初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜⑪

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 ~天竹葵あまたけあおいの見解~

「LANE
 新着メッセージがあります」

 黄瀬きせくんが学校PRコンテストの連絡会に出席している間、チームミーティングが行えず、どうやって時間を潰そうか……と、考えていたとき、私のスマホに、下級生の佐倉桃華さくらももかさんから、LANEでメッセージが届いた。

 ==============
 
 センパイたちが、連絡会に参加
 してる間にお話できませんか?

 ==============

 自分たちのチームの企画会議が捗っていないこともあって、他のチームの話しを聞いてみるのも良いかと考えて、彼女の提案を受け入れることにする。

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 お話し、大丈夫ですよ!

 放送室は使用中だと思うので、
 図書室に来てもらえますか?

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 そう返事をすると、すぐに、「かしこまりました」と、お辞儀するネコのようなキャラクターのスタンプが返信されてきた。

 さらに、ほどなくして、図書室のドアが開き、下級生が顔をのぞかせる。

「いらっしゃい、佐倉さん。ふたりで話すなら、こっちに移動しようか?」

 私は、そう言って、文芸部のメンバーが活動している図書室の閲覧スペースから、ガラス張りで仕切られている司書室に移動する。放課後のこの時間、学校専属の司書の先生は、すでに帰宅していた。

 司書室に置かれた椅子に腰掛けた彼女は、

「お時間をいただき、ありがとうございます」

と、丁寧にお辞儀をした。
 なんだか、恐縮しているようすの彼女に苦笑しながら、私は返答する。

「そんなに、かしこまなくても良いですよ……今回は、どんな用ですか?」

 私たちの活動の場である図書室に来てもらったこともあり、リラックスして話してもらえるよう、自分にできる限り穏やかな口調で、彼女に用件をうながすと、佐倉さんは、やや緊張した面持ちで切り出した。

「天竹センパイ……二週間ほど前に、『あ《・》な《・》た《・》と《・》黒《・》田《・》く《・》ん《・》の《・》仲《・》を《・》進《・》展《・》さ《・》せ《・》る《・》お手伝いができないか?』って言ったくれたお話しは、まだ有効ですか?」

 彼女の方から、あのときの話しを持ち出してくるとは思わなかったので、少しだけ戸惑ったが……。

 少し落ち着かないようすの下級生の言うように、親友のためにも、そして、その親友をおとしめようとしたクラスメートに、これ以上、好き勝手に行動させないためにも、私は、佐倉さんと黒田くんの仲が発展することが望ましいと考えている。

 十日ほど前、そのために協力させてもらいたい、ということを佐倉さん本人に伝えたのだが、彼女自身で考えることがあったのだろう。
 私にとって、良い結果であっても、そうでなくても、佐倉さんの考えを聞いてみたいと感じ、興味を持ちながら、穏やかに微笑みながら返答する。

「えぇ……もちろん、有効ですよ。佐倉さんからの回答を待っていたところですから……あなたの考えを聞かせてくれますか?」

 彼女は、小さく「はい」と答えると、神妙な面持ちで語り始めた。

「今回の企画についてなんですけど……急に罰ゲームの話しを持ち出して、天竹あまたけセンパイや紅野こうのセンパイを巻き込むことになっちゃって、ゴメンナサイ」

「たしかに、『もし、最下位になってしまったら、どうしよう』とは思うけど……佐倉さんなりに、何か考えがあってのことなんでしょう?」

 なるべく、微笑みをたやさず、言葉を返すと、彼女は、「我が意を得た」と言う感じで、大きく首をたてに振って、言葉を続ける。

「はい! ……いえ、白草センパイには、一度痛い目に遭ってもわないと、と思っているので……それで、きぃセンパイや天竹センパイのチームには、んです!」

 突然、意気込んで話し始めたうえに、を口にしている下級生を可愛らしく感じつつ、返答する。

「心配してくれてありがとう……佐倉さんは、自分のチームの活動に自信があるのね……たしかに、私たちは、あなたや白草さんのチームに比べると、まだまだ準備不足だと思うけど……自分たちなりに、アイデアを出して、がんばるつもりですから」

「あっ……! そういうつもりはなかったんですけど……」

 自分の発言を取りつくろおうとする彼女に対して、「わかっているから、大丈夫……」という意味を込めて、穏やかに微笑みながら、問いかける。

「それで……佐倉さんは、どんなお話しをしに来てくれたんですか? 私たちを激励するためだけに、来たわけじゃないんでしょう?」

「そうでした! いま、くろセンパイや、きぃセンパイは、広報部と生徒会公認の連絡会に出席していますけど……今回の企画について、ワタシたちも、お互いに連絡を取り合いませんか?」

 彼女の提案を受けて、あごに手を当てながら、しばらく考えたあと、私は慎重に答えた。

「なるほど――――――私たちだけの裏連絡会ですか……佐倉さんが望むのであれば、私たちのチームにマイナスになることは少ないと思いますし、良いかも知れませんね。ただ、私たちから、佐倉さんたちに対して提供できることは、多くないと思いますよ? それでも、構わないんですか?」

 すると、彼女は、キッパリとした口調で返答する。

「はい! 天竹センパイたちがと協力し合えるだけでも、ワタシにとっては、大きなメリットです」

 そう言って、佐倉さんは、笑顔を見せた。そして、その後に、一言、付け加える。

「あと、差し出がましいかも知れませんが、天竹センパイたちのチームは、きぃセンパイの映像を編集する技術を全面に押し出すのが良いと思いますよ。その映像に、取材するクラブの熱い想いを乗せることができれば、大丈夫です」

 他のチームではあるけれど、自分が考えていたことを、黄瀬くんのことを良く知っている生徒に言ってもらえることは、とても嬉しく感じられる。
 なので、私も、彼女に負けないくらい朗らかな表情で、応じた。

「佐倉さん、私もそう考えていました! あとで、文芸部のみんなとも話し合ってみようと思います」

 そして、

「お互いがんばりましょう!」

と言ってから、下級生に握手を求める。
 こうして、私たちは、お互いのパートナーである黄瀬くんや黒田くんにも内緒で、秘密協定を結ぶことになった。
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