初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜⑩

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 5月25日(水)

 ~黄瀬壮馬きせそうまの見解~

 鳳花ほうか部長による説明会と、天竹さんたち文芸部との第一回のミーティングが終わった二日後――――――。

 ボクと竜司が提案した今回の企画の『連絡会』が、広報部と生徒会の主催で行われることになった。

 放課後になり、竜司と一緒に放送室に入ると、すでに、連絡会に出席するボクたち以外のメンバーは集まっていた。
 ボクたちが所属する広報部の花金鳳花はながねほうか部長と、広報部に仮入部扱いで所属している一年生の宮野雪乃みやのゆきのさん、生徒会長の寿美奈子ことぶきみなこ先輩に加えて、もう一人、放送室では初めてお目に掛かる上級生が居た。

 鳳花ほうか部長と寿ことぶき会長が談笑するそばで、ノートPCを操作しているのは、生徒会書紀の生野茉純いくのますみ先輩だ。
 フチ無しの大きなメガネが、とても印象的に感じられる。

「やっぱり、生徒会には、優秀なメガネキャラが必要よね!」
 
 という生徒会長のたっての希望で、生徒会メンバーに加わったという、真偽不明のウワサも出ているけど、生徒会長からも、広報部の部長である生徒会副会長からも、厚い信頼を寄せられている人物であるということは、間違いないらしい。

茉純ますみには、書紀として、連絡会の記録係を務めてもらおうことになったから、よろしくね」

 いつもの調子で、鳳花ほうか部長が澄ました表情で説明すると、ボクの隣の親友が、

生野いくの先輩、お忙しいところ、協力してもらってスイマセン」

と、頭を下げる。
 つられて、ボクと宮野さんも、ペコリと頭を下げると、生徒会の書紀を務める先輩は、

「いえ……これも、生徒会の重要な仕事ですから」

と、言いながら、柔らかな笑顔を返してくれた。
 その表情から、生真面目ながらも優しそうな先輩だと感じた。

 その生野先輩が操作するPCは、二日前と同じようにプロジェクターに接続され、放送室の白い壁には、

『第1回芦宮あしのみや高校PR動画コンテスト連絡会 ∨ol.1』

という表紙のスライドが表示されていた。
 どうやら、今回の企画の正式名称が決まったようだ。
 
 自分たちのチームについて、を感じているボクにとって、企画が着実に進んで行っている様子は、プレッシャーでしかないけど、そんなことにお構いなく、生徒会長から声が掛かった。
 
「それじゃ、全員が集まったところで、第1回目の連絡会をはじめちゃおうか! 鳳花、進行おねがいね!」

 寿会長の一言に、生徒会副会長の鳳花ほうか部長は、ゆっくりと首をたてに振ってから語りだす。

「今日は、急な呼び出しに集まってくれてありがとう。この連絡会は、二年生の黒田くんたちの提案で開催されることになりました。今回、参加してくれているメンバーは、すでに、この会合の趣旨は理解してくれていると思うけど、あらためて、説明しておくわね」

 冒頭の言葉に、ボクたちが、うなずきながら反応すると、部長は話しを続けた。

「今回の企画で別れたグループは、広報活動の知識や経験に、それぞれ差があると思います。ペナルティを課す以上、なるべく、その有利不利をなくすため、また、生徒会や広報部からの重要なお知らせや決定事項を伝えるために、この連絡会は設置されました。お互いの情報交換の場として使ってくれても良いし、学校内で許可や申請が必要な活動については、生徒会が協力させてもらうから、なんでも相談してちょうだい。優秀な生徒会書紀が、きっと味方になってくれるわ」

 鳳花ほうか部長が、そう言って生野先輩の方に目を向けると、生徒会書紀の先輩は、穏やかな笑みで応じる。

「はい、可能な範囲でお力添ちからぞえします」

 そんな先輩の言葉に真剣にうなずきながら、一年生の宮野さんが、続けて質問する。
 
「その……これから、わからないことは、生野先輩に聞けばいいべか?」

「そうですね。校内の許可申請については、私が一番把握できていると思いますし……会長と副会長は、他のクラブにも所属していて多忙だと思うので、私でわかることであれば、答えさせていただきますよ」

 さすがは、生徒会長と副会長のふたりが信頼を寄せる人物だけはある。
 今回の企画には、多くの不安を感じているボクにとっても、生野先輩は、かなり頼りになる存在であるように感じられた。

 これまであまり面識のなかった上級生に対して、そんな想いを抱いていると、進行役の鳳花ほうか部長が、次の話題を提供する。
 
「さて、この連絡会の趣旨と今後の方針が説明できたことで、今回は、私たちから最初の課題を出しておこうと思います。みんな、もう、広報企画の中身は決まった?」

 部長の質問に、ボク以外のふたりは、自信満々といった感じで答える。

「はい! ヨツバちゃんが、素晴らしいアイデアを出てくれました!」

「自分たちは、モモカの秘策で進めようと考えてます! 期待してて下さい!」

 意気揚々といった下級生と友人のそのようすに、ボクは、気後れと不安しか感じない――――――。

「ボクらのところは、もう少し慎重に検討しようと考えているところです……」

 自信がないことをなるべく表には出さないように答えるようにしたけれど……。
 それぞれのチームの現状が、透けて見えるであろう、ボクらの回答を聞いたあと、
 
「そう……わかったわ」

鳳花ほうか部長は、そう返答し、課題の内容を説明する。

「それぞれのグループには、来週の月曜日までに簡単な企画書を提出してもらおうと思います。この時点で、最終決定でなくても構わないから、大まかな方針がわかるようなモノで大丈夫よ」

 部長は、プレッシャーを感じさせないように、軽い口調で話すけれど……。
 それは、いまだ、企画のカタチすら作ることができていないボクたちのチームにとって、ハードルの高い内容だった。
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