った後の風圧のみで一般人を殺せてしまいそうな威力を発揮しているからな...。

 何度突撃しても簡単に返り討ちにされ続けたミルティはこのままではどうしようもないと踏んだのか【バースト】状態になった。

「もう手加減しないよ! もっとスピードを上げてラセルの攻撃速度を乗り超える!」

 更に早くなったミルティの動きに即座に反応するラセル。

 接近された直後に武器を捨ててミルティの腰を掴む。

「へっ!?」

「これで終わりです」

 そのまま地面に叩きつけて頭が突き刺さるミルティ。

 尻から上だけ見えているが、あれ死んでないよな?

 ピクピクしているのでまだ生きているだろうが、直ぐに助けに向かう。

 俺の登場に気がついた時、ラセルは軽く一礼をして話かけてくるのだった。
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