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其の弐 桃日絆希と篠懸才児のケース
あの子
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そのノートには、特定の人物をあらゆる角度から写した写真が貼り付けてあり、その横に写真の人物の名前や身体的特徴がメモ書きされていた。
私はその人物達の顔に見覚えがあった。いや、あり過ぎた。ノートに記されていたのは、一年前に私を暴行し、半年前に謎の事件に巻き込まれ亡くなった男子高校生達の情報だった。
私はショックのあまり言葉を失った。それは、ノートの内容もそうだが、メモ書きの字。この整った字は間違いなく想代香のものだ。
「なんで…? なんで想代香がこんなものを…?」
ページをめくると、また想代香の字で、"許せない"、"絆希をひどい目に合わせた"、"絶対に許せない"...ノートを真っ黒に埋め尽くす程の男子高校生達への呪いの言葉が書き連なっていた。次のページも、そのまた次のページも............。
私は怖かった。けど、それ以上に悲しかった。私が"あのこと"を話したばっかりに、想代香は...。想代香は...! 私は唇を噛み締めながらただひたすらにページをめくり続けた。
そして、辿り着いた最後のページには、一際大きな字でこう書かれていた。
"私に出来ることはもうない。あとはあの子に任せる"
想代香は一体誰に、何を任せたのか。私にはその言葉の意味は分からなかった。ただ無性に悲しくなって、そのノートを抱きしめて私はひとしきり泣いた。
◇
「絆希ちゃん!? どうしたの!?」
暫くして様子を見に来た内香さんが、私の異変に気づき慌てて駆け寄ってきた。
「のぶがざん...わだじ...グスッ...わたしが想代香を...うぅ...」
目から溢れ出る涙は、その勢いを止めることはなかった。内香さんは何も言わず、私を抱き留めてくれた。あたたかい。でも、本来その暖かさを受けるべき想代香は、もうこの世にはいない。そう思うと余計に涙が溢れて来て、私はとうとう声を上げて泣いた。
そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。ようやく私が泣き止んだころ、内香さんはぽつりとこう言った。
「絆希ちゃんがここで何を見たのか、私には分からないし、あえて聞かないわ。でも、これだけは分かって欲しい。想代香は、絆希ちゃんがいたから幸せだった。それは、母である私もそうよ」
「はい………。わたしもです」
「絆希ちゃんは、きっと想代香を想って何かしてくれているのでしょう? でも、絶対危ないことはしちゃダメよ。絆希ちゃんには、生きていて欲しいの。それは、私達親子の願いでもあるからね」
内香さんは私の頭を優しく撫でながら、にっこりと笑った。その笑顔には、確かに想代香の面影があった。
「さ、ご飯にしましょう! お腹がいっぱいになったら、いつもの元気な絆希ちゃんが戻ってくるはずよ」
私はたくさん食べた。自分の分も、想代香の分も。色々な迷いや悩みや後悔も、全部内香さんの作ってくれたご飯と一緒に飲み込んだ。
「ごちそうさまでした!!」
「はい、お粗末さまでした」
「とっても、とっても美味しかったです!」
「良かった。私も作った甲斐があったわ」
「内香さん」
「なぁに?」
「絶対、またご飯食べにきますから!!」
私は満面の笑みでそう言った。内香さんも、綺麗な笑顔で答えてくれた。内香さんに別れを告げ、家路につく。
ノートに書かれていたあの子とは、一体誰なのか。今は分からないけど、篠懸さんとならその正体が見えてくる気がした。スマホを取り出し、以前登録した篠懸さんの携帯にコールした。
私はその人物達の顔に見覚えがあった。いや、あり過ぎた。ノートに記されていたのは、一年前に私を暴行し、半年前に謎の事件に巻き込まれ亡くなった男子高校生達の情報だった。
私はショックのあまり言葉を失った。それは、ノートの内容もそうだが、メモ書きの字。この整った字は間違いなく想代香のものだ。
「なんで…? なんで想代香がこんなものを…?」
ページをめくると、また想代香の字で、"許せない"、"絆希をひどい目に合わせた"、"絶対に許せない"...ノートを真っ黒に埋め尽くす程の男子高校生達への呪いの言葉が書き連なっていた。次のページも、そのまた次のページも............。
私は怖かった。けど、それ以上に悲しかった。私が"あのこと"を話したばっかりに、想代香は...。想代香は...! 私は唇を噛み締めながらただひたすらにページをめくり続けた。
そして、辿り着いた最後のページには、一際大きな字でこう書かれていた。
"私に出来ることはもうない。あとはあの子に任せる"
想代香は一体誰に、何を任せたのか。私にはその言葉の意味は分からなかった。ただ無性に悲しくなって、そのノートを抱きしめて私はひとしきり泣いた。
◇
「絆希ちゃん!? どうしたの!?」
暫くして様子を見に来た内香さんが、私の異変に気づき慌てて駆け寄ってきた。
「のぶがざん...わだじ...グスッ...わたしが想代香を...うぅ...」
目から溢れ出る涙は、その勢いを止めることはなかった。内香さんは何も言わず、私を抱き留めてくれた。あたたかい。でも、本来その暖かさを受けるべき想代香は、もうこの世にはいない。そう思うと余計に涙が溢れて来て、私はとうとう声を上げて泣いた。
そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。ようやく私が泣き止んだころ、内香さんはぽつりとこう言った。
「絆希ちゃんがここで何を見たのか、私には分からないし、あえて聞かないわ。でも、これだけは分かって欲しい。想代香は、絆希ちゃんがいたから幸せだった。それは、母である私もそうよ」
「はい………。わたしもです」
「絆希ちゃんは、きっと想代香を想って何かしてくれているのでしょう? でも、絶対危ないことはしちゃダメよ。絆希ちゃんには、生きていて欲しいの。それは、私達親子の願いでもあるからね」
内香さんは私の頭を優しく撫でながら、にっこりと笑った。その笑顔には、確かに想代香の面影があった。
「さ、ご飯にしましょう! お腹がいっぱいになったら、いつもの元気な絆希ちゃんが戻ってくるはずよ」
私はたくさん食べた。自分の分も、想代香の分も。色々な迷いや悩みや後悔も、全部内香さんの作ってくれたご飯と一緒に飲み込んだ。
「ごちそうさまでした!!」
「はい、お粗末さまでした」
「とっても、とっても美味しかったです!」
「良かった。私も作った甲斐があったわ」
「内香さん」
「なぁに?」
「絶対、またご飯食べにきますから!!」
私は満面の笑みでそう言った。内香さんも、綺麗な笑顔で答えてくれた。内香さんに別れを告げ、家路につく。
ノートに書かれていたあの子とは、一体誰なのか。今は分からないけど、篠懸さんとならその正体が見えてくる気がした。スマホを取り出し、以前登録した篠懸さんの携帯にコールした。
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