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其の弐 桃日絆希と篠懸才児のケース
来訪者
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週末。
私は篠懸さんと集めた情報を共有するため篠懸探偵事務所にいた。篠懸さんはパソコンで何やら作業をしている。ソファに座ってしばし待っていると、作業がひと段落したのかパソコンをぱたんと閉じ、私の対面に座った。
「何か収穫があったようだな」
「はい」
「よし。それじゃあまず…」
篠懸さんはそこで発言を止めた。
「どうかしたんですか?」
篠懸さんはいや、と言うとぶつぶつと独り言を呟き始めた。そして、何かを閃いたようにこう言った。
「よし! まずはお前の集めた情報を聞かせてくれ、モモヒキ」
「二度とそのあだ名で呼ばないでください」
しかし、篠懸さんはそのあだ名を気に入ったのか、私はしばらく"モモヒキ"と呼ばれるようになった。まことに不本意である。
「いつまでもお前、とか少女、と呼ぶのはどうかと思ってな。気にしなくていいから聞かせてくれ」
「むぅ…。これは想代香の書いたノートです。篠懸さんなら何か分かることがあるかもと思って持ってきました」
私は想代香の家から拝借した(内香さんにはちゃんと許可をとりました)ノートをカバンから取り出し、篠懸さんに手渡した。
「少し拝見しても?」
「はい、大丈夫です。でも、結構ショッキングな事が書いてますよ」
篠懸さんはノートのページをパラパラとめくる。時折何かに頷くような様子を見せたが、あるページを境に少し眉をひそめた。
「"これ"は、最後のページまで続くのか?」
これ、とは想代香が書いた男子高校生への恨みつらみの文章の事を言っているのだろう。
「いえ、最後のページに気になることがあって、それを聞こうと思ったんです」
「ふむ、これか。"あとはあの子に任せる"、と。モモヒキ、あの子というのに心当たりは?」
私は首を横に振った。
「分かった。じゃあ今度は俺の番だ。男子高校生達が通っていた高校に聞き込みをしてみた。ある生徒に話を聞けたんだが………亡くなった男子高校生の一人が、死の直前にその生徒に電話をかけて来てこう言ったそうだ。"白い髪の子供が来る"と」
「白い髪の子供、ですか」
「ああ。お前と俺が集めた情報を合算すると、こうなる」
篠懸さんはホワイトボードを取り出し、そこに今まで話した内容を大まかに書き綴った。
「白粉想代香という女の子は、お前のことを襲った男子高校生達を憎み、自力でその実行犯達を突き止めた。さっきノートを見せてもらったが、どの写真も横か斜めからしか撮れていなかったし、画質もあまり良くなかった。プロに依頼したならもっと上手くやるはずだ。そして、その憎き相手に報復する手段を、"あの子"という存在に委ねた。ここまではいいな、モモヒキ?」
「はい!」
「よし。次に、男子高校生達は夜中集まっている時に"何者"かに襲われた。そして、そのうちの一人が仲間に電話をかけた。恐らく助けを呼ぶためだろう。そこで、"白い髪の子供が来る"と言った。つまりは、この"白い髪の子供"が"あの子"を示しているという推論が立つ」
「じゃ、じゃあ、その"白い髪の子供"があの人たちを…?」
篠懸さんの推理が正しければ、想代香は"白い髪の子供"に自身の恨みを託し、その子が直接男子高校生達をその手にかけたということになる。そんな事、現実にありえるのだろうか?
「…集めた情報は、そう"言っている"」
「そ、それってつまり、その"白い髪の子供"は幽霊とか、妖怪とか、そういうたぐいのもので、あの人たちも想代香もとりつかれて殺されたって事ですか?」
「………それは俺にも分からない。それに、今はまだ情報が少ない。もっと現実的な可能性を探る事を優先した方がいいだろう」
そう言って、篠懸さんはホワイトボードに書いた文字を消し始めた。篠懸さんは曖昧な感じで濁したけど、先程少し言葉を詰まらせていた。もしかしたら、何か心当たりがあるのかもしれない。けど、私はあえてそれは言わなかった。
篠懸さんは、言うべき事はちゃんと言ってくれる人だ。信じていますよ。
◇
それから、また"白い髪の子供"について調べてみたり、被害者達が亡くなった場所へ行ってみたり、新たな情報を集めにまた聞き込みをしたりした。しかし、これといった情報は得られず、ただただ月日が経っていくばかり。
「とりあえず、今日は解散にするか」
「そうですね...。続きはまた今度にしましょう」
今日も目立った収穫は無し。篠懸さんと次の日取りを相談しながら帰り支度をしようとした時だった。
ガチャリ
唐突に、事務所の入口の方からドアの開く音がした。
私は篠懸さんと集めた情報を共有するため篠懸探偵事務所にいた。篠懸さんはパソコンで何やら作業をしている。ソファに座ってしばし待っていると、作業がひと段落したのかパソコンをぱたんと閉じ、私の対面に座った。
「何か収穫があったようだな」
「はい」
「よし。それじゃあまず…」
篠懸さんはそこで発言を止めた。
「どうかしたんですか?」
篠懸さんはいや、と言うとぶつぶつと独り言を呟き始めた。そして、何かを閃いたようにこう言った。
「よし! まずはお前の集めた情報を聞かせてくれ、モモヒキ」
「二度とそのあだ名で呼ばないでください」
しかし、篠懸さんはそのあだ名を気に入ったのか、私はしばらく"モモヒキ"と呼ばれるようになった。まことに不本意である。
「いつまでもお前、とか少女、と呼ぶのはどうかと思ってな。気にしなくていいから聞かせてくれ」
「むぅ…。これは想代香の書いたノートです。篠懸さんなら何か分かることがあるかもと思って持ってきました」
私は想代香の家から拝借した(内香さんにはちゃんと許可をとりました)ノートをカバンから取り出し、篠懸さんに手渡した。
「少し拝見しても?」
「はい、大丈夫です。でも、結構ショッキングな事が書いてますよ」
篠懸さんはノートのページをパラパラとめくる。時折何かに頷くような様子を見せたが、あるページを境に少し眉をひそめた。
「"これ"は、最後のページまで続くのか?」
これ、とは想代香が書いた男子高校生への恨みつらみの文章の事を言っているのだろう。
「いえ、最後のページに気になることがあって、それを聞こうと思ったんです」
「ふむ、これか。"あとはあの子に任せる"、と。モモヒキ、あの子というのに心当たりは?」
私は首を横に振った。
「分かった。じゃあ今度は俺の番だ。男子高校生達が通っていた高校に聞き込みをしてみた。ある生徒に話を聞けたんだが………亡くなった男子高校生の一人が、死の直前にその生徒に電話をかけて来てこう言ったそうだ。"白い髪の子供が来る"と」
「白い髪の子供、ですか」
「ああ。お前と俺が集めた情報を合算すると、こうなる」
篠懸さんはホワイトボードを取り出し、そこに今まで話した内容を大まかに書き綴った。
「白粉想代香という女の子は、お前のことを襲った男子高校生達を憎み、自力でその実行犯達を突き止めた。さっきノートを見せてもらったが、どの写真も横か斜めからしか撮れていなかったし、画質もあまり良くなかった。プロに依頼したならもっと上手くやるはずだ。そして、その憎き相手に報復する手段を、"あの子"という存在に委ねた。ここまではいいな、モモヒキ?」
「はい!」
「よし。次に、男子高校生達は夜中集まっている時に"何者"かに襲われた。そして、そのうちの一人が仲間に電話をかけた。恐らく助けを呼ぶためだろう。そこで、"白い髪の子供が来る"と言った。つまりは、この"白い髪の子供"が"あの子"を示しているという推論が立つ」
「じゃ、じゃあ、その"白い髪の子供"があの人たちを…?」
篠懸さんの推理が正しければ、想代香は"白い髪の子供"に自身の恨みを託し、その子が直接男子高校生達をその手にかけたということになる。そんな事、現実にありえるのだろうか?
「…集めた情報は、そう"言っている"」
「そ、それってつまり、その"白い髪の子供"は幽霊とか、妖怪とか、そういうたぐいのもので、あの人たちも想代香もとりつかれて殺されたって事ですか?」
「………それは俺にも分からない。それに、今はまだ情報が少ない。もっと現実的な可能性を探る事を優先した方がいいだろう」
そう言って、篠懸さんはホワイトボードに書いた文字を消し始めた。篠懸さんは曖昧な感じで濁したけど、先程少し言葉を詰まらせていた。もしかしたら、何か心当たりがあるのかもしれない。けど、私はあえてそれは言わなかった。
篠懸さんは、言うべき事はちゃんと言ってくれる人だ。信じていますよ。
◇
それから、また"白い髪の子供"について調べてみたり、被害者達が亡くなった場所へ行ってみたり、新たな情報を集めにまた聞き込みをしたりした。しかし、これといった情報は得られず、ただただ月日が経っていくばかり。
「とりあえず、今日は解散にするか」
「そうですね...。続きはまた今度にしましょう」
今日も目立った収穫は無し。篠懸さんと次の日取りを相談しながら帰り支度をしようとした時だった。
ガチャリ
唐突に、事務所の入口の方からドアの開く音がした。
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