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命の謝罪③

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 俺は小日向の実家に向かう。

 彼女の実家が見えてくると少しずつ足取りが重たくなってきた...。

 表札を見ると小日向家と書いてあったので多分ここだろう。

 インターホンを鳴らすと中から女性が現れた。

「は~い! あら? どちら様ですか?」

 と聞かれたので俺は名を名乗る。

「はじめまして。小日向美穂さんの部活動の先輩で高坂和希と申します」

「高坂...? ああっ! 美穂の部活動の先輩の!? そんな所に立ってないで家の中でゆっくりしていってくださいね」

 とフレンドリーな方なのは良いが、これから冷酷な事を告げなくてならないと思うと肩が重い。

「...実は小日向美穂さんのことなんですが」

 そこまで言いかけると美穂の母さんは笑顔でこう呟いていた。

「そうそう、美穂はね高坂さんの隣にいる事を私に自慢してきたんですよ。憧れの高坂さんの横に立てるまでになったよっていつも言ってました」

「...そうなんですか」

「それだけではないですよ。親の私から言うのもなんですが、美穂は高坂さんのことが好きなんですよ」

「...小日向が?」

「はい、私の命を助けてくれた恩人であり好きな人だって言っていました。そんな貴方と仕事ができる事を誇りに思っていたようですし、高坂さんが宜しければ娘をもらってやってくれませんか? 今はなんか音信普通なんですけど、あの子の事だからきっと花嫁修行でもしてるんだと思います」

 そう笑顔で言われるとこっちが発言するのが厳しくなっていく。

「...」

 意を決した俺は小日向の母さんに真実を伝えるのだった。
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