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第三部
第3章〜裏切りのサーカス〜⑥
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~佐倉桃華の見解~
「こんにちは。 芦宮サクラです! 今回は、生徒会公認きかくということで、アタシが芦宮高校のクラブを紹介していこうと思います。体育会系のクラブを中心に、アタシにイジられたいっていうクラブが、た~くさんあるから、楽しみにしててね~」
ワタシが、放送室で芦宮高校非公式のVtuberの仮デザインであるアバターをスマホで起動させながら、アテレコの練習をしていると、
コンコン――――――
と、やや大きめの音でドアがノックされ、
「モモカ~、戻ったぞ~」
と言って、くろセンパイが、連絡会から帰ってきた。
「お疲れさまです。くろセンパイ! それで……美術部とコンピュータクラブの件は、どうなりました?」
ワタシは、先週末からセンパイと共通の心配のタネであった懸念事項について、たずねる。
「あぁ、結果から言えば、オレたちの行動はお咎めなしで認められたよ。もっとも、予想どおり、壮馬は、不満そうではあったけどな……」
「やっぱり、そうですか……」
鳳花部長の性格から考えて、くろセンパイが美術部に行った提案を無効にする、ということはあり得ないだろう、と考えていたけど、もうひとつの心配のタネだった、きぃセンパイたちのグループが気分を害さないか、という点についても、自分たちの想像が外れることはなかった。
「あの……きぃセンパイ、なにか言ってきませんでしたか?」
「いや、オレたちの行動に対して抗議するってことは、なかったな。あいつの性格から考えて、ルール違反ではない以上、抗議してもなんの意味もない、って考えているんだろうけど……」
「そうですか……」
きっと、ワタシと同じ想いなのだろう……。
きぃセンパイたちに悪いことをしてしまったという罪悪感と贖罪の気持ちを抱えながらも、友だちの性格を考えながら、その言動の意味を考えている、くろセンパイの苦しさを想像すると、ワタシの胸は痛くなる。
「きぃセンパイたちには、悪いことをしちゃいましたね……」
ポツリとつぶやくと、くろセンパイは苦笑しながら、ワタシの頭に手をあて、ワシャワシャと髪を触りながら、
「心配すんな、モモカ! 壮馬なら、きっと、わかってくれるよ!」
と、滅入りかける気持ちをほぐすように、言葉をかけてくれる。
さらに、センパイは続けてこんなことを言ってきた。
「部長も、今回のことをフォローするように、今後の活動に向けて、面白い提案をしてくれたしな。そうだ、モモカ! タブレットを開いてくれないか? 鳳花部長が、今後、取材先が被らないようにお互いのグループで情報共有することを提案して、生野先輩が、共有シートを作ってくれたんだ」
くろセンパイの言葉を受けて、ワタシは、すぐにカバンからタブレットを取り出して起動させる。
ログインすると、シェルフのG-mailのアイコンには、着信のマークが表示されていて、アイコンをクリックしてメーラーを起動すると、生徒会アカウントから、メールが届いていた。
「それが、スプレッドシートの共同編集の招待メールのハズだ。リンク先をクリックしてくれないか?」
リンクを開くと、センパイの言ったとおり、スプレッドシートが開き、ワタシたち動画コンテストの参加者が、取材先のクラブや提携する内容を書き込めるようになっていた。
「今後は、クラブの取り合いになって、相手に迷惑がかからないように、このシートで、お互いに情報共有できるってワケだ」
連絡会で決まったことを、少し嬉しそうに話すセンパイの表情を見て、きぃセンパイとの仲が拗れたわけではないことが伝わってきて、ワタシも何故か嬉しくなる。
中学生のときから、ずっと、くろセンパイときぃセンパイのことを見てきていたから、そう感じるのかも知れないけど……。
やっぱり、このふたりには、ずっと、仲の良い関係であってほしい、という想いがワタシにはある。
お互いに相手に対して否定的なことを言い合ったりしているものの、根っこの部分では、互いに信頼にし合っていて、遠慮したり気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる、文字どおり、『気のおけない友人』同士のふたりの会話を聞いているのは、楽しかった。
いまのところ、ワタシは、くろセンパイと彼氏彼女の関係になれるなんて、思っていないけど――――――。
もし、そうなったときも、きぃセンパイに言い負かされることの多い、くろセンパイを一緒にイジりながらも、たまには、フォローしてあげるような光景を思い浮かべ、口元が緩んでしまうのを抑えることができなかった。
「ん? どうした、モモカ? 急にニヤニヤして……」
「いえ……なんでもありません! きぃセンパイたちには、これ以上、迷惑がかからないようにしないと……って思っただけです」
くろセンパイの指摘に、少し焦りながらもそう答えると、同時に、ワタシは、ゾクリ――――――と背中に悪寒を感じた。
「あの……くろセンパイ。この後の打ち合わせは、ここから出てからにしませんか? ワタシ、オカルトを信じるタイプじゃないんですけど……なんだか、隣の小会議室から、禍々しい気配が漂って来るんです」
「ん? モモカが、そんなこと言うなんて珍しいな。まあ、さっき、美術部から、芦宮サクラのデザイン案が出揃ったって、連絡があったしな! それなら、コンピュータクラブにも声をかけて、美術部に移動するか?」
得体の知れない怖気を感じ取ったワタシの声に、アッサリと賛同してくれたくろセンパイに感謝しつつ、ワタシ達は、スプレッドシートの美術部の項目に、
《キャラクターデザインのミーティング》
と、記載して、加納部長たちの待つ部室に移動することにした。
「こんにちは。 芦宮サクラです! 今回は、生徒会公認きかくということで、アタシが芦宮高校のクラブを紹介していこうと思います。体育会系のクラブを中心に、アタシにイジられたいっていうクラブが、た~くさんあるから、楽しみにしててね~」
ワタシが、放送室で芦宮高校非公式のVtuberの仮デザインであるアバターをスマホで起動させながら、アテレコの練習をしていると、
コンコン――――――
と、やや大きめの音でドアがノックされ、
「モモカ~、戻ったぞ~」
と言って、くろセンパイが、連絡会から帰ってきた。
「お疲れさまです。くろセンパイ! それで……美術部とコンピュータクラブの件は、どうなりました?」
ワタシは、先週末からセンパイと共通の心配のタネであった懸念事項について、たずねる。
「あぁ、結果から言えば、オレたちの行動はお咎めなしで認められたよ。もっとも、予想どおり、壮馬は、不満そうではあったけどな……」
「やっぱり、そうですか……」
鳳花部長の性格から考えて、くろセンパイが美術部に行った提案を無効にする、ということはあり得ないだろう、と考えていたけど、もうひとつの心配のタネだった、きぃセンパイたちのグループが気分を害さないか、という点についても、自分たちの想像が外れることはなかった。
「あの……きぃセンパイ、なにか言ってきませんでしたか?」
「いや、オレたちの行動に対して抗議するってことは、なかったな。あいつの性格から考えて、ルール違反ではない以上、抗議してもなんの意味もない、って考えているんだろうけど……」
「そうですか……」
きっと、ワタシと同じ想いなのだろう……。
きぃセンパイたちに悪いことをしてしまったという罪悪感と贖罪の気持ちを抱えながらも、友だちの性格を考えながら、その言動の意味を考えている、くろセンパイの苦しさを想像すると、ワタシの胸は痛くなる。
「きぃセンパイたちには、悪いことをしちゃいましたね……」
ポツリとつぶやくと、くろセンパイは苦笑しながら、ワタシの頭に手をあて、ワシャワシャと髪を触りながら、
「心配すんな、モモカ! 壮馬なら、きっと、わかってくれるよ!」
と、滅入りかける気持ちをほぐすように、言葉をかけてくれる。
さらに、センパイは続けてこんなことを言ってきた。
「部長も、今回のことをフォローするように、今後の活動に向けて、面白い提案をしてくれたしな。そうだ、モモカ! タブレットを開いてくれないか? 鳳花部長が、今後、取材先が被らないようにお互いのグループで情報共有することを提案して、生野先輩が、共有シートを作ってくれたんだ」
くろセンパイの言葉を受けて、ワタシは、すぐにカバンからタブレットを取り出して起動させる。
ログインすると、シェルフのG-mailのアイコンには、着信のマークが表示されていて、アイコンをクリックしてメーラーを起動すると、生徒会アカウントから、メールが届いていた。
「それが、スプレッドシートの共同編集の招待メールのハズだ。リンク先をクリックしてくれないか?」
リンクを開くと、センパイの言ったとおり、スプレッドシートが開き、ワタシたち動画コンテストの参加者が、取材先のクラブや提携する内容を書き込めるようになっていた。
「今後は、クラブの取り合いになって、相手に迷惑がかからないように、このシートで、お互いに情報共有できるってワケだ」
連絡会で決まったことを、少し嬉しそうに話すセンパイの表情を見て、きぃセンパイとの仲が拗れたわけではないことが伝わってきて、ワタシも何故か嬉しくなる。
中学生のときから、ずっと、くろセンパイときぃセンパイのことを見てきていたから、そう感じるのかも知れないけど……。
やっぱり、このふたりには、ずっと、仲の良い関係であってほしい、という想いがワタシにはある。
お互いに相手に対して否定的なことを言い合ったりしているものの、根っこの部分では、互いに信頼にし合っていて、遠慮したり気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる、文字どおり、『気のおけない友人』同士のふたりの会話を聞いているのは、楽しかった。
いまのところ、ワタシは、くろセンパイと彼氏彼女の関係になれるなんて、思っていないけど――――――。
もし、そうなったときも、きぃセンパイに言い負かされることの多い、くろセンパイを一緒にイジりながらも、たまには、フォローしてあげるような光景を思い浮かべ、口元が緩んでしまうのを抑えることができなかった。
「ん? どうした、モモカ? 急にニヤニヤして……」
「いえ……なんでもありません! きぃセンパイたちには、これ以上、迷惑がかからないようにしないと……って思っただけです」
くろセンパイの指摘に、少し焦りながらもそう答えると、同時に、ワタシは、ゾクリ――――――と背中に悪寒を感じた。
「あの……くろセンパイ。この後の打ち合わせは、ここから出てからにしませんか? ワタシ、オカルトを信じるタイプじゃないんですけど……なんだか、隣の小会議室から、禍々しい気配が漂って来るんです」
「ん? モモカが、そんなこと言うなんて珍しいな。まあ、さっき、美術部から、芦宮サクラのデザイン案が出揃ったって、連絡があったしな! それなら、コンピュータクラブにも声をかけて、美術部に移動するか?」
得体の知れない怖気を感じ取ったワタシの声に、アッサリと賛同してくれたくろセンパイに感謝しつつ、ワタシ達は、スプレッドシートの美術部の項目に、
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