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第9章~ロッキー・ホラー・ショー~②
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特別上映が行われる当日、梅田駅で集合した秀明と亜莉寿は、地下鉄で映画館のある心斎橋駅に向かう。
「夜にアメ村に行くのは、初めてやから何か楽しみやわ」
と秀明が言うと、
「私も試写会以外で、レイトショーの時間に映画を観るのは初めてだから、今日は、すごく楽しみにしてるんだ」
と亜莉寿。
彼女の言葉に、秀明は、あらためて、二人で今夜の特別上映に来ることが出来たと実感し、喜びを感じていた。
それでも、気恥ずかしさから、なるべく、その想いを相手に悟られない様に言葉を選ぶ。
「ところで、《持って来るものリスト》に書かれてたモノは、全部揃えたけど、何に使うの?」
この十日ほど、彼を悩ませていた疑問の一つを口にする。
それを聞いた亜莉寿は、
「それは、映画が始まってからのお楽しみということで……。でも、上映前の注意事項の説明の時に解説があるかも知れないから、正確には、上映開始前のお楽しみかな?」
と意味ありげに笑う。さらに、
「私は、風船が用意できなかったんだけど、有間クンは持ってきてるんだ?」
と秀明にたずねる。
「うん、待ち合わせの前に、阪神百貨店のショップで買ってきたから。五本入りセットやから、良ければ、亜莉寿サンもどうぞ」
秀明が返すと
「本当!ありがとう」
と嬉しそうに亜莉寿は答えた。
そんな会話を楽しみながら、会場となる映画館にむかうと、そこには、混沌《カオス》が広がっていた。
※
大阪・アメリカ村の中心地である商業施設、心斎橋ビッグステップ。
ハロウィンを目前にした週末の夜、そこには、この世ならざる場所から迷い込んできたのではないかと思われる風体の人々が集っていた。
燕尾服に珍妙なサングラスをした集団もさることながら、中でも注目を集めているのが、この四名だ。
・真っ白な肌に後頭部のみ長い白髪を垂らした執事服の男。
・真っ赤なドレッドヘアーにエプロン付メイド服を着た女。
・金色のラメの入ったシルクハットとスーツが目を引く女。
・顔を白塗りにしたボンテージと網タイツ姿の性別不詳者。
(最初の二人は、リフ・ラフとマジェンタだったっけ?ラメ服がコロンビアで、そして、網タイツはフランクン・フルター博士か……)
秀明は、以前にレンタルビデオで観た『ロッキー・ホラー・ショー』の登場人物を思い出す。
しかし、そのあまりに浮世離れした光景に、思考が追い付かず、思わず言葉が漏れる。
「ここは、コスプレ会場か!?」
そのつぶやきが聞こえたのか、亜莉寿はクスクスと笑って、
「みんな気合いが入ってるね~」
と同調する。
「この人たちと一緒に映画を観るの?何か、この映画の主人公ブラッドとジャネットになった気分なんやけど」
秀明が苦笑いしながら言うと、
「うん!リアリティがあって、より面白そうじゃない」
と満面の笑みで答える亜莉寿。
(ノリノリやな~!姐さん)
と彼女のテンションに少し引きながらも、秀明は商業施設の四階にある映画館に入場した。
今回の映画は、『シネマハウスにようこそ』の校内放送では取り上げられない類の作品であるため、ここで、秀明と亜莉寿に代わり、『ロッキー・ホラー・ショー』のあらすじを簡単に記しておこう。
※
親友の結婚式の帰り、ブラッドは、高校時代から交際していたジャネットに求婚し、二人は婚約する。その報告のため、車で高校時代の恩師の元に向かうが、途中で暴風雨に遭い、タイヤがパンクしてしまう。電話を探すため、雨の中を歩くと、古い館にたどり着いたのだが、その屋敷の中では、世にも奇妙なパーティが繰り広げられており……。
※
一見すると、作品のタイトルと冒頭のストーリーからゴシック・ホラーを思わせる雰囲気であるが、その実態は───。
「夜にアメ村に行くのは、初めてやから何か楽しみやわ」
と秀明が言うと、
「私も試写会以外で、レイトショーの時間に映画を観るのは初めてだから、今日は、すごく楽しみにしてるんだ」
と亜莉寿。
彼女の言葉に、秀明は、あらためて、二人で今夜の特別上映に来ることが出来たと実感し、喜びを感じていた。
それでも、気恥ずかしさから、なるべく、その想いを相手に悟られない様に言葉を選ぶ。
「ところで、《持って来るものリスト》に書かれてたモノは、全部揃えたけど、何に使うの?」
この十日ほど、彼を悩ませていた疑問の一つを口にする。
それを聞いた亜莉寿は、
「それは、映画が始まってからのお楽しみということで……。でも、上映前の注意事項の説明の時に解説があるかも知れないから、正確には、上映開始前のお楽しみかな?」
と意味ありげに笑う。さらに、
「私は、風船が用意できなかったんだけど、有間クンは持ってきてるんだ?」
と秀明にたずねる。
「うん、待ち合わせの前に、阪神百貨店のショップで買ってきたから。五本入りセットやから、良ければ、亜莉寿サンもどうぞ」
秀明が返すと
「本当!ありがとう」
と嬉しそうに亜莉寿は答えた。
そんな会話を楽しみながら、会場となる映画館にむかうと、そこには、混沌《カオス》が広がっていた。
※
大阪・アメリカ村の中心地である商業施設、心斎橋ビッグステップ。
ハロウィンを目前にした週末の夜、そこには、この世ならざる場所から迷い込んできたのではないかと思われる風体の人々が集っていた。
燕尾服に珍妙なサングラスをした集団もさることながら、中でも注目を集めているのが、この四名だ。
・真っ白な肌に後頭部のみ長い白髪を垂らした執事服の男。
・真っ赤なドレッドヘアーにエプロン付メイド服を着た女。
・金色のラメの入ったシルクハットとスーツが目を引く女。
・顔を白塗りにしたボンテージと網タイツ姿の性別不詳者。
(最初の二人は、リフ・ラフとマジェンタだったっけ?ラメ服がコロンビアで、そして、網タイツはフランクン・フルター博士か……)
秀明は、以前にレンタルビデオで観た『ロッキー・ホラー・ショー』の登場人物を思い出す。
しかし、そのあまりに浮世離れした光景に、思考が追い付かず、思わず言葉が漏れる。
「ここは、コスプレ会場か!?」
そのつぶやきが聞こえたのか、亜莉寿はクスクスと笑って、
「みんな気合いが入ってるね~」
と同調する。
「この人たちと一緒に映画を観るの?何か、この映画の主人公ブラッドとジャネットになった気分なんやけど」
秀明が苦笑いしながら言うと、
「うん!リアリティがあって、より面白そうじゃない」
と満面の笑みで答える亜莉寿。
(ノリノリやな~!姐さん)
と彼女のテンションに少し引きながらも、秀明は商業施設の四階にある映画館に入場した。
今回の映画は、『シネマハウスにようこそ』の校内放送では取り上げられない類の作品であるため、ここで、秀明と亜莉寿に代わり、『ロッキー・ホラー・ショー』のあらすじを簡単に記しておこう。
※
親友の結婚式の帰り、ブラッドは、高校時代から交際していたジャネットに求婚し、二人は婚約する。その報告のため、車で高校時代の恩師の元に向かうが、途中で暴風雨に遭い、タイヤがパンクしてしまう。電話を探すため、雨の中を歩くと、古い館にたどり着いたのだが、その屋敷の中では、世にも奇妙なパーティが繰り広げられており……。
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一見すると、作品のタイトルと冒頭のストーリーからゴシック・ホラーを思わせる雰囲気であるが、その実態は───。
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