俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

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恋は盲目 3

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 俺が少し考えこんでいると、イザベラがポツリと、

「はああ、よりによって、私の中に男の子が入ってくるなんてね・・・」

 ため息大きいな。

 その点については本当に悪いと思っている、だが、

「正直言って、お前に入りたくて、入ったわけじゃないからな、返したいんだからな・・・」

「一応、書籍で調べられる限界まで調べてみたんだが、魂の入れ替えについての書物は、この魔法の国でも、どちらかと言えば禁書扱いだったからな」

 禁書扱いされると、余計読みたくなるのが、俺の悪いところだと思う。

 もっとも、司書の教師に内密に読ませてもらったんだが、それら関連する本を読んでも、実現不可能な魔法として書かれているものが多く、意外にも、やり方が書いてある本もあったが、核爆弾の作り方が書いてあっても、簡単に作れないのと同じで、おそらく呪文と思われる訳の分からない文字の羅列と、数字、材料となるものが書かれていて、もしかすると実現できる可能性があるのか?と思ったが、結局、最後には大魔法使いと呼ばれたものがこの魔法を一度成功させたようだと伝説扱いになっていて、いまいち信用性に欠けるものが大半だった。

「だから何度も言っているでしょ、もう、返さなくてもいいって・・・」

 イザベラはますます、小さい声で言った。

「どうしてだよ、方法がわかれば、いつでも返してやる」

 それに、自分の体が、今どんな状態でいるのかわからなかったが、俺だってもう一度、元の体に戻りたい。

「方法なんて絶対にないし、きっと、私は私でいる必要がなくなったのよ。それに、失恋したんだから、ほっておいてよ」

 は?どういうことだ。

「失恋だって?いつの間に?」

 おかしいな?俺と入れ替わる前までは、そんなイベントあるわけないのにな。

「そうよ、もう、とっくの昔に失恋してたのに、まだチャンスがあるって勘違いして、必死だった・・・のに」

 イザベラはうなだれている。

「王子のことか?」

 あいつ、いつの間にイザベラを振ってたんだ?

「聡が王子のことポンコツって言うけれど、私にとっては初めて好きになった人だよ」

 確かに。

「多分、失恋のショックで、こんなことになっちゃったんだと思う」

「それにしても、振られるの早くないか?」

 つい、声がぽろっと出てしまった。

 確か、小説版でも、ゲーム版でも、ヒロインが来るまでは、そんな展開なかったはず・・・そのあと俺がフラグを折るまでは・・・

「聡にデリカシーってものがないの?」

 涙目で睨みつけられた。

 女の子を泣かせたのは、初めてかも知れない。

 うっかり見とれてしまう。

 でも、早めに振られてた方が、イザベラにとっては、いいはずなんだ・・・よな。

 学園に入ってから、ヒロインといちゃいちゃする王子に卒業式で断罪されるよりは。
 
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