俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

文字の大きさ
上 下
52 / 85

その52

しおりを挟む
 それに赤の王子ってトルマリン王国の王子だろ、あいつ呼んでくるのもややこしいことになりそうだしな、さてどうするか・・・

「なにいってるのよ、彼女がいても関係ないわ、だって私はヒロインなんだから、どうせ真実の愛じゃないとレオンハルト様だって攻略できないもんね」

「えええ・・・真実の愛???」

 ん?真実の愛って・・・なんだっけ???

 レオンって真実の愛で攻略できたっけ???俺、すっかり忘れてたわ。

「今仮にレオンハルト様にヒロイン以外に彼女がいても、どうせヒロインの方にくるんだから身体を使って奪い取るわよ」

「えっ?身体を使うって真実の愛なのか?」

「そうよ」

「今どきの女の子はわかんないな」

 うっかり呟いた、すると、ピンと来たのか、

「女の子がわからないなんて、もしかして、あんた、女じゃないの?」

 ぎくっ、意外に鋭いな・・・話をそらすためにそもそも入り口で何やってるか聞くか。

「それにしてもお前、なんで騒いでるんだ?ここに入れないってことは学園の生徒じゃないんだろ?」

「あら、本当はここの学園に簡単にはいれたはずだったんだけど、思わぬ邪魔が入ったのよ」

「邪魔って?」

 つい、聞いてしまう。

「あんたに言うわけないでしょ、ばーか」

 やっぱ、こいつ・・・嫌いだ。
 
 そういった割には、単純なのかカバンから何やら取り出す。

 本だった。

「おい、その本!」

 見たことがある表紙に思わず興奮してしまう。

「それ、なんで持ってるんだ?売ってんのか?ちょっと見せて」

「やっぱりあんた、持ってないの?」

 ニヤニヤして嬉しそうに言う。

「売ってなんかないわよ。でもこれに何でも載ってるんだから、私にとってはこの世界なんかちょろいわ」

 まあ、その本持ってたら、そう思うだろうな・・・だってそれ、

「公式攻略本じゃん」

「知ってるの?」

 不思議そうな顔されてもな。

「それ、お前、全然活用できてなさそうに見えるけど、宝の持ち腐れにならないように俺がもらおうかな」

「うるさいわね」

 カバンに、またしまって、

「ものすごく、参考になるわよ」

「それならよかったな、全部読んだのか?読んだら貸してくれ。」

「バカなの?あんたに貸すわけないでしょ」

「俺にくれ、勿体無いから、学園に入れないならその本、お前だと猫に小判だろ。」

「はあ?」

「豚に真珠 馬の耳に念仏 犬に論語、兎に・・・まだ聞きたい?」

「ふざけないでよね。」

「ふざけてはないけど・・・」

 まあまあ可愛い顔が、だんだん怖い顔に変化する。

 やっぱり女って怖いな。

「覚えてなさいよ」

 簡単な、捨てぜりふで帰っていった。

 ああ、惜しかった・・・久しぶりに公式攻略本読み直したかったな。
しおりを挟む

処理中です...