俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

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その49

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 正直に言うと、たぶん、いや、絶対に黒魔法は俺には向かない。

 確かこの小説の世界の設定では、動物実験から、人まで、解剖学等々、グロイ研究をしないといけないからだ。

 俺、無理、絶対に無理。

 俺はあくまでも平和主義だし血は見たくない、本来ははイザベラ的には黒魔法なんだろうけど教師も白魔法しか教えられないらしいからホッとした。

 本当だったら王立図書館に引きこもって本を読みつくす余生を過ごしたかったが、その思いを捨ててこのルートに入るまで今まで努力してからここでくじけるわけにはいかないのだ。

 自分の計画がちゃんと進んでいるのを実感した俺は、夢見心地で教室に戻るとレオンはいなかった。

 オランが心配そうに、近づいてきた。

 魔法協会に青田買いされたことはのことは秘密なので詳しくは話せなかったが、心配ないと言っといた。
 
 でも魔法協会の推薦枠をとれたことに気をよくした俺が、物凄く浮かれてた事は認めよう。

 授業中も、授業が終わるのも上の空で、レオンがいないこともすっかり忘れてた。

 授業が終わってからも、俺は一人で余韻に浸っていた。

 オランが授業が終わったからこの後工房に行ってくると話しかけてくれたのも上の空で聞いていた。

 その様子を見てクラスメイト達には物憂げの美少女が、考え事をしているように見えていたらしい。

 だが今までの経験上、こうやって調子のいいときには、なぜか必ず事件が起きるんだよな・・・なんてチラッと頭によぎった。

 すると案の定、工房に行ったはずのオランが走ってきて、思わぬ報告でウキウキ気分がすべてが吹っ飛んだ。

「多分だけど、イザベラの言ってたピンクの髪の女の子を見つけたよ」

 なんでもオランが工房に行く途中で学園の入り口付近で騒いでいるピンクの髪の女の子を見つけたらしい。

 なので慌てて俺に知らせるため、教室に戻ってきてくれたらしい。

 うーん、このタイミングでちょっと嫌な予感が・・・するような、しないような・・・

 学園の中には、もちろん関係者しか入れないことになっているから、どうやらその女の子は、学園に入れなくて騒いでいるとオランから聞かされる。

 おかしいな・・・ベルが学園内でぶつかったって言ってたから、てっきり学園の生徒だと思い込んでたが、まさかとは思うが、ただのモブなのか?

 でも、ピンクの髪だよな・・・ただのモブがヒロインの象徴の髪色してるのは、ちょっとあり得ないかな。

 まあ嫌な予感は続いていたが、とりあえず一応ヒロインかどうか確認だけはするか・・・
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