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第13章~今夜はトークハード~④
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仁川駅前のビデオ店から、十分ほど歩き、秀明は亜莉寿の住むマンションに到着した。
(そういえば、前に亜莉寿の家に来たのも、ブライアンとトップガンの出走したクリスマス・イブの有馬記念の日だったな……)
この二頭がレースに出走する日は、吉野家と縁があるのか───。
そう考えると、偶然の一致とは言え、何だか妙に可笑しくなり、不意に笑みがこぼれる。
エントランスでモニター付きのインターホンを鳴らして名前を告げると、亜莉寿が応答し、居住区へのドアを解錠してくれた。
吉野家のドアの前で再びインターホンを鳴らすと、「は~い」という声とともに、ドアが開き、亜莉寿が出迎えてくれる。
「ゴメン!ちょっと、用事が長引いて、遅くなってしまって」
秀明は謝罪の言葉を口にするが、
「ううん、気にしないで!さあ、上がって」
と、亜莉寿は気にする様子もなく、秀明を快く招き入れる。
玄関から、直接、亜莉寿の自室に通された秀明は、暖かく保たれた室温とともに、アプリコットとジャスミンの混ざった様な薫りを感じた。
この薫りを感じるたびに、秀明は、亜莉寿と最初に出会った時のことを思い出す。
(あの夏の日から、もう一年半以上も経つのか……)
そんな感傷に浸っていると、
「どうしたの?ボーっとして。さあ、座って」
亜莉寿は、不思議そうにたずねて、秀明に腰を下ろす様にうながす。
「あっ、ゴメン!ここに来る前にビデオ・アーカイブスに寄って来たから、亜莉寿と最初に会った時のことを思い出してて……」
秀明は、回想のきっかけになった理由をはぐらかしながら、そう答えた。
腰を下ろして、あらためて亜莉寿の部屋に目を配ると、アメリカへの引っ越しが近いためだろうか、前の年の夏休みの時と比べて少し様子が異なっていた。
しかし、秀明が気になったのは、部屋の真ん中に、脚を畳めるタイプの小型テーブルが置かれていることと、亜莉寿の学習机の上にノートパソコンが置かれていることだった。
小型テーブルの上には、束になったA4用紙が置かれている。
その束が、亜莉寿の書いた小説を印刷したものだろうと察した秀明は、
「今回の小説は、あのノートパソコンで書いたの?」
と、亜莉寿にたずねる。
「うん!クリスマスプレゼントにもらったウィンドウズ対応のマシンなんだ」
と答える亜莉寿。
その答えに、秀明は、
「へぇ~、良いプレゼントをもらったね」
感心しつつ、
(確か、ノートPCって三十万円くらいするよな……。吉野家のサンタクロースは、ずいぶん羽振りが良いな)
と苦笑した。
そして、A4用紙を指差し、
「あの束が、小説かな?読ませてもらって良い?」
と確認する。
亜莉寿は、緊張の面持ちで、
「うん、読んでみて……」
と返答した。
「わかった。あっ、今日は本を持って来てないんやけど───」
秀明が伝えようとすると、
「大丈夫!有間クンが読んでる間、ここで待たせてもらうから」
亜莉寿は、答える。
(いや、何もしないで、そばに居られると、読みにくいんやけど───。まあ、仕方ないか……)
秀明は、すぐに交渉を打ち切り、気持ちを切り替えて、印刷された用紙に向き合う。
A4用紙は、四十枚ほどの束になっていて、一枚目のページには、
『接続された少女の復讐(仮)』
とタイトルが記載されていた。
「じゃあ、読ませてもらうね」
そう告げて、用紙をめくった。
(そういえば、前に亜莉寿の家に来たのも、ブライアンとトップガンの出走したクリスマス・イブの有馬記念の日だったな……)
この二頭がレースに出走する日は、吉野家と縁があるのか───。
そう考えると、偶然の一致とは言え、何だか妙に可笑しくなり、不意に笑みがこぼれる。
エントランスでモニター付きのインターホンを鳴らして名前を告げると、亜莉寿が応答し、居住区へのドアを解錠してくれた。
吉野家のドアの前で再びインターホンを鳴らすと、「は~い」という声とともに、ドアが開き、亜莉寿が出迎えてくれる。
「ゴメン!ちょっと、用事が長引いて、遅くなってしまって」
秀明は謝罪の言葉を口にするが、
「ううん、気にしないで!さあ、上がって」
と、亜莉寿は気にする様子もなく、秀明を快く招き入れる。
玄関から、直接、亜莉寿の自室に通された秀明は、暖かく保たれた室温とともに、アプリコットとジャスミンの混ざった様な薫りを感じた。
この薫りを感じるたびに、秀明は、亜莉寿と最初に出会った時のことを思い出す。
(あの夏の日から、もう一年半以上も経つのか……)
そんな感傷に浸っていると、
「どうしたの?ボーっとして。さあ、座って」
亜莉寿は、不思議そうにたずねて、秀明に腰を下ろす様にうながす。
「あっ、ゴメン!ここに来る前にビデオ・アーカイブスに寄って来たから、亜莉寿と最初に会った時のことを思い出してて……」
秀明は、回想のきっかけになった理由をはぐらかしながら、そう答えた。
腰を下ろして、あらためて亜莉寿の部屋に目を配ると、アメリカへの引っ越しが近いためだろうか、前の年の夏休みの時と比べて少し様子が異なっていた。
しかし、秀明が気になったのは、部屋の真ん中に、脚を畳めるタイプの小型テーブルが置かれていることと、亜莉寿の学習机の上にノートパソコンが置かれていることだった。
小型テーブルの上には、束になったA4用紙が置かれている。
その束が、亜莉寿の書いた小説を印刷したものだろうと察した秀明は、
「今回の小説は、あのノートパソコンで書いたの?」
と、亜莉寿にたずねる。
「うん!クリスマスプレゼントにもらったウィンドウズ対応のマシンなんだ」
と答える亜莉寿。
その答えに、秀明は、
「へぇ~、良いプレゼントをもらったね」
感心しつつ、
(確か、ノートPCって三十万円くらいするよな……。吉野家のサンタクロースは、ずいぶん羽振りが良いな)
と苦笑した。
そして、A4用紙を指差し、
「あの束が、小説かな?読ませてもらって良い?」
と確認する。
亜莉寿は、緊張の面持ちで、
「うん、読んでみて……」
と返答した。
「わかった。あっ、今日は本を持って来てないんやけど───」
秀明が伝えようとすると、
「大丈夫!有間クンが読んでる間、ここで待たせてもらうから」
亜莉寿は、答える。
(いや、何もしないで、そばに居られると、読みにくいんやけど───。まあ、仕方ないか……)
秀明は、すぐに交渉を打ち切り、気持ちを切り替えて、印刷された用紙に向き合う。
A4用紙は、四十枚ほどの束になっていて、一枚目のページには、
『接続された少女の復讐(仮)』
とタイトルが記載されていた。
「じゃあ、読ませてもらうね」
そう告げて、用紙をめくった。
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