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内なる恐怖心

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「ぐっ...!」

 思わず後ずさる私を見て大男は笑う。

「どうしたんだ? まさか一回の攻防で怖気付いたんじゃないよな?」

(...多分私の心は今目の前の男に屈している)

 お札を10枚も使った封印術が全く効かなかったことなど今まで一度たりともなかった。

 しかし、10枚のお札を一瞬で焼き切ったと言うことは、今回の相手はそれだけの相手だと言うことが予想できてしまうのだ。

「その程度の実力で俺に刃向かうつもりじゃなかったんだよな? あっ?」

 恐怖心で腰が抜けてしまい、そのまま戦闘を行うことができなくなってしまった。

 まだまだ戦えるだけの余力はあると言うのに、心が負けてしまっていては体もついてこない。

「黒木先輩! 立ってください!」

 後輩である時国君がまだ諦めずに戦っていると言うのに、私はなんて不甲斐ない先輩なのでしょうか?

 完全に意気消沈と化した私を見て大男は舌打ちをした。

「ちっ! 本当に限界かよ。もう少し楽しめるかと思ったんだがな」

 そう呟きながら私に手のひらをかざして魔力の糸のような物を放ってくる。

「心の死んだ奴を操るのは簡単なんだよ。じゃあな黒髪の嬢ちゃん」

「黒木先輩!!!」

 時国君の叫ぶ声が聞こえてくるが、それ以降は何も聞こえなくなってしまうのでした。
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