俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

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トラブル発生の理由 3

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「さっきイザベラがとった結界って本当だったらエルフに効くの?」

 エリザベスが血相を変えてこっちにきたもんだから、勉強していたふりをやめて油断して読んでた百合本をあわてて隠す。

 この図書館で見つけた俺のささやかな趣味なのに。

「なんの話だよ?」

 詳しく聞いてみるとたった今エリザベスが図書館の窓の外をちょっと見たらエルフがこっちを見て目が合ったそうだ。
 気のせいかもしれないけど、こっちに王子一行がエルフと一緒にこっちに向かっているかもって。

 「そうだな、気のせいだろ」

 いくら何でも人物を特定して把握できるほど図書館の位置は近くないし、見えても影ぐらいだろうし、ここには結界もあるからと思って暢気に構えてたら本当に来やがった。

 しかもなぜか全員図書館の中には入れてる。

 結界が効いてない???とおもったけれど、こういう時はまずは落ち着こう。

 けれどさすがと言うべきか、俺の危険を察知したレオンが助けに来てくれて、俺の部屋に俺を移動してくれてほっとしたのもつかの間・・・

「おい、なんで俺だけをつれてきた?」

 思わず怒鳴ってしまう。

 レオンはビックリした顔をしたが

「エリザベスはフィルターと結界があるから大丈夫だ」

 それはそうだ。

「だが、それなら俺にも結界張りまくっているだろうが」

「そうだが、エルフもいたからちょっと不安で・・・」

 不安って、エルフはやっぱり特別なのか?でも、王子もマリーも一応いたぞ。取り巻き連中もだ。

 でもなによりエリザベスがあの場に残しちゃったじゃないか、それにやばい。

「違うんだ、エリザベスのフィルター取れてるんだよ」

「は?俺はちゃんとかけ直したぞ」

 レオンが自信満々に言ったが、

「だから違うんだ、あのあとまた俺が、フィルター取っちゃったんだ」

 レオンはあっけにとられた顔をした。

「えっ?イザベラに取れるのか?」

 失礼だな、エリザベスにもそんなことを言われてつい・・・だが今回は許そう。

「だから取れると思ってなくてつい、本当に出来心だったんだよ・・・」

「あれを解けるなんてイザベラ・・・だがエルフもいるなんてタイミングが悪すぎるな」

「お前、俺を舐めてるなって・・・魔法の能力に関しては俺だってなかなかのものだぞ、だがそんなことどうでもいいから、早くエリザベスを回収してくれ」

 どうやら危機的状況を把握したレオンは、俺が全部言い終わらないうちに消えた。

 それなのに、気がつかなくて空中に向かって怒鳴ってしまった俺。

 俺の声が虚しく響いた後、それからすぐに虚ろな目をしたエリザベスとレオンが帰ってきた。
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